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Ryu-chan6708

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2009.02.18
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カテゴリ: 読書感想


:作者は、すでに 太宰治賞 野間文芸新人賞 を受賞しているね。

 主人公は 年間収入160万円 という、30歳になろうという 独身女性のワーキングプア 淡々たる日常 を描いたものだね。
  選者の一人の 山田詠美 氏が 「『 蟹工船 』よりこっちでしょう 」と批評しているが、これが新聞広告に大きく載っていたね。

A氏 :主人公は「 蟹工船 」のようなひどい労働をしているのかね。

:そんなひどい 労働環境 ではないね。
  そんな 労働環境 は今の日本にはないだろうね。
  しかも、 舞台を関西においている のが幸いしているね。
  選者の 黒井千次 氏が評しているように、舞台を東京に置いたなら、 忍耐、がんばり、苦労、不条理への抗議など、ゴツゴツした問題提起の様相 を帯びてくるだろうね。
それがない。

A氏 :主人公はどういう仕事をしているの?

乳液の工場 らしいね。
 作業場に入るときに、 エアシャワーのクリーンルーム を通り、次に手をきれいに洗う。
衛生管理 がうるさい工場だね。
  そこでの コンベヤー に流れてくる 品物のチェックする仕事 のようだね。
  後は、2つほどあるバイトをしている。

A氏 :何故、そういう労働をするようになったの?

主人公 大学を卒業 して、入社した会社を モラルハラスメント が原因で辞め、工場の 契約社員 となるね。
29歳の独身
母親と築50年の古い家に同居
大学時代の友人の離婚 などを交え、 この年代の女性の生き方 を淡々と述べている。
  「 失われた10年の世代 」かな。

A氏 貧困 というほどではないんだね。

私:しかし、 年収 160万円という経済制約 は、 日常の関心が細かいカネ遣いに集中 していくね。
貧困 の定義は、昔の 貧乏 でなく、問題は精神状態だね。
  「 貧すれば、鈍する 」というが、現代は「 」のほうが怖い。

現代の貧困 」には「 虐待・不登校・地域からの孤立・ひきこもり・自分の居場所がない 」という「 人間関係のホームレス 」が加わる。
  しかし、この 主人公 には、 3人の大学時代の友人 もいるし、 母も同居 でいる。
  職場でも、よく話す人はいる。
  それでも、 至近距離しか見えない日常生活 という感じで、俺にとっては 閉塞的な日常 という感じがしたね。
  それがうまく描写されている。
  この小説を読むと、 労働から得るのはささやかな金 だけで、 後は何を得ていないような気 がするね。
  それを本人が チョッと気づき チラッと生き方に鋭い疑問 が出てきたときは、怖い感じがしたね。

A氏 :それを選者の 山田詠美 氏をして 「『蟹工船』よりこっちでしょう 」と言わしめたのかね。

:だから、例によって、選者の一人である 村上龍 氏は、この作品を推していないね。
コントロールできる世界だけを描いているとして批判 しているね。
作家は、コントロールできそうにもないものを何とかコントロールしようという意思を持つべきだ というのが 村上龍氏の意見 だね。

A氏 政治、文化、歴史などの広い社会へのかかわり にもふれるべきということかね。

石原慎太郎 氏は、推してはいるが、他にいい作品がなかったと言うことで、消去法的だね。
  しかし、 作者の語りの旨さは高く評価 しているね。

  今は 百年に一度の経済危機 だ。
  この主人公の工場も打撃を受けるだろう。
政治、文化、歴史などの コントロールできないもの によって、 コントロールできると思っていた日常 が大きく振り回されることになるだろうね。






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Last updated  2009.02.18 07:51:14
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