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そうこうするうちにお寒うなりました。
皆さまご機嫌いかがですかな。
オヤジは元気でござるよ。
時に楽天ブログは機能が変わるようですな。
まあ、その時はその時ということで、久方ぶりの創作劇場でござる。
では、また後ほど!
「オペラ座の貝人」
長い間、僕は「オペラ座」という星座があるのだと思っていた。
なぜかというと、あの犬親父がそう教えてくれたからだ。
犬親父は僕が幼い頃家の近所に犬と一緒に住んでいた。
一体何をしているのかわからない人で、僕の母親は、
「何をしている人だかよくわからないから近づいてはだめよ」
といつも言っていた。
でも、僕はなぜか犬親父の話が好きで、一緒にいる「ロビン」という
犬と遊びながら犬親父の話を聞いたのだった。
ただ犬親父は適当なことばかり言う人で、ある時僕が空を見上げ、
「ねえ、犬親父、あの星はなんて言うの?」
「おお、あれか、あれはな、『ご座』じゃな」
「ご座って何?」
「ふむ、それはじゃな、携帯用簡易ソファのようなものじゃ」
「ふーん、じゃあれは?」
「あれはミラノ座じゃな」
「じゃあ、あれは?」
「スカラ座じゃ」
「うーんと、じゃああれは?」
「おお、あれこそはオペラ座である!!」
オペラ座と言ったときの犬親父の声は一段と高らかだった。
それで僕はオペラ座が何か特別な星座のように思えた。
「オペラ座って何だかすごそうだね」
「おお、坊主よく気がついたのう。オペラ座には何と『貝人』がいるのじゃ」
「カイジン?」
「そうカイジン、貝の人じゃ」
それを聞いて僕はいろんな貝人を想像した。
たとえばさざえのような巻貝に手と足が出ていて、貝殻の上の方に目が二つ
光っているのとか、はまぐりのような二枚貝が口を開くと手足が現れ、カタツムリ
のような目が両側の隙間から伸びて来るのなど。
僕は星座のすごさにすっかり魅了されてしまった。
しかし、まあ、言うまでもないけどどれも大ウソで、ご座はしし座、
ミラノ座ははくちょう座、スカラ座は大熊座だということが後でわかった。
でも気付くのが少し遅かった。
小学校5年の理科の時間だった。
「今日は星座について習います。さあみんなこっちを見て」
先生は黒板に星座の絵の描いた図を広げた。
「この星を線でつないだ形を昔の人はいろいろと想像して名前をつけました。
たとえばこの形が何という星座かわかりますか?」
先生はカシオペア座を指さした。
「はい」
僕は颯爽と手を挙げ、
「オペラ座です!そしてそこには貝人がいます」
得意満面に応えた。
「カイジン?ってなんですか」
「それはですね」
僕は得意満面にサザエ型の貝人について説明した。
すると、
一瞬の静寂の後、教室中が爆笑で湧きかえった。
あの時の先生の呆れかえったというか、なんとも言えない表情を
僕は今も忘れることができない。
「○○君、君はちと映画の見すぎではないかね」
それ以来僕は小学校を卒業するまで
「オペラ座の貝人」
というあだ名で呼ばれたのだった。
(続く)