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January 27, 2008
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カテゴリ: カンフー映画
 ラーメンは豚骨がいいです。お店に入って注文し、面やスープを口に含む。期待通りの風味を感じると、一気に食べ尽くしてしまいます。豚骨の味は忘れがたく、コンビニなどで豚骨カップ麺を見ると、思わず購入してしまうことがあるのです。味わってみれば、お店で食べるほどのコクはない、豚骨の味に似せてはあるけれど化学調味料仕立てなどとわかっていながらも。

 レンタルビデオ屋さんでDVD「ジム・ケリーINブラック・サムライ(1976)」を発見、これは掘り出し物だ!ジム・ケリーは、あの「燃えよドラゴン(1973)」に出演した黒人の空手使いです。ブルース・リーを筆頭にした善玉側のナンバー3のポジションに位置していました(途中で殺されたけど)。「マスク(1994)」や「マジェクスティック(2001)」に出演したジム・キャリーとは別人です、念のために。
 ブルース・リーが世界にその名を知らしめた「燃えよドラゴン」、これをじっくり煮込んだ絶品豚骨ラーメンになぞらえるならば、同じカンフーを題材にしながら「ブラック・サムライ」は3分でできあがるお手軽カップ麺に位置するといえるのではないか。

 まず、セリフがカップ麺です。エージェントのケリーに情報部が仕事の依頼に来ました。そこでの会話を見てください。
情報部「この写真を見ろ」
ケリー「トーキーだ」
情報部「とても言いづらいがジャンコットにさらわれた」
ケリー「目的は?」
情報部「2日前のことだ」
ケリー「犯人の名前は?」
情報部「ジャンコットは東南アジアに巨大な麻薬ラインをもつが・・・」

 話が噛み合ってないって。状況説明が難しいので他に引用はしませんが、おおよそこんな調子のやりとりが続きます。

 さらに、場面の展開がカップ麺。トーキーの捜索に乗り出したケリーが、ホテルに落ち着きます。早速武道のトレーニングを開始するケリー。このあたりは、「燃えよドラゴン」などのブルース・リーが、自室で鍛錬する姿を意識したのか。そこへ突然敵の戦闘員が襲ってきます。軽く一蹴するケリー。戦闘員を窓から外へ放り出す。さすが全米空手ミドル級チャンピオン、強い。しかし、吹っ飛んでいった敵と入れ替わりに、壊れた窓から味方の情報部員が入ってきました。どうしてそんなところから?と思うまもなく事務的に打ち合わせを始めるのです。こんな場面展開の省略を見たことはありません。
 続くアクション場面も、カップ麺。敵の集団に追われるケリー、ビルの側面にあるはしごを登り始めます。追っ手をふりきって、屋上に逃れるつもりか。下から迫る敵を蹴り落とす。その直後だ。ケリーは登り途中のはしごを降りていって、群がる悪漢と闘い始めました。何のためにはしごをのぼったのか?フェイントか?ケリーはきっと、はしごを登っている最中に、屋上に行けば逃げ場がなくなることに気付いたのでしょう。

 「燃えよドラゴン」で売り出したジム・ケリーは、ブルース・リーの幻影と切り離して存在することは難しい。彼は、どこまでいっても“黒いブルース・リー”です。

 ケリーは、トーキーを誘拐した男と対決します。電光石火の空手技で誘拐犯を倒すケリー、横たわる敵にジャケットをかぶせます。おお、これは、「ドラゴンへの道(1972)」のあの場面を思い起こす。チャック・ノリスとの死闘を制したブルース・リーは、事切れた好敵手にそっと空手着を着せかけました。味わい深い場面でした。“黒いブルース・リー”ケリーも、武道家として敵に敬意を現すのか。しかし、「ブラック・サムライ」の誘拐犯は、死んではいなかった。油断したケリーの目を盗んでこっそり起き出し、逃げていくではありませんか(つぎの展開用に、ここではまだ役者が生きている必要があったのです)。何のためにジャケットをかぶせたのだ。寝冷えしないように気を遣ったのか?カップ麺だなあ。

 バルコニーで闘うケリー、後ろから敵の戦闘員が羽交い締めにします。するとケリーは、自らのジャケットをするりと脱ぎます。しがみつく戦闘員は、バルコニーから落下、ケリーは上半身裸となる。ブルース・リーは、自らの鍛えられた肉体を晒すのに、服が破れる、剥がされるなどの演出を行いました。“黒いブルース・リー”であるケリーも、これをやってみたわけです。ケリーの肉体も確かに鍛えられてはいますが、ブルース・リーほど鬼気迫る物はありません。残念ながら、カップ麺。

 そして迎えるクライマックス(?)、いよいよ敵のボスとの闘いです。迷路のように入り組んだ通路でのバトル。これは、「燃えよドラゴン」の鏡の部屋でのリー対ハンの対決場面を拝借したのでしょう。ちがうのは、敵のボスがハンのようには強くないのに対して、ケリーがブルース・リー以上に強すぎること。斧を振り回すボスをいたぶるケリー、だから、名勝負は生まれません。やっぱりカップ麺。

 この映画、偉大なるブルース・リーへのオマージュ、ではないようです。敬意はあまり感じられません。ブルース・リーの映画をちょっと形を変えて“黒いブルース・リー”でやってみました、という趣です。
濃厚豚骨のような「燃えよドラゴン」の中でけっこういい味出していたジム・ケリーですが、 「ブラック・サムライ」ではカップ麺の安っぽさに埋没していました。カップ麺はカップ麺として、刺激的な味を発揮してくれればよかったのですが、 “黒いブルース・リー”ジム・ケリーは、ジム・ケリー独自のテイストに到達することはできなかったようです。悲しいことに。お店のラーメンの身代わり品にすぎないカップ麺でした。

 所詮カップ麺の味には限界があると知りながらも、豚骨カップ麺を食べてみたくなります。豚骨味が好物だから、まがいものでもあの味を感じたいと思うわけです。食べてみれば、案の定お店の豚骨ラーメンとは比べものにならない。でも、好奇心は十分満足させられました。食べてよかった!だって、豚骨マニアなんですもの。

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Last updated  February 24, 2008 08:08:03 AM
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