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2010.12.08
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24289)
カテゴリ： がちがちハードボイルド
逢坂剛のライト系ハードボイルドの連作短編集を読んだ。
○ストーリー
腕のいいサギ師である〈俺〉は，四面堂遥という女とコンビを組むことになる。彼らは，銀行，貿易会社，不動産会社，ヤクザを見事にだまし，欲しいものを手に入れる。だが四面堂遥には気をつけないといけない。隙さえあらば，〈俺〉さえもだまそうとするからだ。
－－－－－－－－－－－－
サギ師の活躍，いわゆる〈コン・ゲーム〉を描いた物語だ。一般的にこのジャンルはひじょうに難易度が高いと言われている。
－ほとんどの場合，主人公たちは犯罪に手を染めるので，それでも読者をひきつけ，納得させる物語が必要になる。
－だます相手が憎たらしく，かつ優秀で手強くなければ面白味がない。
－主人公たちがキチンと準備し，計画を進めなければならない。（そうでないと，ただの強引な犯罪者になってしまう。）
－読者をあっと言わせる不測の事態が起きなければならない。
この作品は，こうした高いハードルをクリアしているだけでなく，ライトな味わいの連作短編集に仕上がっている。複数の〈コン・ゲーム〉を描いてみせるなんて，なかなか大変だろう。
－－－－－－－－－－－－
主人公の〈俺〉は複数の名前を使い分けているので，本名は分からない。相棒となる四面堂遥も，これが本名かどうかは疑わしいところだ。名無しの男女が，悪い奴らをだます，という実に都会的な味わいの作品だ。
やはり作品の魅力は，悪女の四面堂遥の造形だろう。30才近くの美女で，アタマの回転が早く冷徹。相手がヤクザだろうと少しも恐れない肝っ玉。そして相棒だろうと平気でだます怖さ。さらに言うなら，やや太め。日本の小説では，なかなかめぐり合わないタイプの女性だ。
小説以外でも出会わないが・・・
物語は，男女のコンビのサギ仕事を描くが，四面堂遥に〈俺〉が振り回されている，という状況が多い。〈俺〉を敵に差し出しかねないし，すぐだまそうとするし，というこの緊張のある関係が面白い。
相棒というより，四面堂遥が親分で，〈俺〉が子分なんじゃないか，とも思う。
－－－－－－－－－－－－
逢坂剛の作品の主人公は，極端な性格の人物が多く，傍若無人な場合がほとんどだ。その点サギ師は，表面上は常識的な行動を取るので，逆に逢坂作品ではまともな神経の持ち主のように見えるのが面白い。
これ以外に「相棒に手を出すな」という作品も同じシリーズだ。
－－－－－－－－－－－－
各編について簡単に述べる。
「いそがしい世間師」：街でサギ師を見かけ，そいつをペテンにかけた〈俺〉を，1人の女が誘う。自分と一緒に復讐をしないか？というのだった。・・・短めな短編。仕事も小さくて，手に入れたブツは30万円相当。まさにライトな物語。
「痩せる女」：銀行員との賭けで，遥は一週間で体重を15キロ減量することにする。その結果は・・・掟破りの女が登場するだけでなく，トリックも掟破り？
「弦の嘆き」：伝説のバイオリン製作者銀三が遺した謎のギター。〈俺〉たちは貿易商たちより先にそれを手に入れようとするが・・・悪人ばかり出てくる。なんだか後味が悪い。
「八里の寝床」：地上げされた区画に唯一残った居酒屋〈平八〉。そこの客でもある〈俺〉は，不動産会社から〈平八〉の店主を追い出すように頼まれる。・・・前作と変わってコミカルな人情モノ。うまく行き過ぎだけど，楽しいからゆるす。女のファッションセンスには疑問だ。
「弔いはおれがする」：〈俺〉が手伝っていたヤクザの親分の葬式の香典を，四面堂遥が奪ってしまった。〈俺〉はそれを取り返すように命令されるのだが・・・なかなか大掛かりだし，拳銃で撃ち合うなど，珍しくアクションも多い。結末を飾るにふさわしい短編だ。
