8:LA編・悪夢 1~暴走~

その8:悪夢 1~暴走~


俺は逃げた。
一目散に逃げた。
逃げるのは大嫌いだが、
まだこんなとこで死ぬ訳にはいかないのだ!


ガラガラ蛇や毒蜘蛛に噛まれたり刺されたりしてこんなとこで野垂れ死に、
白骨化して自然に帰るのなんか絶対に嫌だ!

生きて日本の土を踏むんだ。


と、大げさに書いたものの、
実際にはガラガラ蛇にも毒蜘蛛にも遭遇はしていないのだが・・・

で、 この日は結局アウトレットモールに行くのを諦めてユース・ホステルに帰った。

慣れない道を長時間運転した為、ユース内で仲良くなった人達と飲んだものの~
0時には疲労の為、部屋に戻る。


そして翌日。

この日が人生史上最悪の一日になるなど、
あのサンタモニカの晴れた爽快な朝日に包まれて~目覚めた時には思いもしなかったのだが・・・

まず起きて、用意をしてから再びアウトレットモールの場所をユース内の地図で確認。
Rはモールの名前であり、出口の名前はそのもっと先のロス・パパスだという事が判明。

モールをめざし進む事、二時間。
昨日、悲惨な思いをしたRという名の高速の出口を通過。
なんとなく一回り自分が大きくなった気がした。

そして更に進む事、数十分後ロス・パパスという出口発見。
買い物をし、 渋滞を見越して早めにモールを出てユースに16時頃到着。



ここまでは良かった。



その日は夕方から、3日間泊らせてくれた友人Yの友人B
(日系人でクラブに一緒に行った)が
オレンジ・カウンティーに住んでるという事を知り、
彼の家に遊びに行く事になっていたのだ。

オレンジ・カウンティーとは、
あんまり悩みがなさそうなバンドばかりを輩出している土地の名前だ。
日本で言えば州が県なら、カウンティーは市みたいなもんかな?
規模は全然あっちの方がでかいが、実際は住宅街らしい。

とにかく、この目でその地を見てみたかったのだ。

そこでYにBの家の行き方の地図を書いてもらう。
地図

地図を見る。とても簡単そうだ。
これなら迷うまい。

高速をひたすら2時間程~道なりに進み、
GoldenWestという名の出口を出ればすぐだ。

簡単じゃ~ん!!!昨日みたいな思いはさんざんだ。

そして出発。

モールに行くのとは反対の方向の全然異なるフリーウェイ。

車を再びアクセルベタ踏みの全速力でかっ飛ばす。

マナーの悪い車を追い抜き、大声で歌いながら~
楽しいドライブをしていたのだが、



進む事・・・2時間程して、



俺はある事に気がついてしまったのだ。



いや、途中で『おや?』とも思ったのだが
考えないようにしていたと言った方が、
もしかしたら正確なのかもしれないのだが・・・





そろそろ着いてもいい頃なのに、
まったく着く気配がしないのだ。





なぜなら周りの車の台数が明らかに減っている。
そして景色が明らかに住宅街ではないからだ・・・

おかしい。。

再び嫌な予感が俺を包む・・・・

スピードを落としYのくれた地図を確認。

道の名前、今まで通りすぎた風景などを総合して考えると・・・






実は分岐がたくさんあるにも関わらず、
この地図にはその事に関してあんまり触れてないという事がなんとなくわかってくる。









この辺の道に慣れているY的には直進的な道かもしれないが、
右も左も土地の位置関係もアメリカの交通ルールにさえ適当な俺には、
Yの書いた手書きの地図のみで
このアメリカ大陸をうろうろするのは
もしかして・・・とても

無謀だったのかもしれない。

しかも夜に。

でも、Yには明らかに悪気はない。責められない。



そこで、とうとうやっと気付いたのだ。



























俺はいつのまにか
間違った道を全速力で進んでいた
という事に・・・

悪夢はここから始まった。



<つづく>


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