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2010.09.17
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カテゴリ: びしびし本格推理
デビュー作「背の目」の続編となる道尾秀介のホラーを読んだ。

○ストーリー
作家・道尾は,京都の近くにある仏像の工房を取材で訪れ,その宿舎に泊まる。だがその夜,怪しい物音で目覚めた道尾は,笑う千手観音,血を流す仏像を見て怯えてしまう。しかも翌朝,工房の仏師が1人消えており,他の仏師たちも不思議な態度を取る。一度東京に帰った道尾は,超常現象の研究家・真備と供に,工房を再訪するが,彼らを待っていたのは更なる惨劇だった。

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「背の目」以上に,島田荘司の〈御手洗潔シリーズ〉を想起させる作品だった。語り手である作家・道尾が,〈御手洗〉の語り手かつ作家の石岡和己に良く似ていて,自信が無く,お人好しだ。また,探偵役の真備は,御手洗ほどヘンな行動は取らないが,雰囲気は通じるモノがある。

またネタバレになるので少しぼかして表現するが,結末の付け方が「背の目」とは異なり,〈御手洗潔シリーズ〉にはるかに近かった。

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今回の物語の舞台は,仏像を製作する工房であり,仏像の種類や製作方法について,様々な情報が提示される。ホラー・サスペンスとしての場の空気造りという意味でも巧い味付けだし,きちんと物語のプロットとも噛み合っているのに感心した。

考えてみれば,現代であっても仏像は誰かが製作を続けているので,こうした場所を物語の舞台にすることは,ひじょうに着眼点が良い。

彫刻や漆塗りの仏像の製作にかかる時間が早過ぎるような気もしたが,これは僕の知識が不足しているので,こちらのカンチガイかも知れない。

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この物語では,不幸な事件が連鎖してしまう理由の1つに,不運な意思伝達が続いたということになっている。個人的には,この部分についてはビミョーな印象だ。ドロドロした展開の中で,肩透かし的な展開を持ってこられても,笑うに笑えない。

また過去の事件から20年間を経て,事件が再発することになっているが,これってやっぱり経過した時間が長過ぎる。いくら仏像の工房であっても,20年間あればだいぶ人が入れ替わるだろうに,全員当時の人が残っているって,どんだけ都合がいいんだろう?

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シリーズ化されているんだと思っていた研究家・真備庄介の長編も,これで終わっているとは!残念だけど,この終わり方ではしょうがないのか?








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Last updated  2010.09.19 15:55:58
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