ニーズよりも潜在ニーズの把握


 平成13年3月、現場第一主義の上司とプライベートで三島由紀夫の「潮騒」で有名な鳥羽市の離島「神島」に行ったときのことです。島内をご好意で案内していただいた、漁協の方がおっしゃるには「ここは台風の進路にあたるので、頑丈な堤防が欲しい。そうすれば台風のとき、本島へ漁船を避難させなくて済む」ということでした。また、「ここは潮騒が映画化されたおかげで少しは知られているが、新鮮な魚以外に観光の目玉になるようなものがない。潮騒の中で「歌島」と呼ばれていたので、歌碑の建設などで歌で売り込めないか」ともおっしゃいました。
 私の上司がこれを聞いていったのは、「我々が聞くのは前の話ではなく、後の方だ」ということです。
 これを私なりに解釈すると、我々行政マンは地域の政策を担当するものとして机上で理論を組み立てるのではなく、現場から発想するべきである。そしてその際に大事なのは、住民の方々の「こんなことをして欲しい」という、陳情なり要望をお聞きし、その実現に向けて努力するのではなく、住民の方々の「こんなことで困っている」という声を聞き、それを解決するにはどうしたらよいかを考えることではないかということです。  
 いわば「ニーズに応えるのではなく、潜在ニーズに対しての政策を考える」という一歩先の発想が事業官庁ではなく、政策官庁には求められているのだと思います。
 商売の世界ではお客さんから「こんなものが欲しい」と具体的に求められても、その段階(ニーズ)ではもう遅く、高付加価値商品ではないということです。こんなことで困っているという(潜在ニーズ)をつかむことが大切だということです。
我々は、地域政策のプロとして日頃から現場を重視し、Reactive government(受身の行政)ではなく、Proactive government(積極的な行政)を心がけていく必要があります。
 それには例えば、パスポートの有効期限が来る県民に対して、事前にそのことをお知らせし、なおかつご希望とあれば発行や郵送などのサービスをするのが「気がついたらパスポートが切れていて困った」という県民の潜在ニーズに応じた、顧客志向に立った、真に県民が満足する県政なのではないでしょうか。 
 (02/3/14配信のメール)


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: