As ass’s ears

As ass’s ears

記憶語り

魅入る


他のひとの日記にあった写真展の話から
甦る過去

写真とか絵画とか
嫌いでもなければ
余り見もしない

そういえば
幼い頃は
よく家族で
展覧会とか絵画展とか
見に行った

見方も知らぬ興味もなく
順路通りに巡るだけ
お出かけの楽しさも
歩いた疲れに変わる頃

ぐるりと回っても
母が追いついてこない
戻れば一幅の絵の前に
釘付けの母の姿

なぜこんなに
たかだか一枚の絵
長いこと見続けていられるのか

それを知りたくて
真似をして
母の隣に立ってみる

一体どこを見ているのだろう
皇女の顔?
すぐ飽きて
では侍女たち?

髪型もドレスも家具も
はてはカンバスの角の影まで
それとも絵の具の盛り上がりとか?
無理やり湧き上がらせても
0.1秒と持たぬ
それぞれへの私の興味

永遠のような10分?それとも5分?
母はそれこそ
自身が絵の様に
陶然としてたたずんでいる

見入る
理屈でなく
魅入られる

そして私は
つまらない
その絵は
当時の私の中に
何も詰まらなかった

今もたぶん
あの絵は私には詰まらない

そしてたぶん
あの絵ではなく
心奪われる何かを得た瞬間の恍惚が
母の姿をして
私が見入ってしまう
ソフトフォーカスの記憶写真


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