Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2005/05/22
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カテゴリ: ピアノ&ギター
 絶対音感というものを持っている人たちがいる。僕も、何人か出会ったことがある。徳島にいた頃、ジャズBARでよくセッションしてくれたサックス吹きのH君も、そういう1人だった。

 H君はどんな曲でも、初めて聴いたら、それを五線譜にすぐちょこちょこっと書いてしまう。初見の楽譜を見て、すぐ歌えることはもちろんのこと、「救急車のピーポー、ピーポーというサイレンも、五線譜上の音として聞こえてしまう」と話していた。 Crosby, Stills & Nash

 僕には絶対音感はない。それどころか、五線譜のおたまじゃくしも、あまり満足には読めない。3人のメンバーでアコースティック・ギター・バンドをやっていた10代~20代の頃。主なレパートリーは、洋楽・邦楽の知っている曲のコピーか、オリジナル曲だった。

 楽譜は読めなくてもさほど困らなかった。コピー曲は耳で聴いてメロディーを知っているし、オリジナル曲のメロディーは、メンバーに歌って聴かせれば、なんとかなった。

 しかし、Crosby、Stills & Nsah(クロスビー、スティルス&ナッシュ= 写真左上 )の影響で、バンドは、歌の3部コーラス(ハーモニー)を重視するように変わっていった。例えば、彼らの代表曲でもある「青い眼のジュディ」もレパートリーにしていたが、この曲は3つの曲が組曲になった約8分もの大作。しかもハモも複雑だった。Suite: Judy Blue Eyes

 洋楽の楽譜は当時少なかったし、輸入楽譜を見つけても、メインのメロディーしか書いてないことが多かった。結局、レコードをしっかり聴いて五線譜に起こすしかなかった。曲のコードなら僕にも何とか分かったが、五線譜上の絶対的な音まで聴き取る耳は、僕にはなかった。

 有り難いことに、バンドのメンバーで、リード・ギターをやっていた友人のAには、絶対音感があった。いつもレコードを聴いて、1、2週間でハモの楽譜を書いてきてくれた( 写真右 =友人A君自筆の「青い眼のジュディ」の楽譜。曲の出だしから、いきなり複雑な3部コーラスだ)。 Loggins & Messina

 CS&N以外では、ロギンス&メッシーナ( 写真左 )、バーズ( 写真右下 )、グレイトフル・デッドなどにも取り組んだが、原曲が2部のハモだったりしても、A君が3部にアレンジしてきたり…。その楽譜のおたまじゃくしを必死で読んで、練習した。彼を真似て、僕も自分のオリジナル曲には、3度上と下のハモを楽譜に書く努力はしたが、時間は彼の3倍はかかった。決して真似のできない彼の才能に、僕はただ羨ましく思うしかなかった。

 音楽の才能には大きく分けて、耳、歌、演奏の3つがあると思うが、耳はほぼ100%先天的なものだろう。歌だって80%は先天的なものが占めるに違いない。歌の上手い人は、だいたいが小さい時から上手い(あとの20%は、本人の努力&訓練)。

 僕には、先天的な「耳」はなかったが、歌にはそこそこ自信があった。バンドをやってた時は、コンクールに出たり、デモ・テープをレコード会社に送ったりした。あわよくばという気持ちがなかったと言えば、嘘になる。しかし20代の半ば、思わぬ病気の宣告を受ける。「甲状腺腫瘍」。 Byrds

 細胞診をすると、幸い一応見かけは良性のものだったが、悪性に転化する可能性も10%くらいあるタイプ。医者からは「将来のことを考えると、甲状腺ごと全部取ってしまった方がいい」と言われた。それで、泣く泣く手術を受けた(以来、甲状腺ホルモンの錠剤を、毎朝1回必ず飲まなくてはならない人生)。

 その手術の際、声帯を少し傷付けてしまった。術後の後遺症で、それまで軽く歌えていた高音が出なくなった(声帯を傷付ける可能性は事前に言われていたので、医者には文句は言えなかった)。歌のキーは必然的に下がり、昔のキーでは歌えなくなった。音域も狭まり、昔歌えていた歌がもう難しくなった。

 録音に残るバンド時代の歌(一応テープからCDにして残している)をいま聴くと、まるで自分の声でないような錯覚に陥る。今では、弾き語りをする時は、自分に合うキーに変える。音域の広い、難しい曲を歌うような冒険はまず、しない。他人の歌伴をするのは何ら問題はないのだが、僕自身が歌うようリクエストされた時は、事情を正直に話して、許してもらう。

 いま僕ができることは、自分が歌える音域の曲のレパートリーを増やすこと。そしてソロ・ピアノで(あるいはトリオで)できる曲を増やし、演奏のレベルをもっと磨き、高めること。歌は少し不自由になったが、それでも音楽は大好き。ピアノやギターを弾くことも大好きだ。ハンディができても、音楽から離れようとは思わない。僕にとって、音楽のない人生は考えられない。





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Last updated  2005/05/22 10:47:45 AM
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うらんかんろ

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Comments

汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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