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勝手に最遊記Ⅱ
Separation―4
言い方は質問なのに、どう聞いても 『絶対、やらねぇ。』 そんな態度の三蔵。
老人の家に案内されて―――――・・・一息付いた三蔵達。
見窄(みすぼ)らしいが何とか家としての機能を保っている程度の老人宅で、お茶を頂いているのだ。
「で、ですから・・その妖怪共が・・。」桂林(ケイリン)と言う名の老人が言い淀む。
桂林の話によると、三ヶ月ほど前に妖怪の一団が、村の東にある森にある教会へ
住み着いたのだという。
村には老人や女・子供しか居ない。すぐに襲われると思っていたら・・「貢ぎ物を用意しろと。」
一ヶ月に一回。食料や酒。それに年頃の娘。大人しく差し出せば村は襲わないでやる、と。
「暴走している妖怪では無いのですね?」八戒が膝に乗せたジープを撫でながら確認した。
「そうなのです・・。暴れまくる妖怪とは違い、真綿で首をジワジワと
締め付けてくると言いますか・・・もう、我慢の限界なのです。」桂林がガックリと肩を落とした。
「ふんっ。今まの今まで、貢ぎ物とやらを差し出していたんだろう?それを・・・「三蔵!」
遠慮なく毒を吐く三蔵を、桃花が窘めた。「言いたい事は・・・判ってるから。ね?」
そんな桃花を睨み付け、三蔵は口を閉ざした。
自ら何の努力もせず、只、流されるまま生きている人間の弱さを――――――三蔵は嫌う。
例え、殺されたとしても。己の尊厳を守れるのは、己でしかない。神や仏に縋っても、
何の解決にもならないのは・・“神に近しい尊き存在”と誇称される三蔵自身が一番良く、判っている。
『でも、大抵の人は・・・。』桃花が桂林を見ると、萎縮した姿の桂林が哀れだ。
大抵の人間が、抵抗する強さも持たず。己を守る力もない。
だからこそ。神に縋り、有りもしない救いを待つ。
――――――――此処に現れた三蔵が、神の使いだと思いたいのだ。
努力もしないで、勝手な事を言いやがって――――そう思う三蔵の気持ちは判る。判ってはいる、が。
『・・・・そんなこと、出来ないんだよ。』視線を落とし、自分の手を見つめた。
「ま、なんにせよ・・このまま素通りって言うのは、出来ないですね。」
「貴様・・俺は引き受けるとは言ってねぇぞ?」八戒に向かって(素敵)視線を飛ばしたが、
「・・・・・。」八戒が無言で指差しした方を見ると、
「美味いなぁコレッ!!」「おっ!この地酒もイケるじゃん!!」ガツガツガツガツガツ・・・。
村の貢ぎ物であった食料や酒を、片っ端から喰いまくっている悟空と悟浄の姿が・・「きっ貴様らっ・・!」
「死ねっ!死にやがれっ!!」ガウンガウンガウンッ!!「うわぁあっ!?」「ぎゃあっ!!」
いつもの如く、始まった発砲騒ぎ。唖然としている老人へ、「・・コレで引き受けますからv」
ニッコリと八戒が微笑んだ。
「じゃ、あたしが人身御供の少女役って事でv」うふっと笑った桃花へ「・・・もの凄く、不本意だがな。」
「・・・どういう意味?」「そう言う意味だ。」相変わらず仲睦まじい(?)二人を余所に、
「判っていますね?妖怪共が貢ぎ物を取りに来た所を狙います。桂林さんの話では、妖怪の人数は20人足らずだそうです。村人の威嚇の為に全員で来るらしいので、取りこぼしのないよう、お願いしますv」まるで遠足の注意をしているような八戒の説明。
「おっけーおっけー!」「任せろって。な?」喧嘩っ早いこの二人が一番。問題なんですけど、ね。
心の中で思いつつ、「ジープは桃花の側に。見つからないように隠れていて下さい。」
「キューッ。」ジープが、心得ていると言わんばかりに桃花の側に寄り添った。
「じゃ、薬で眠らされているフリをしていればイイのね?」
「はい。縄はすぐに切れるように細工しておきますから。」
――――――元通りの祭壇を復元し、桃花は最初見た時の通り“人身御供”の様に縛られた。
食料はほとんど悟空が食べたため、上辺だけ実物を。中身は石を詰めると言う苦肉の策だ。
悟浄が呑んでしまった酒はもちろん、水で賄われた。
八戒達は、妖怪共に見つからないように姿を隠したが、「・・・・。」ぶすっと黙ったまま、
動こうとはしない三蔵に「こうなった以上、あたし達で片を付けなきゃ、ってね。三蔵?」
「煩せぇな。・・・ったく、関わり合いになった人間全てを助けられるワケねぇだろうが。」
剣呑な眼つきで三蔵が睨み、「俺は、他人と関わり合いたくねぇんだよ。」吐き捨てる様に言った。
桃花はそんな三蔵をじっと見ていたが、
「・・あたしは、関わり合いたいよ。独りなんて淋しいじゃん。自分と知り合ったヒト達には、
幸せになって欲しいって思うし。不幸な人間が多いより、少ない方が世の中楽しいよ?三蔵。」
「・・・てめぇみたいに、お人好しバッカだったら世の中平和だな。」クッと口角をつり上げ、
「さっさと済ませるぞ。」背中を向けて歩き出した――――姿を隠すために。
その背中を見つめながら、「・・・・ホントにね。」聞こえないように、「本当・・にね。」
繰り返し、呟いた。 重い ため息と共に。
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