第8回オフ会(佐藤高崎経済大講師)



高崎経済大学地域政策学部講師
佐藤 徹 氏

1 市民会議とは何か
 ・「市民会議」をインターネットで検索するといろいろなものがでて
きますが、○○市民会議、市民○○会議などという名称や看板だけで、
今日お話しする市民会議であるかどうかを判断することはできません。
私は、地域的公共的課題の解決に向けて、市民が主体で行政と協力・連
携して、継続的に活動を行う中間的な組織や場を「市民会議」と定義し
ています。もう一つ、プロセスに着目して考えた場合、市民・行政等の
多様なアクターの参加による協働型の政策形成ないし実践活動の場であ
るといえます。
 ・市民会議を3つ(分野、期間、エリア)の基準で、7つのタイプ
(A型~G型)に分類しました。もっとも多いのはA型(包括的、期
間限定、全市レベル)で、大和市や八王子市がここに入ります。有名
な志木市は、C型(包括的、常設、全市レベル)になります。
 ・実際、どういうものがあるかというと、2000年の地方分権一
括法以来、自治、参加、協働への関心が高まって条例を制定するのに
ともなって設置されたものと総合計画策定にあたって設置されたもの
などがあります。

2 市民会議はどのように進められるか
・100の市民会議があれば100のドラマがあります。たかさき市
民参加推進会議の場合は、高崎市が市民参加推進計画策定のために公
募を基本として委員を集めました。テーマは「市民参加、市民自治、
市民と行政の協働によるまちづくり」を掲げ、1年1か月間延べ50
数回の会議を行いました。
・市民会議(特にA型、B型)を考える上でどのようにデザインする
かを2つの柱で考えます。フレームデザイン(基本設計)とプロセス
デザイン(実施設計)です。
・フレームデザインは、5W2H(なぜ市民会議なのか、誰が議論す
るのか、何を議論するのか、何を成果とするのか、いつまでにやり遂
げるのか、どのように進めるのか、どのように行政に反映させるのか
ということ)です。具体的にはデザインの項目として、メンバー構成、
組織形態、呼びかけ方式、活動期間、開催日時、運営コスト、事務局
体制をどうするか、などがあります。そして運営方針や基本ルールを
決めていきます。
・プロセスデザインは、基本的なスタイル(5つの段階)があると考
えます。
フェーズI(初動期)、フェーズII(学習期)、フェーズIII(創造
期)、フェーズIV(合意形成期)フェーズV(報告期)の5段階。
初動期が一番の修羅場になります。この時期は市民も行政も不安にな
り、いろいろな思いが渦巻きます。でもこじれない会議は市民会議で
はありません。こういう状況ではファシリテーターは決まりません。
3回目ぐらいまでは紛糾しますが、4回目ぐらいから軌道に乗って
きます。
学習期は、市民参加の経験を語り合う時間を持ちます。行政からの情
報提供を受けることもします。
創造期が、一番コアな部分です。市の将来像を設定して現状とのギャ
ップをどのようにしたら埋めていけばよいのかを考えていきます。
合意形成期は、合意できたところだけまとめ、提言していきます。
たかさき市民会議は、期間限定型ですので、最後に市長に提言(報告
期)して解散しました。
 ・高崎市では、たかさき市民会議が提言を出した後、現在、第2ス
テージに入っています。庁内組織と新たな公募による市民参加委員会
が協働で市民参加推進計画案を策定中です。

3 市民会議の意義
 ・市民参加には、議会、コミュニティ、NPO、行政の4つの参加
対象があります。市民参加とは行政に市民を巻き込むという発想では
なく、市民が主体で行政に参加するものです。
 ・市民会議には、どういう機能があるのかというと、合意形成機能、
協働促進機能、自治力向上機能という3つの機能があります。
  合意形成には、「継続性」「対話性」「場」が必要条件ですが、
どのような参加手法が求められているのでしょうか。本来は議会が担
うべきものだと思いますが、従来、行政はいろいろな考えを持ってい
る市民に対して個別に対応していましたが、これからは市民の間であ
る程度合意形成される市民会議のような仕組みが必要です。
 ・協働を促進するには、目的の共有、パートナーシップ、相乗効果
が発揮できるような連携、協力の3つの要素が必要と考えます。それ
には年齢や肩書きを超えた参加の場と一定の時間が必要です。
 ・自治力の向上とは、「自分たちのまちは自分たちで作っていこう」
という意識、能力のことですが、そう思う「気づき」を市民会議は与え
てくれます。
 ・「市民参加のエレベータ・モデル」を考えてみました。3つの階層
がありまして、1階が行政主導の市民参加、2階が協働、3階が自治
で、上に行くほど行政の関与度が下がって、市民関与度が上がります。
市民会議は2階に位置づけることができます。

4 市民会議を軸とした地域創造戦略
 ・期間限定型の市民会議は提言が終ると、行政は手を引きます。しか
し活動を続けたいという有志の市民たちの意向で自主運営されますが、
多くの場合、その後弱体化する傾向にあります。しかし、こういう組織
こそ条例や計画の推進母体として最もふさわしいわけです。あくまでも
提言は第1ステージであり、期間限定型の策定組織から常設型の実践型
組織へといかに脱皮していくのかが重要なポイントです。
 ・また、市民会議には協働・自治の輪を広げるプラットホームの役割
があります。行政側にとっては協働の学びの舎、市民側からは課題解決
に向けた運動の輪を拡大する場になります。
 ・市民会議への行政の支援は、どうあるべきでしょうか。組織的支援
としての基本的スタンスは、「つかず、はなれず」の関係を保つこと
です。行政は、市民会議の創造性や自主性を損ねてはいけません。市民
と行政のお互いの持ち味をいかに生かしていくかが、市民会議の本質
です。
 ・そして、ある程度市民会議が成熟してきたら、もともと多元的なメ
ンバーによる中間的な組織であるという性格を活かし、中間支援組織を
めざしていく。また一つの方向性として、行政は市民会議に財源や政策
提案権の一部などを移譲していくことも考えられます。




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