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2010.05.16
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「いつか、ここできっとあなたに会うと思ってた」

久美の目はとても澄んで見えた。

「元気そうだね」

出口に向かって歩きながら僕らは話した。

「なんとかね・・・でも、ずっと心が晴れなかった」

「なぜ」

「あなたと綾子の間を引き裂いてしまったから」

久美の目にはうっすらと涙が滲んでいた。

「許してもらえるかどうかわからないけど・・・ごめんなさい」

「もういいんだ」

「え?」

「もう何も思っていない。それに君のせいなんかじゃない」

「だって・・・」

「そういうさだめだったのさ」

「・・・」

「君も忘れた方がいい、過ぎたことに束縛されたら人生がもったいない

じゃないか」

「それは本心なの?」

「わからない。でもそう考えるより他ないじゃないか。だって僕らは

生きていかなければならないんだから」

「それはそうだけど」

話しながら歩くうち、僕らは出口のところまで来ていた。

「僕はタクシーで帰るけど、君はどうする」

「私はもう少しここにいる」

久美の横顔には言い知れぬ陰りがあった。

「あまり気にしない方がいいよ」

「ありがとう。あなたもお元気で」

「君もね」

二人とも沈黙した。

やがてタクシーが来て、僕は乗り込み、窓を開けた。

「じゃあ、元気で」

「ひとつだけ聞いていい?」

「いいけど、何?」

「私たちもう二度と会えないのかな」

僕は一瞬考えて答えた。

「先のことはわからない。でも、もうこだわることは何もないんだ。

落ち着いたら連絡するよ」

「きっとよ」

返事をする間もなくタクシーは走り出した。

それから何年もの時が過ぎた。

その時どんな返事をしようとしたのか今では思いだせない。

久美の思いと僕の思いがその後どう交錯したかはご想像にお任せしよう。

僕の記憶から綾子が消えることは生涯ないだろう、でも、どのみち僕らは

現実を生きて行かなければならないのだ。


(完)











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最終更新日  2010.05.17 00:28:16
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