私:「 その唇の上に生えた桃色のやつでも剃ってりゃいいじゃないか
」という訳の部分だね。 次のような英語だ。 「 You could shave that pink fuzz off your lip
」 could は仮定法。fuzzは「うぶ毛」だね。lip がやはり登場する。 実は、これはホテルのclerkに対する言葉だが、このclerkが口ひげをはやしている文がその伏線として、この先にあるんだ。それは原書では次のようだ。 「 A small neat man with a wispy reddish mustashe
」 mustasheは、文字通り「口ひげ」だ。wispyは「(髪などが)ほんのすこしの、かすかな」の意味だから、fuzzに対応するね。ここではピンクでなく赤だ。
A氏:なるほど。すると唇が英語と日本語で言っている範囲が違うんだ。
私:オックスフォードの英英辞典で mustashe
をひくと面白いよ。 「 A line of hair that a man allows to grow on his upper lip
」 直訳すると、「上唇にはやした髪」となる。「欧米人は唇に髪が生えるのか」ということになる。 しかし、この辞典では、hairの項目の絵を参照のこととあるので、それを見ると、mustasheは絵では日本的には唇でなく、 唇の上の鼻の下部分に生えている
。 面白いね。なお、mustasheはアメリカ英語で英語ではoが入りmoustasheとなる。チャンドラーはもちろん、アメリカ英語だ。