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2010.04.26
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それからほどなくして僕はフランスに留学することになった。

恩師の教授が、醗酵学の研究で最先端の研究所に推薦してくれたのだ。

「あちらで博士号をとってきなさい、君を受け入れる機関は必ず

ありますよ」

恩師の言葉に励まされ、僕は一人旅立った。


ところで、フランスに立つ前日、水沢久美が突然訪ねてきた。

すでに下宿を引き払っていた僕は、都内の安ホテルに投宿していた。

「お客様です」

フロントからの電話で降りて行くと彼女がいた。

「どうしてここがわかったんだい」

「あなたの研究室を訪ねたら、教えてくれたの」

「そう」

僕はその状況にとまどってしまった。

だって、今この場で水沢久美と一体何を話せばいいのだ。

「ちょっと出ない?」

「いいけど・・・」

僕は久美にひきずられるように街へ出た。

「フランスに行くんですって?」

「うん」

「いいなあ」

「いいかな」

「いいわよ。私も行きたい」

「いつかいけるさ」

「いつかじゃいやだわ」

「まあ、君ならいつでもいけるんじゃないか」

「今あなたと一緒に行きたいわ」

「え?」

僕は思わず久美の顔を見た。

「うそよ、うそ」

「ああ、びっくりした。心臓に悪いよ」

「でも半分本当」


僕は彼女にからかわれているのだと思った。

「いい加減にしてくれないかな、冗談きついよ」

そう言って彼女の顔を見ると、意外にも目は真剣だった。

「僕は明日発つのだし、あまり心を乱さないでほしいな」

「私あなたのこと好きだったのよ、ずっと」

「そんなこと今言われても・・・それに君のことを好きなやつ、たくさん

いるじゃないか」


「それとこれとは別」

「・・・」

「私待ってる」

「待ってるって?」

「あなたが帰るのを待ってるわ」

「・・・」

「連絡先教えてね、きっとよ。あ、あとこれ、お餞別」

久美は一方的に言うと、僕の手に持っていた紙袋を預け、駈け出して行った。

僕はあっけにとられ、ただ彼女の後姿を見送るだけだった。

紙袋にはマフラーとお守りが入っていた。

マフラーは手編みらしく、あまり見栄えのよいものではなかった。

しかし、彼女の温かみが感じられた。


(続く)











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最終更新日  2010.04.27 09:49:18
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