ルナ・ワールド

ルナ・ワールド

「非色」



1945年、終戦直後の日本。
アメリカ軍御用達のクラブで働いていた笑子はトムに出会い、結婚する。
子供、メアリーが産まれてからしばらくしてトムはアメリカに戻る。笑子はこれをきっかけに二人の仲を離婚したものとみなしていたが、さまざまな出来事を経て、結局トムの待つニューヨークに渡米。
淡い期待や夢がつぶされては再構築していく中で、笑子の目から見たニューヨークやさまざまな「国際結婚」家庭の人間模様が描かれる。

今ではATCK(アダルト・サード・カルチャー・キッズ)と呼ばれるであろう、有吉佐和子氏の力作。

どこが気に入ったかというと、
主人公笑子の率直さ、優しさ、強さ、しぶとさ、愛情の深さ、洞察力。

度重なる危機にもちゃんと立ち向かっていく。
何があっても解決に向けてがんばる。
周りの言うことに振り回されずに、しっかりと自分や周りを見つめ、自分の考えを持てる。

ときはまだ人種差別が合法だった時代のアメリカだから、黒人であるトムと結婚した笑子はそれなりに苦労をする。
でも有吉佐和子のすごいところは、ここで笑子だけの心の動きとかに注目して「ああ、やっぱり黒人と結婚すると苦労するのね」で終わらせていなくて、ほかにも黒人の男性と結婚した日本人女性を登場させて、苦労のしかたの違いを通して、「黒人」はひととおりでないことをしっかり出すところ。

日本では同じ「白人」に見えてもニューヨークではプエルトリコ人だと黒人よりもさらに下に見られること、などをやはりプエルトリコ系アメリカンの男性と結婚した日本女性を通して描くところ。

ほかにも、「日本人」だからと言って団結するわけでも、リベラルな考え方をするわけでもないことをユダヤ系アメリカ人と結婚した教養ある日本女性とその夫とのやり取りの中で見せる。

結果的に笑子に「(今のアメリカの階級問題の原因は)肌の色ではない」という結論に至らせている。

最初のほうでは、アメリカと日本での「人種」のとらえ方の違いにも触れている。

なんか、ものすごい壮大なスケールの作品です。
結構長いんだけど、それでも一本の小説にここまでいろんなテーマを取り込んでしまうなんてすごいなぁ~~~、と思った。
読後感も結構よかった。
ほかの人には、「読後感、悪い」と聞いてたのでかなり心配だったんだけど、読んだ後にそういった人はどうしてそう言ったのか、かなり疑問。

主人公が自分に対してもあまりに率直なもんで、私もつい自省をうながされてしまい、 こんなもの を書いてしまった。

(2005年6月1日付の日記より。2005年6月5日執筆。)


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: