陽炎の向こう側             浅井 キラリ

陽炎の向こう側   浅井 キラリ

この空の下で 24




土曜日は、祐子と銀座へショッピング。

日曜日は、家でゆっくりとくつろいだ。

庭に椅子を持ち出して、雑誌や、積ん読状態の本を読んだ。

父と兄とゴルフの打ちっ放しに出掛けている。

夕方、母親と一緒にスーパーに夕食の食材を買いに出掛けた。

そして、一緒に料理をした。

彩子は、母親から特別料理を習うことはなかったが、時々、一緒に料理をしている内に少しずつ料理を覚えていた。

「いつかあなたも、家族のために料理を作る日が来るのね。」

そんな、母の一言に、彩子は翔のことを思い出すのだった。

『翔さん、今頃仕事中かしら。』

夕食後、家族でテレビを観ていたら、電話が鳴った。

兄が出た。

「彩子、お前に電話。」

彩子は、誰とも聞かず、出た。

子機を持ったまま自分の部屋へ行った。

「もしもし、お電話変わりました。彩子ですけれど。」


翔からの電話


「僕、翔だけど。今、大丈夫?」

「翔さん?大丈夫です。」

「どうしているかなって思って。」

「昨日は、友達とショッピングに行ってきました。今日は、家で。翔さんは?」

「昨日も今日も仕事。今も、職場から電話しているんだ。何となく、森川さんの声が聞きたくなって。迷惑じゃなかった?」

「私も、翔さんのこと考えていました。どうしているのかなって。お仕事、大変ですね。納期いつでしたっけ?」

「今週末。これを終わらせて、来週、森川さんと美術館に行くの楽しみにしているんだ。そうだ、この間、東山魁夷の展覧会に行こうって誘ったけれど、悪い、今週末で終わりだったんだ。ちゃんと調べてなくて。」

「私は別に大丈夫です。」

「映画でもいい?」

「いいですよ。今、何やっているかしら?」

「何か観たい映画ある?」

「う~ん。あのう、もしよければ、『プリティー・ウーマン』は・・・。ああ、でも、男の人向きじゃないかも。他にやっている映画、知っていますか?」

「それでいいよ。それにしようよ。確か、話題になっていて、並ぶらしいから指定取っておくね。」

「そんな、並んでもいいですけど。」

「始めて誘うんだから、チョットいいとこ見せなきゃね。美術館の借りもあるし。」

「ありがとうございます。」

「また、近くになったら電話するよ。」

「分かりました。まだ、仕事するんですか?」

「ちょっとね。」

「体気をつけてくださいね。」

「ありがとう。じゃあ、あしたまた。お休み。先に切って。」

「はい、お休みなさい。」


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