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June 11, 2006
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カテゴリ: カンフー映画
キワモノ・パワー
 作品によっては、ホラーや特撮の体裁を借りてるけど、高尚なテーマを語ってるもんね、という作る側の自己満足映画がある。ホラーや特撮は、際物かもしれない。しかし、愛や反戦などのテーマ性に負けるものでは断じてない。作品に理屈をつけないで、恐怖、怪獣などを追求して、見る者を楽しませてほしい。
 「キングボクサー大逆転(1972)」は、キアヌ・リーヴスやテイタム・オニールが御贔屓のカンフー映画である。香港映画ながら、「燃えよドラゴン(1973)」以前にアメリカで大ヒットした。劇中には、愛や友情も描かれている。けれど、キアヌもテイタムも、その他大勢のアメリカの観客も、この作品を、愛や友情について語る香り高い文芸映画として評価したわけではない。彼らは、痛快なカンフーアクションを楽しんだのだ。
 この映画には、武道としての最強を決める武術大会が登場する。そこがクライマックスの到達点、大団円ではない。さらにバーリ・トゥード、ストリート・ファイトなど実戦分野の闘いも続く。格闘技の強さにこだわった作品だ。
 香港製カンフー映画といえば、ハリウッドの超大作とは対極に位置する、「際物」である。観客は、際物パワーを存分に楽しむために、受け身でいてはいけませぬ。

キワモノ・ムービーは想像力で見ろ
 以前、「七人のマッハ(2004)」を見に行ったとき、後ろの観客から「ツッコミどころがいっぱいだ」との声がした。耳に入ってくる会話は、挙げ足取りである。観客不在の傲慢な作品は、いくらでも揚げ足を取っていい。けれど、際物ムービーに大切なものは、「想像力」である。

なぜヤン師匠は殺されたのか
 主人公チャオは、カンフーの才能をもちながら、田舎の道場で修行をしている。冒頭、チャオの師匠ヤンがモン一味に襲われる。モン一味は、華北5省の武術界を支配するため、邪魔者を消そうとしたのだ。
 なんとか難を逃れたヤン師匠、しかしこう言う。「わしはもうトシじゃ。力の衰えを感じた。チャオよ、もっと強くなるためには、保定府に行ってスン館長に弟子入りしろ」チャオは、師の勧めを受け入れ、武術大会への出場をめざして、ソンの尚武国術館に入門する。
 ヤン師匠は第一線を退き、子供に武術などを教えながら、たまに来るチャオからの手紙を楽しみに暮らしていた。武術界への影響力などまったく見られない。にもかかわらず、モン一味は、最強の刺客である岡田一派を送り込んだのだ。
 モンは自分の息子を武術大会で優勝させて、それを足掛かりに武術界の支配を目論んでいた。もし、チャオが田舎道場での修行を続けていたなら、ヤン師匠を殺すことにも意味があっただろう。ヤン師匠の指導を絶ち、チャオに動揺を与えれば、優勝候補の一角を崩すことができる。だが、この時点では、すでにチャオはヤン師匠のもとを去り、はるか彼方の地に赴いている。そればかりか、モン一味に両手を潰され、失意のどん底に落ち込んでいた。
 こういった状況の中で、モンは、なぜわざわざ遠くまで刺客を送り込んだのか。コストパフォーマンスを考えれば、隠居同然のジイさんなんか放っておけばいいのに。わざわざ手間ひまかけた結果、亡き師匠の敵討ちを誓うチャオの闘志を盛り上げただけではないか。
 これは、モンがとても体面を気にする性格だったためだと考えられる。
 モンは、手下が「チャオが大会に優勝するようなことになったら、尚武国術館を潰せません」と言えば、「尚武国術館を潰すだと、武術界はみな仲間だ」と一喝する。「(チャオに優勝させないために)策を練らなければ」に対しては、「正々堂々と闘うことに意義がある。勝敗は二の次だ。わしは正直に生きとる」なんぞと応える。明らかに普段の行動とは裏腹だ。こいつは、自分をよく見せたいわけだ。
 だから、周囲から「モンはヤン殺害を企てたが、失敗した」とのマイナスの見方をされると傷つくわけだ。「モンさんは、一度口にしたことは、つねに最後までやりとげる人だ」このように印象づけたかったのだろう。

