企業の責任の取り方と再発防止策


 雪印食品、日本ハム、ダスキンといった食品を扱う企業から東京電力や三井物産といった日本を代表するような大企業まで不祥事が次から次へと明らかになっていますが、その不祥事に対する責任の取り方になにか釈然としないものを感じます。
 不祥事が明らかになると、まず、事実が小出しに出てきて、それに対して企業からは「組織ぐるみで行ったことではなく、個人や一事業所単位の行為である」という弁明がなされます。
 次にマスコミの追求や監督官庁などの調査により、組織としての関わりが指摘されるに至り、トップの責任問題が取りざたされる事態になりますが、ここでも最初はできるだけ傷を浅くしようとする組織防衛の姿勢が垣間見え、いわば世間がうるさいので形だけ責任を取った格好にしようとする思惑がみえます。
 そのうちにマスコミや世論に抗しきれなくなり、トップが辞任して終息を図るというのが大体の決まりきったパターンになっています。
 不祥事を起こした場合、トップが経営者として責任を問われるのはもちろんです
が、その責任の取り方の第一は役職を辞めることではないはずです。
 むしろ批判に応え、不祥事の原因を分析し、再発防止策を講じ、それを消費者、
顧客、国民に説明する責任がまず最初にあるのではないでしょうか。
 以前から指摘されていることですが、どうも日本ではトップが辞めればそれで事
が済むというか、それで責任を追及する声も弱まり曖昧なまま終わることが多いよ
うに思います。
 しかし、それではまた同じようなことが起こらないという保証はありません。では再発防止には何が有効なのでしょうか。まずは情報公開を徹底することです。情
報公開は官公庁だけではなく民間企業にとっても重要です。
 弁護士の中坊公平氏が「情報公開には不正の除菌作用がある」と指摘されているように情報が公開されるとわかっていて違法行為を犯す者はいません。
 次に社内の不正を訴え出る「ホットライン(内部通報)制度」を整備することで
す。従来、内部通報や内部告発といえば、なにか裏切り者のようで陰湿なイメージがありましたが、放置しておいたらそれこそ会社が壊れてしまう事態になるのを防ぐ役割を果すのですから警鐘者(ホイッスル・ブローアー 笛を吹く人)です。
 そしてコンプライアンス(法令順守)を徹底するため、米国のゼネラル・エレクトリックが取っているように「ワンストライク・アウト」(一回の不正で退社)という厳しい決まりを定めることが考えられます。
 再発防止策と同時に考えなければならないことは、責任は監督官庁の意向に沿
うために取るのではないということです。東京電力でかつて社長、会長を務めた、
木川田一隆さんは「企業を原点に社会を見るのではなく、社会に原点を置いて企
業のあり方を考える」という企業の社会的責任論を経済同友会代表幹事として提
唱されたそうです。
 不祥事を起こした企業のトップが取る責任は、自らの進退をどうするかという内
向きの責任ではなく、顧客である国民への説明を果す社会的責任のはずです。
※今回のメインテーマは、朝日新聞の「私の視点」欄へ投稿するための字数の合わせたので少し長くなりました。結果は不採用でした)
(02/10/17 メルマガ46号より)




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