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June 24, 2007
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カテゴリ: ドラマ
 以前つきあっていた彼女が忘れられないことがあります。ふられた場合起こりやすいことです。新しい相手と出会ってもくらべてしまい、ちがいばかりを発見してしまいます。
 ウッディ・アレンの「アニー・ホール(1977)」、歌手を目指すアニーは、カリフォルニアに飛んで行ってしまいます。ニューヨークに残されたアルビーは、楽しかったアニーとの日々ばかりが心をよぎります。アニーと一緒に、生きたロブスターを、大騒ぎしながら調理したこともありました。アルビーは、よせばいいのに別の女性とロブスター料理に挑戦。あの日のように、一人はしゃぎまくるアルビー。けれど女の方は、何が嬉しいのだか全然理解できず、醒めた目線でアルビーを見つめるだけ。やはり、アニーはアニー、彼女に代わる人はいません。
 リメイク映画を見ると、過去の女への未練をひきずって、あたらしい女とつきあうのに似た感慨を味わいます。これを「元カノ現象」と呼びましょう。
 「猿の惑星(1968と2001)」。旧作のラストシーンは、キラー・バディ・オースチンのドリル・ア・ホール・パイルダライバーをくらったかのような衝撃でした。新作は、それを超えることができなかった。何をもってきても、かなわなかったかもしれません。
 モンキー映画が続きますが、「キングコング(1933と2005)」。新作は、モンスター度が低い。ただのでかいゴリラじゃないか。アンドレ・ザ・ジャイアントとジャイアント・シルバくらいの凄味に違いがあるぞ。
 「日本沈没(1973と2006)」。旧作が公開されたのは、大地震が発生する危険性が不気味に潜伏していた頃だった。災害に対する備えがまるでなかったので、危機感を煽られた。男らしく災害に立ち向かう藤岡弘と運命に翻弄されるいしだあゆみもよかった。カール・ゴッチのような正統派ストロング・スタイルといえよう。けれど、新作は、すでに現実世界でいくつかの大地震を目の当たりにした後だし・・・・。
 新作の方がいいという場合は、あまりありません。いくら撮影技術や特殊効果が進歩しようと、何倍も予算をかけようとも、オリジナル版がもつ貫禄や観客の思いい入れにはなかなか及ばないのです。「元カノ現象」は、怪獣ガメラのプラズマ火球並みの破壊力をもっているといえるでしょう。
 さて、「ロンゲスト・ヤード」です。旧作の「ロンゲスト・ヤード(1974)」は、My favorite Moviesの一本です。旧作を監督したロバート・オルドリッチは、My favorite Directorsの一人です。だから、恋い焦がれた相手といっていい。ガメラの武器でいえば、超烈プラズマ火球か。昔の彼女を忘れさせてくれるのでしょうか。
 映画は、刑務所を舞台に、看守対囚人のアメフト対決を描きます。主人公ポール・クルーは元プロ・フットボールのスター選手。まずはこのポールが、刑務所に入らなければ、お話は進みません。まずはそのいきさつが紹介されます。アメフトを引退したポールは、リッチな女のヒモになりさがっています。自堕落なポールは、酔っぱらって女の高級車を勝手に乗り回し、破壊してご用。この滑り出しは、両作ともほぼ同じ。旧作との差異を見せようとすると、このエピソードは新しいものをもってきてもよさそうなものです。そうしなかったところを見ると、オリジナルに忠実なリメイクをめざしているのか。
 刑務所の所長は、大のフットボール好き。看守チームはセミプロなのです。看守チームに自信をつけさせるため、囚人チームがつくられ、“咬ませ犬”として対戦することとなります。ポールは、囚人チームを率いるよう強制されます。この課題は難しい。素人集団を咬みごたえのあるチームに育て上げながら(ハードトレーニングで本気にさせ)、けれども負けなければならないからです(勝敗は握られている)。ポールの仕事ぶりは、刑務所内での待遇や刑期にまで響いてきます。
 囚人の中から人材を集めなければなりません。最初は困難を極めたチーム作りですが、徐々にポールを理解し、いいプレーヤーが参加してきます。日頃、看守たちからイジメを受けている囚人は、この機会に仕返しを企みます。ポールは、囚人仲間とのチームワークを盛り上げながらも、最終的には裏切らなければならない役目を負っているわけです。
筋立ては、新旧ほぼ同じです。ドリーとテリーのザ・ファンクスのような兄弟関係を見るようです。
 細かい点で違いはあります。たとえば、旧作は、囚人側のモンスター級選手として、007シリーズのジョーズ役で知られているリチャード・キールがチームに参加します。2m18cmの巨体で、看守チームにウエスタン・ラリアートをぶちかまします。
 新作側は、ボブ・サップが登場して、人が座っているベンチを持ち上げるなどして桁外れの怪力を披露します。2m13cmのボブ・サップがモンスターの役どころかと思っていたら、それ以上の体格を誇示するモンスターが登場するのです。また、ケビン・ナッシュ、ビル・ゴールドバーグ、スティーブ・オースチンなども顔を見せ、プロレスラー軍団がスクリーンを占拠したかのような賑わい。
 昔は、「ニューヨーク1997(1981)」にオックス・ベーカーが出てきたとか、「バトルクリーク・ブロー(1980)」で、ジャッキー・チェンとハードボイルド・ハガティが一騎打ちをした、あるいは「ブラインド・フューリー(1989)」にタイガー戸口が用心棒役をしていた、などプロレスラーがスクリーンに姿を現すというだけで感動したものです(希少価値があった)。でも、今回出演したレスラーたちは、スター選手たちなのだろうけど、じつはあまり嬉しくはありませんでした。最近のプロレスは、おもしろいと思わないからです。レスラーにも凄味を感じません。
 この映画は、なんといっても誇りを賭けた闘いがポイントになります。相手が囚人といえども、看守たちの思い上がった態度や汚いやり方は許せません。八百長試合をもちかけられて、もし勝ったら刑期が長くなると脅されても、試合を捨てないところがぐっとくる。映画を見る側の気持ちが、そこに集約していったので、リメイク作品も十分エキサイトすることができました。
 ただ、ポールが「所長を殴って刑期が延びて後悔していないか」と老囚人に聞き、答えが「気持ちよかったぜ」であったので、八百長をやめる決心をする場面など、やや唐突で効果が薄いなど、やっぱり旧作の方がエエね、とは思いました。それでも、前に心惹かれた女性とくらべて、それほどは違和感なく新しいつきあいを始められるね。あんまり「元カノ現象」に、悩まされませんでした。
 オリジナルの名画とリメイク作品とをくらべてしまう「元カノ現象」。そこで失望しても、リメイクに期待する気持ちは止みません-新しい女性との出会いを求めるように。例えば、東宝特撮の「海底軍艦(1963)」、最新のヴィジュアル・エフェクトとスピード感でパワーアップした轟天号の大活躍が見たいぞ!ってマニアックすぎました?
 監督は、「ガメラ/大怪獣空中決戦(1995)」で「大怪獣空中戦・ガメラ対ギャオス(1967)」をグレードアップさせた金子修介氏にお願いしたい。
 新しく出会う女性が、ウルティメイト(究極超烈)・プラズマ火球級のおつきあいとなることは十分あるわけですから。

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Last updated  June 24, 2007 09:27:33 AM
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