なぜ潰されたチャオの両手は復活したのか
 チャオは、尚武国術館で力をつけ、スン館長から秘技「鉄掌」の継承まで許される。ついには、代表者決定トーナメントを勝ち上がり、武術大会出場を決めた。
 モンはチャオの実力に脅威を感じて、大勢で彼を襲撃する。両手を木の幹に縛りつけ、棒状の物で甲をガンガン殴る。血だらけになった両手は、皮膚の裂傷ばかりか、骨にも異状が及んだはずと見られる惨状だ。
 「この手では、もう武術大会には出られない」チャオは、失意のあまり、歌手イエン宅に身を寄せ、無気力のまま日々をすごしていた。だが、兄弟弟子ターミンに見つかり、連れ戻され、修行を再開する。さらに、必殺技「鉄掌」を駆使して、見事武術大会で優勝を果たすのであった。
 なぜ、再起不能とまで思われた怪我が回復したのか。スクリーンから読み取れる情報からは、以下のような推測が可能だ。
A.歌手イエンの献身的な看病により、彼女が見立てた薬が劇的に効いた。
B.じつは襲撃を受けた段階で、すでに鉄掌の訓練が進んでいて、その効果から拳が丈夫になっていた。
C.チャオ自身も観客も、痛みや衝撃で、当然骨にまで相当な影響があったと思ったのだが、意外に表面だけの傷ですんでいた。
D.気力、精神力で治した。
 あるいは単独の理由ではなく、4つがからみ合っていたのかもしれない。が、ここでは、Dを取り上げたい。
 チャオは、イエン宅を去り再出発をするにあたって、ターミンから「勇気を持て」といわれる。そればかりかつぎのように言葉をかけられている。「ケガのことは重く考えるな。なにごともおまえの意志次第だ」。「厳しい修行をつめばお前は勝てる」。治療と修行は別問題だと思うが、彼は素直に再修行に突入する。しかし、チャオは手刀で横木を叩き割ろうとしてできない。見守っていたスン館長の叱咤激励が飛ぶ。「なんだそのザマは。怖じ気づくな。全身全霊だ。もう一度やれ」。兄弟弟子ターミンはやはり「勇気を出せ」。意を決したチャオは、鮮やかに木を真っ二つに・・・。
 発揮されたのは、気力、または精神力以外のなにものでもない。

 キワモノ・パワーは、観客を楽しませようとして、見せ場で突っ走ってくれます。そんな映画にふれたとき、自分の頭の中で、あらためて作品をイメージし直せば、作品に対する愛がますます深まります。
 特撮映画などについては、想像力でシーンやストーリーをつなげることが有効だ。子供の頃には、見た映画にインスパイアされて、スクリーンには表現されてない怪獣の登場場面をイメージしたり、別バージョンや後日談を考えたりしていました。だから、実際に見直すと、作品そのものにはないシーンまで記憶に残っているんです。

 この映画、主演はジャイアンツの工藤公康選手似のロー・リエ(似てないか?)。彼にとっては、ヒーローを演じた数少ない作品だ。同じころ作られたジミー・ウオング主演の「吼えろ!ドラゴン、起て!ジャガー(1970)」では、日本人の刺客北島に扮して、ジミ−と死闘を繰り広げている。
 監督のチェン・チャンホーとしては「キングボクサー大逆転」の主演に、ショウ・ブラザーズの看板スター、デビッド・チャンをもってきたかったらしい。デビッド・チャンであったならば、画面がもっと明るくなっていたかな。デビッド・チャンの「キングボクサー大逆転」、見たかったなあ。けれど、ロー・リエは、華はなくても、朴訥としたまじめな拳法青年の味が出ていると思います。

参考文献 「裏モノの神様」唐沢俊一(著) 幻冬舎文庫(2005/10)





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Last updated  June 12, 2006 09:59:58 PM
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