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私:
この著者の 文藝春秋の記事
はすでにとりあげたが、この本は、ソニーの成果主義批判の本ではなく、その問題の原点をさぐっていく本だね。
図書館で予約しておいたのが順番が来たので読んだよ。
初版は昨年秋だね。
私:
マネジメントは人を扱う。
だから、人とはどのように動くのかという見方が底にある。
成果主義の問題点の底には、働く人の人間観がある。
それは、 組織や人間が合理的に動くという発想だね。
労働者は商品だという見方もある。
しかし、現実はそんなに人はそんな単純なものではないから、矛盾が生まれる。
A氏 :成果主義とは限らず、昔から 管理を強化して、近代的な経営手法を導入すると企業がおかしくなると言われていたね。
私
:だから、氏は、人の仕事への心理的動きから深く追求する。
内発的な動機
を重視するが、これはすでに成果主義の本場のアメリカでその反対を行く「 フロー理論
」が生まれていることをこないだの文藝春秋の記事でも紹介した通りだね。
フロー状態とは、行為に集中している状態で、これはスポーツでも同様だね。
フロー状態にはいる条件は、目標と能力がバランスしていて、状況を自分でコントロールでき、内的動機に基づいていることだという。
だから、基本的に 誰かの指示・命令によって行動するのではない
。
A氏
: マネジメントが指示・命令を控える
ことがポイントになるんだね。
外的動機
というは、 他人の評価を気にして仕事をする
ことだね。
成果主義はまさにそれだね。
それはフロー状態を作らないことになるね。
私
:興味があったのはテニスの例だね。
内的動機に偽の要求があるというのだ
。
テニスだと、プレイ中に「ボールから目を離すな!」「ラケットは振り切れ!」「センターに返せ」と 自分自身に叱咤、激励をしている自己
があるときがある。
これは コーチなどの指示・命令が内部にいるだけで、本当の自己ではない。
これをセルフ1というが、本当の自分(セルフ2)に集中すると 自我意識もなく、自己評価もない。不安、不信もない。
快く落ち着けるリズムが生まれ、急速に仕事が進むのもこういう状態のときだという。
A氏 :すると、マネジャーが指示・命令をあまりしないとなるとどういう マネジメントスタイル になるのかね。
私
:成果主義の 管理型マネジメント
に対して 長老型マネジメント
としている。
しかし、この長老という言葉はよくないと思うね。
だから、誤解しないように、著者は例えば、 インディアンの長老
のようなイメージで説明している。
細かい指示を出さず、メンバーの自律性にまかせ、空気のような存在だが、皆安心して動けるように配慮している。
しかし、緊急の場合は全面に出る。
司馬遼太郎の「 坂の上の雲
」から、 大山巌
元帥の例もあげている。
彼は細部は児玉源太郎らにまかせる。
しかし、万が一、失敗したら責任は自分がとる。
A氏 :仕事の目標はどうするの?
私
: 上からおろさない。
チーム間で共有する。
元京セラ会長の稲盛氏
のいう アメーバ経営
だね。
チーム活動は日常で自然に入ってくる情報で把握し、 管理型のように報告を強制しない。
徳でおさめ、権力でおさめない。
最終目標は 、業績でなく、人を育てることにある。
管理型では、勝ち組は自己の力以上に、自己の能力を過信しがちになり、他を低く見る。
長老型では、 人は成熟するので謙虚になり、間違いも隠さない。
A氏 :そうすると管理することが職務の人は 、「管理する」ことをある程度、放棄し、「管理しない」ための学習と行動を身につける覚悟が必要だね。
私 :「 マネジメントは、指示・命令によって組織をコントロールしなければいけない 」という誤った信念が、 ダメ上司を誕生させる最大の原因 だという。
A氏 :この長老型マネジメントは過去の 日本式経営 に近いのではないの?
私
:例のISO9001などの アイエスオー
のマネジメントシステムに対して反論があるね。
これは指揮命令に基づくマネジメントシステムだと批判して、トヨタなどの日本式を メンバーが
システムとして共同する型
として対比して本を出していたイギリスのコンサルタントもいるね。
このコンサルタントは デミング
を研究していたが、 デミングも目標管理には批判的だね。
先の稲盛さんも 仏教的な深い人間観
をもとに人重視のアメーバ経営を提唱しているのも同じ考えだね。
人は商品ではないのだからね。
「 希望の国
」はそういう 長老型マネジメント
の国であるべきかもしれない。
もっとも、今、日本のマネジメントは、御手洗構想のもとでアメリカの尻を追いかけているがね。
御手洗氏は「 希望の国
」には イノベイション
が必要だというが、こういう 労働を商品と考えない
マネジメントのイノベイション
も必要ではないの?
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