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『週刊金曜日』11/29号に、中野坂上デーモンズ『かみ』の劇評を執筆。
Nov 29, 2024
カルチャーメディア「NiEW」に、ウンゲツィーファ 10周年記念演劇公演『8hのメビウス』の劇評を執筆。
Nov 25, 2024
愛による救済を求める「渇望者」たちの群像 性愛を軸にした物語を、歌と踊りのレビューを交えて描いてきた劇団毛皮族(2000年~)。劇団主宰者の劇作家・演出家の江本純子は、2016年に『過激派オペラ』で映画監督デビューしている。この度、監督2作目である『愛の茶番』が12月7日から渋谷ユーロスペースなどで上映される。江本はシナリオ・監督・編集・製作・出演をこなした。本作はタイトルや後述する創作手法が示す通り、愛に飢えた者たちの滑稽な姿が描かれる。映画美学校での試写(11月7日)を観た評を記したい。 浮気性で何人もの女性と関係を持つリョウスケ(岩瀬亮)に捨てられたルミ(遠藤留奈)が、彼を忘れられないままキヨヒコ(金子清文)と出会って結婚する。物語は、ルミがリョウスケと付き合っていた頃から現在までの回想である。その物語の中に、リョウスケの数ある浮気相手の一人・リエ(菅原雪)、ルミの元セフレ・スミオ(吉川純広)、リエの恋人・トモタロウ(美館智範)が登場する。一方、ルミにはシンガーソングライターの妹・アキ(冨手麻妙)がいる。姉妹は波長が合わない。だがルミは、アキが行なうライブやボクササイズ、『新婚さんいらっしゃい!』を模したMCの番組に出演するなど、ストーカーのように妹につきまとう。ルミが神のような魅力を感じてキヨヒコに惹かれたように、アキもスピリチュアルな冒険小説家のK(藤田晃輔)の手玉に取られて婚約。そのためにマネージャーのドンコ(江本純子)を困惑させる。物語が進む内に、ルミとアキそれぞれの人間関係が交わって複雑化してゆく。その様は、愛に飢えた人間の欲望が一体となって肥大化したような印象を与える。結局は似たもの同士だったルミとアキが、絶対的に安心できる救済者や安住の地を、最終的にどこに求めるか。彼女たちのとりあえずの答えが、結末に下される。 ルミの回想から物語が展開されるため、オープニングとラストシーンでの現在を描く映像以外は全てモノクロで撮影されている。台詞には英語字幕が付き、各シーンの前にはこれから起こることを、あらかじめ説明するト書きが挿入される。そのために全体的には、レトロな外国の無声映画のような雰囲気が漂う。映画の導入はルミの回想ではあるものの、彼女の視点から描かれる物語ではない。登場人物が誰と何をして何を思ったのかというト書きがアナウンスされるために、第三者の視点で彼らを一人ひとり俯瞰して描いてゆく。シーンの時系列がシャッフルされている上に、役名と俳優が一致しない序盤は、複雑な人間関係を掴みにくく混乱する。だがそれによって、絶対の愛をもとめてぐちゃぐちゃになったりルミの脳内や前後する記憶、万華鏡のように変化する人間模様をそのまま体験しているような気分にさせられた。 本作のもう一つの特徴は、様々な出来事が北千住にあるアートスペースBUoYで撮影されている点だ。2017年にオープンしたBUoYは元々、2階はボーリング場、地下が銭湯だった。共に広い空間だが、2階がカフェ、ギャラリー、稽古場スペースに、大浴場や洗い場を残した地下は劇場空間となっている。コンクリート打ちっぱなしの無機的な地下空間で、ほとんどのシーンが撮影されている。そこに洋服店や登場人物の部屋、居酒屋、スーパー、クラブといった場所が、その都度、舞台美術や小道具を設置して演じられる。この撮影方法は、床に白い枠線と建物の説明を入れただけの舞台セットで、村で起こる出来事を撮影したデンマーク映画『ドッグヴィル』(2003年)を想起させられる。だが『ドッグヴィル』との違いは、画面内で起こる出来事を、椅子に座る観客が観劇していることだろう。本作は、より演劇的な見せ方を強調した作りとなっている。加えて本作における観客は、単に物語を見守るだけではない。一部のシーンでは、出演者になる観客もいる。俳優と空間を共有する観客もまた、共同創作者であり「渇望者」なのだ。 このような設えの下で創られた映画には、スケッチのように様々なシーンが展開される。私が特に印象に残ったのは、ライブを終えて物販するアキとドンコが、客として入れたサクラですら誰一人CDを買ってくれないことで、2人が口喧嘩するシーン。