2:悲劇を生む大宴会

その2:悲劇を生む出発前の一人大宴会


そしていよいよ出発日がやって来たのだが~

出発日の前日・・・

祝!アメリカ本土初上陸(前日)記念大祝賀会を
我が家で一人で盛大に行っていたのである。

<初めてのアメリカか・・・危ないのかな~?
 飛行機落ちたらどうしよう?やっぱ死ぬよな~怖いだろうな~
 流れ玉に当たって死んだら痛いだろうな~
 強盗に襲われたら、闘うべきだろうか?
 すなおに金渡したら空手やってた意味がないしな~
 でも銃には勝てないしな~
 死んだら当然、親がこの部屋に来るんだろうな~
 見られたらまずいもんは捨てといた方がいいかな~
 遺書でも一応書いといた方がいいかな~
 お礼すら言ってない人たくさんいるしな~
 偉人は、やはり早く逝くのかな~っても
 まだ伝説を何も作ってないしな~
 などと、ジミヘンやらジャニスやらQUEENやらNIRVANAを聞きながら
 酒が進むにつれて、
 俺には良くある事なのだが妄想が暴走を始め・・・・>


収集がつかなくなる頃には・・・

大抵、つぶれて寝ているのである。


そして出発日・・・


寝坊をする・・・
起きても全然酔っている自分に気がつく。
しかし時間的には成田エキスプレスは余裕だが、
国際運転免許書を取るにはギリギリ。

ダッシュで身支度を整え~
しかし冷蔵庫の整理をやってない事に気付く・・
酔っていてめんどくさかったから全部捨てる。

そして外に出ると大雨が待ち受けていた。

時間的に本当にギリギリ。

大雨の中、
傘もささずに大きな旅行鞄をガラガラと引きずりながら
近くの駅まで猛ダッシュ!

そして電車は新宿駅に到着!

成田エキスプレス発進まで、なんと あと30分!!

そこで考える。諦めるか?新宿警察署まで走るか?

これは運命を賭けた、大きな賭けだ!


所得まで20分かかるなら、片道5分で行けば良いのだ!
悩む暇があったら走るんだ!!
自分にそう言い聞かせる。


大きな鞄をガラガラ言わせながら、
時にはかついでひたすらダッシュ!

道に迷う。

通りすがりの人に道を聞く。またダッシュ!
予想より全然遠い。
そしてダッシュ!吐きそうになる。でもダッシュ!

そして新宿警察署になんとか到着。
10分もかかってしまった!発進まで あと20分!!
ぐるじい~咳が止まらない。
俺はじじいか?


どうする?駅までゆっくり戻るか?
駄目元で頼み込んで作ってもらうか?
ここまで来たんだ!やるだけやってみよう!


酔ってるだけに勢いはすさまじい。


鞄をガラガラ言わせながら二階の免許書交付所へ。
静かだが人がたくさんいた。国際免許のコーナーを探す。

見つけた!しかも誰も並んでない!
もしかして、ついてるかも!

静かな交付所を鞄をガラガラ言わせながら受付に詰め寄る。

俺:『すいません!!大急ぎで国際免許作ってください!
   あと20分で成田エキスプレスが出発しちゃうんです!!
   お願いです!!!』

たくさんの人々が一斉にこっちを見たのが見えた。

おまわりさん(以降):
  「あれあれ、そりゃ~大変だ~
   じゃ~とにかく所定の大きさの写真を下さい」

白髪まじりの優しい感じのおまわりさんだった。

急いで用意してきた写真を提出。

お:「あのね、申し訳ないんだけどね~
   これ少し小さいみたいなんだよね~。
   悪いけど~あそこの写真機で写真取ってきてよ~」

なに~!ちゃんと測って切ってきたはずなんだけどな~
でも、文句を言っても時間をロスるだけだ。
鞄をガラガラ言わせながらスピード写真機へダッシュ!!

以前からアメリカに行ったら荷物に目を離したらすぐ盗まれると聞いていた俺は、
自分の荷物だけは肌身離さぬようにしようと、自分に言い聞かせていたのだが~

目覚めてから気分はアメリカな俺は見事に酔っていたせいもあり、
警察署内でも大きな旅行鞄を肌身離さずガラガラと引きずり回していた。

そして鞄をそばに置き、写真の値段は ¥500。
千円札を挿入。 出来上がった写真の俺は完璧にピヨピヨしていた。
そしておつりを取ろうと受け皿に手を伸ばす。


??ん?


二枚あるぞ。
なぜか500円玉が二枚入っている。
考えられる事はわずかしかない。












・・・・どっきりカメラ?


いやそれはないだろ~最近あの番組やってないし。
これは俺様のもんだ!
これはカーテンの中での出来事。誰からも見えてないはず!


ついてるぞ!!神よ~!!生きていて良かった~!!


すかさず財布に500円玉二枚を挿入。

そしてダッシュで写真を受付のおまわりさんに渡す。

待つ事約二分。
お:「できたよ。はい。」

はえ~よ!やれば日本の警察もやるじゃね~か~!!

俺:『ありがとうございます!早いじゃないですか!
   本当にありがとうございます!』

お:「だって、急いでるんでしょ~。
   早く作れって言ったじゃない(笑顔)」

  「どこに行くんだい?一人?」

俺:『はい!一人です。アメリカ行ってきます!』

お:「仕事かなにか?」

俺:『いえ無職です!旅です!』

お:「若いっていいね~気をつけて行ってくるんだよ。
   早く行かないと成田エキスプレス行っちゃうよ。
   せっかく急いで作った意味がなくなっちゃうからね。」

俺:『・・・(あんまり若くないんだけど・・)
   本当にありがとうございます!!』

お:「礼はいいから、早く行きなさい」

優しい人だ。

向こう側で観察していた人々の顔もなんとなく笑顔に見えた。
小さく拍手してくれてるおばあちゃんがいた。
酔っていたせいもあったのかもしれないが、
俺は感動して泣きそうになった。

しかしこれで一軒落着ではないのだ。
帰りもまたギリギリなのである。
またもや鞄をガラガラ引きずりながら再び礼を言い、
ダッシュで外へ向かい新宿駅までの最短コースを、
入り口で棍棒を持って立っていたおまわりさんに聞く。


優しく教えてくれた。
また感動する。


いつもは憎たらしいおまわりさんが、
これ程味方になると心強いとは。


それはさておき・・・
今の俺には時間がない。ダッシュするしかないのだ。
吐きそうになりながらもダッシュ。

そして・・・


なんと成田エキスプレス
発進2分前に無事ホームに到着できたのだ!
咳が止まらない。やっぱり俺はじじいか?


俺はそう、賭けに勝ったのだ!

勝ったぞ~!!

感動の名作「スクールウォーズ」の最終回の滝沢先生(山下真司)はこんな気分だったのだろう。
あの主題歌が頭にコダマする・・・


急にうれしさが全身に込み上げてきて爆発しそうになり、
全力で叫びたくなった!!

しかし、そこは平日真昼間の新宿駅。

勝ったぞ~!!

拳を天に突き上げいきなり叫ぼうものなら、


たぶん新宿警察署へ逆戻りだ。

・・・・感動を押さえながら車内へ・・・

諦めなくて本当に良かった。頼み込んでみて本当に良かった。
言ってみるもんだな~とつくづく痛感。

こうして俺は、これから起こるであろう出来事に胸を膨らませながら、
しばし眠りにつくのであった・・・

つづく。


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