○ストーリー
腕のいいサギ師である〈俺〉は，四面堂遥という女とコンビを組むことになる。彼らは，銀行，貿易会社，不動産会社，ヤクザを見事にだまし，欲しいものを手に入れる。だが四面堂遥には気をつけないといけない。隙さえあらば，〈俺〉さえもだまそうとするからだ。
－－－－－－－－－－－－
サギ師の活躍，いわゆる〈コン・ゲーム〉を描いた物語だ。一般的にこのジャンルはひじょうに難易度が高いと言われている。
－ほとんどの場合，主人公たちは犯罪に手を染めるので，それでも読者をひきつけ，納得させる物語が必要になる。
－だます相手が憎たらしく，かつ優秀で手強くなければ面白味がない。
－主人公たちがキチンと準備し，計画を進めなければならない。（そうでないと，ただの強引な犯罪者になってしまう。）
－読者をあっと言わせる不測の事態が起きなければならない。
この作品は，こうした高いハードルをクリアしているだけでなく，ライトな味わいの連作短編集に仕上がっている。複数の〈コン・ゲーム〉を描いてみせるなんて，なかなか大変だろう。
－－－－－－－－－－－－
主人公の〈俺〉は複数の名前を使い分けているので，本名は分からない。相棒となる四面堂遥も，これが本名かどうかは疑わしいところだ。名無しの男女が，悪い奴らをだます，という実に都会的な味わいの作品だ。
やはり作品の魅力は，悪女の四面堂遥の造形だろう。30才近くの美女で，アタマの回転が早く冷徹。相手がヤクザだろうと少しも恐れない肝っ玉。そして相棒だろうと平気でだます怖さ。さらに言うなら，やや太め。日本の小説では，なかなかめぐり合わないタイプの女性だ。
小説以外でも出会わないが・・・
物語は，男女のコンビのサギ仕事を描くが，四面堂遥に〈俺〉が振り回されている，という状況が多い。〈俺〉を敵に差し出しかねないし，すぐだまそうとするし，というこの緊張のある関係が面白い。
相棒というより，四面堂遥が親分で，〈俺〉が子分なんじゃないか，とも思う。
－－－－－－－－－－－－
逢坂剛の作品の主人公は，極端な性格の人物が多く，傍若無人な場合がほとんどだ。その点サギ師は，表面上は常識的な行動を取るので，逆に逢坂作品ではまともな神経の持ち主のように見えるのが面白い。
これ以外に「相棒に手を出すな」という作品も同じシリーズだ。
－－－－－－－－－－－－
各編について簡単に述べる。
「いそがしい世間師」：街でサギ師を見かけ，そいつをペテンにかけた〈俺〉を，1人の女が誘う。自分と一緒に復讐をしないか？というのだった。・・・短めな短編。仕事も小さくて，手に入れたブツは30万円相当。まさにライトな物語。
「痩せる女」：銀行員との賭けで，遥は一週間で体重を15キロ減量することにする。その結果は・・・掟破りの女が登場するだけでなく，トリックも掟破り？
「弦の嘆き」：伝説のバイオリン製作者銀三が遺した謎のギター。〈俺〉たちは貿易商たちより先にそれを手に入れようとするが・・・悪人ばかり出てくる。なんだか後味が悪い。
「八里の寝床」：地上げされた区画に唯一残った居酒屋〈平八〉。そこの客でもある〈俺〉は，不動産会社から〈平八〉の店主を追い出すように頼まれる。・・・前作と変わってコミカルな人情モノ。うまく行き過ぎだけど，楽しいからゆるす。女のファッションセンスには疑問だ。
「弔いはおれがする」：〈俺〉が手伝っていたヤクザの親分の葬式の香典を，四面堂遥が奪ってしまった。〈俺〉はそれを取り返すように命令されるのだが・・・なかなか大掛かりだし，拳銃で撃ち合うなど，珍しくアクションも多い。結末を飾るにふさわしい短編だ。
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