また、何も展示物がない美術館で出会ったキヨヒコに惹かれたルミが、静かに会話を交わしてお互いを探るシーン。このシーンは、ルミが最後に真っ白な壁に張り付いて終わる。2つのシーンには、日常にありそうなリアルな会話の面白さと、シュールな笑いの両極端が表現されている。特に後者の笑いは、北野武の映画を思わせる、余分な説明を省いてシーン同士をつなげる編集の妙によってもたらされる。こういった笑いが、本作にはたくさん散りばめられている。 個性的でクセのある俳優陣は皆魅力的だが、何よりもアンニュイな雰囲気のルミを演じた遠藤留奈の存在が大きい。いつでもどこでもリョウスケと濃厚なキスをしてスキンシップをしては他人に見せびらかし、クラブでははっちゃけて騒ぐ。その反面、リョウスケに捨てられた後は、鼻水を垂らしながら号泣したりと感情の起伏を表現してみせる。さらにオープニングでのいきなりの裸体を含めて、たびたび下着姿になって生々しい肢体を画面に晒す。身体全体で愛に救われたいルミが、次第にいじらく思えてくる。簡素かつオシャレな画に、遠藤は臭い立つ色気や粘膜感を与えていた。 映画内で物語に立ち会う観客と、それをスクリーン越しに眺める映画の観客。視線が二重に客観化されることで、ルミを含めた人物の滑稽で愛らしい姿を、我々は距離を持って眺めることになる。と同時にその愚かさと愛おしさは、観客を含めた人間自体のことだと気付かされる。
Nov 25, 2024
『しんぶん赤旗』2024年11月18日付に、前進座『雪間草―利休の娘お吟―』の劇評を執筆。
Nov 18, 2024
『週刊金曜日』11/1号に、加藤健一事務所『灯に佇む』の劇評を執筆。
Nov 1, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年11月号に、焚きびび『溶けたアイスのひとしずくの中にだって踊る私はいる』の劇評を執筆。
Oct 19, 2024
『週刊金曜日』9/27号に、Pカンパニー ~シリーズ罪と罰 CASE12~『あの瞳に透かされる』の劇評を執筆。
Sep 27, 2024
『しんぶん赤旗』2024年9月23日付に、青年劇場『失敗の研究―ノモンハン1939』の劇評を執筆。
Sep 23, 2024
『週刊金曜日』8/30号に、ももちの世界#10『日曜日のクジラ』の劇評を執筆。
Aug 30, 2024
『しんぶん赤旗』2024年8月26日付に、こまつ座『母と暮せば』の劇評を執筆。
Aug 26, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年9月号に、NODA・MAP『正三角関係』の劇評を執筆。
Aug 20, 2024
『週刊金曜日』7/12号に、小松台東『デンギョー!』の劇評を執筆。
Jul 12, 2024
『しんぶん赤旗』2024年6月21日付に、劇団俳優座『野がも』の劇評を執筆。
Jun 21, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年7月号に、世田谷パブリックシアター『Medicine メディスン』の劇評を執筆。
Jun 20, 2024
『週刊金曜日』6/14号に、終のすみか『Deep in the woods』の劇評を執筆。
Jun 14, 2024
『週刊金曜日』5/17号に、早坂彩『新ハムレット』の劇評を執筆。
May 17, 2024
『しんぶん赤旗』2024年5月7日付に、新国立劇場『デカローグ 1~4』の劇評を執筆。
May 7, 2024
「JOIN」(日本劇団協議会)108号のアンケート企画「私が選ぶベストワン2023」を回答。
Apr 23, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年5月号に、パラドックス定数『諜報員』の劇評を執筆。
Apr 20, 2024
『しんぶん赤旗』2024年4月12日付に、東京芸術座『医者の玉子』の劇評を執筆。
Apr 12, 2024
カルチャーメディア「NiEW」に、いいへんじ『友達じゃない』の劇評を執筆。
Apr 10, 2024
『週刊金曜日』4/5号に、MONO『御菓子司 亀屋権太楼』の劇評を執筆。
Apr 5, 2024
『しんぶん赤旗』2024年3月29日付に、青年劇場『マクベスの妻と呼ばれた女』の劇評を執筆。
Mar 29, 2024
『週刊金曜日』3/8号に、オフィスコットーネプロデュース 『兵卒タナカ』の劇評を執筆。
Mar 8, 2024
『しんぶん赤旗』2024年2月26日付に、TRASHMASTERS『掟』の劇評を執筆。
Feb 26, 2024
前衛(的)舞台芸術専門紙『artissue』に、「「夢うつつ」の世界と対峙するために――2023年演劇回顧」を執筆。取り上げた作品…●劇作家女子会。feat.noo クレバス2020『 It's not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』●NODA・MAP『兎、波を走る』●日本劇団協議会『森から来たカーニバル』●世田谷パブリックシアター『無駄な抵抗』
Feb 21, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年3月号に、王子小劇場演劇ショーケース『見本市2024〜しばいぞめ〜』の劇評を執筆。
Feb 20, 2024
『週刊金曜日』2/2号に、シス・カンパニー『シラの恋文』の劇評を執筆。
Feb 2, 2024
『しんぶん赤旗』2024年1月22日付に、二兎社『パートタイマー・秋子』の劇評を執筆。
Jan 22, 2024
『ミュージック・マガジン』2024年1月号に、北九州芸術劇場クリエイション・シリーズ『イエ系』の劇評を執筆。
Dec 20, 2023
『週刊金曜日』12/15号に、世田谷パブリックシアター『無駄な抵抗』の劇評を執筆。
Dec 15, 2023
『しんぶん赤旗』2023年12月1日付に、燐光群『わが友、第五福竜丸』の劇評を執筆。
Dec 1, 2023
『週刊金曜日』10/27号に、劇作家女子会。feat.noo クレバス2020『It's not a bad thing that people around the world fall into a crevasse.』の劇評を執筆。
Oct 27, 2023
『しんぶん赤旗』2023年10月23日付に、劇団青年座『同盟通信』の劇評を執筆。
Oct 20, 2023
『ミュージック・マガジン』2023年11月号に、劇団アンパサンド『地上の骨』の劇評を執筆。
Oct 20, 2023
『週刊金曜日』9/29号に、ぽこぽこクラブ10周年記念公演 ぽこぽこクラブ × 千葉哲也『あいつをクビにするか』の劇評を執筆。
Sep 29, 2023
『週刊金曜日』8/25号に、FUKAIPRODUCE羽衣『女装、男装、冬支度』の劇評を執筆。
Aug 25, 2023
『しんぶん赤旗』2023年8月21日付に、劇団民藝『善人たち』の劇評を執筆。
Aug 21, 2023
『ミュージック・マガジン』2023年9月号に、劇評:NODA・MAP『兎、波を走る』の劇評を執筆。
Aug 18, 2023
『しんぶん赤旗』2023年7月21日付に、劇団チョコレートケーキ『ブラウン管より愛をこめて -宇宙人と異邦人-』の劇評を執筆。
Jul 21, 2023
『週刊金曜日』7/21号に、ピンク・リバティ『点滅する女』の劇評を執筆。
Jul 21, 2023
前衛(的)舞台芸術専門紙『artissue』に、ハイバイ『再生』の劇評を執筆。
Jul 15, 2023
『週刊金曜日』6/30号に、著=流山児祥、編=西堂行人『敗れざる者たちの演劇志』(論創社)の書評を執筆。
Jun 30, 2023
『しんぶん赤旗』2023年6月23日付に、劇団俳優座『この夜は終わらぬ。』の劇評を執筆。
Jun 23, 2023
『ミュージック・マガジン』2023年7月号に、渡辺源四郎商店 戦争を考える2作品連続上演『空に菜の花、地に鉞』の劇評を執筆。
Jun 20, 2023
『しんぶん赤旗』2023年6月2日付に、劇団民藝『カストリエレジー』の劇評を執筆。
Jun 2, 2023
『ミュージック・マガジン』2023年6月号の「ポイント・オヴ・ヴュー」欄に、著=流山児祥、編=西堂行人『敗れざる者たちの演劇志』(論創社)の書評を執筆。
May 20, 2023
『週刊金曜日』5/19号に、流山児★事務所 Okinawa 二部作 1945⇔1972『キムンウタリOKINAWA1945』の劇評を執筆。
May 19, 2023
『しんぶん赤旗』2023年5月12日付に、劇団文化座 佐々木愛女優生活60年『母』の劇評を執筆。
May 12, 2023
演劇批評誌『シアターアーツ』(晩成書房)67号(2023春)の特集「なかったことにする?/しない?」座談会に参加。
Apr 29, 2023
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