★人生はホラー映画★ただいま労災で休職中★投稿すると抹殺人生★人生は運が全て★

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2013.02.24
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こんにちは。
投稿、文藝春秋の落選作品「アイシテル」の公開です。
(コンテストを検索しなくなったので、名前は忘れました)
タイトルが二つあるのは、気が変わりやすいからです(笑)
投稿するとすぐに似たようなのが出て終わりなので、
この作品も似たようなのが出ていると思います。
短編ですが、文字数制限があるので、10コマくらいあります。
1から順番に読んでね。

「夢語りの憂欝 果ての夢」 1

 途切れ続ける夢。それでもずっと現われる。
あの時走っていたのは私。私は必死に走っていた。家に泊まっていた田舎暮らし研究会の大学生のチェックのャツと、綿百パーセントのズボンを抱き抱えて、小さな私は走っていた。
 何度も振り返って誰も気づいていないことを確認した。確かめて胸を撫で下ろすと、戦利品をそっと四メートル先の蔵へと運んでいった。これを早くプレゼントしたい。きっと彼は気に入る。よく似合うはず。
 私の小さな胸は、はち切れんばかりに膨らんでいた。シアワセ。シアワセ。彼のために、私は動いた。すると今度は、彼が私のために動いた。

 お気の毒にといった視線で看護婦は藍子を見ていたが、医者の前の丸イスに座らせると少し下がって様子を伺ていた。診察室独特の戸棚は他人ごとのように沈黙し、藍子を観察している。純白のシーツで作られた寝台のようなベッドが、次の患者を待っている。清潔で美しすぎる部屋。落ち着かない。拒絶されているような気したが、嫌っているのは藍子の方だった。
 もうすぐ裁判官が藍子に死刑を宣告する。主文、被告人を死刑に処す。被告人を完治まで二ヵ月間の監禁の刑に処す。その医者の宣告の声が、すでに耳元で聞こえていた。
 裁官の前でモルモットのように縮み上がった藍子を、宇宙人のような医者が見ていた。宇宙語で何かを告げようとしている。彼女は恐ろしくて次第に現実逃避を開始していた。アタマを馬鹿にしていって、白衣がマシュマロに見えてきたら、恐くなくなった。
「大腿骨頸部骨折、全治二ヵ月です、が、リハビリをきちんとしなければ、これから死ぬまで寝たきりになります」医者が宣告をしてきた。
「寝たきり? ですか?」
 これが片桐藍子―藍子に下された宣告だった。今年、五十四才になったばかりの藍子には衝撃的だった。死刑ではないが、無期懲役のように感じた。人殺しではないのに、ムジツなのに。靴下で滑って、階段から転がっただけなのに。あぁ、スベラーズを付けていればよかったと藍子は嘆いていた。
「ご主人は三年前にご他界ということですが、病院を退院後、どなたかお世話をして下さる方はいらっしゃいますか?」
 ポーカーフェイスの医者は標準語で話すので、少々冷たく感じた。
「あ、あの、子供はすでに独立し、今は仕事の都合でアメリカと北海道に住んでおります。この先も同居をする予定はございませんが、姪のミチルが比較的近くにおりますので、時折一緒に食事などをしております」
「じゃ、その姪ごさんに多少は介護をして頂けるのですね?」
「カイゴ?」
 ぞっとした。恐怖の暗号のように聞こえた。まだ五十四才なのに、要介護になってしまったのだ。寝たきりになるのはずっと先のことだと思っていた。好きになれない気の強い嫁との同居も、その時に考えればいいと思っていた。まだまだ二十年以上先、きっとそうだと思っていた。
「いえ、姪はまだ大学生ですので、学業があります。私の介護はできないでしょう」
 名案を引き出そうとして、藍子は医者に探りを入れた。
「では介護ヘルパーかお手伝いさんをお頼みになればいいですよ。しかしあなたは第一号被保険者ではなく、第二号被保険者です。つまり四十才以上六十五才未満ですので、特定疾病による要介護ではない限り、介護保険給付の対象にはなりません。ですから、五十代というご年齢を考え、骨粗しょう症による骨折という事で主治医の意見書を書きますので、それを提出して下さい。認定結果が通知されば、ヘルパーの派遣を依頼して下さい」
「私としては退院後、在宅ではなく施設への入所を勧めます。サービスを提供する施設には介護老人福祉施設、介護老人保険施設、介護療養型医療施設があるので、そういう所に入所される方がご家族の負担にならなくていいでしょう」
「はぁ」まるで他人ごとのようだ。あんぐりと開口した藍子は、痴呆老人になったように見えたことだろう。
「最近では小さな施設で少人数だけで共同生活をするという施設もあります。一般ではグループホームと呼ばれています。家族のように中規模の施設に集い、ヘルパーの介助を受けながら生活をするのです」
 型どおりのアドバイス。もっと名案はないのかと藍子は思った。
「あ、あたくしはまだ老人ホームなどには入りたくはありません。絶対に主人が買ってくれた住み慣れた自宅での療養を希望します」
「そうですか」
 藍子はそう言い切ったが、本当は不安だった。ヘルパーは付きっきりというわけではないだろう。いない時は一人だ。そういう一人の時に、自分で自分のシモの世話ができるのだろうか。
 しかし今、(老人)ばかりの施設に入所すれば、本当に五十代の身空で、そのまま寝たきりのボケ老人になってしまうのではないかと思った。まだ藍子は老人ではないという確固たる意地がそれを許さず、赤ん坊のように歩行器で施設をゆるゆると歩き回るという日常に、強い抵抗感があった。老人化が加速し、あっというまに本当の痴呆老人になってしまうのではないかと思った。
 それから親切な医者が呼んでくれた介護相談員が、延々と退院後の介護保険の手続きの説明をしてくれた。相談員といっても総合病院の主任事務員だった。
 介護保険利用手続きの仕方はこうだ。電話でまず市町村の福祉窓口に相談する、要介護認定の手続きをする、これは本人か家族が市区町村に申請するという。申請は基本的には被保険者本人か、家族親族が行なうが、できなければ成年後見人・民生委員・介護相談員・地域包括センター・ケアマネージャーなどが代行することもできる。それから市区町村の職員が調査のために自宅を訪問する。コンピューターによる一次判定らしい。そして主治医の意見署を提出する、そして介護認定審査会いわゆる二次判定が行なわれ、一次判定の結果と意見署をもとにして専門家によって介護状態がどのくらいでそれほどの介護が必要かを判定するという。要介護のランクには要支援一、要支援二、要介護一~五の七段階がある。非該当は自立だ。そのランクに応じて、給付とサービスが受けられる。
 そうすると晴れて、認定結果が通知されるらしい。判定に不服があるときは専門部署に相談すればいいこと、納得できない時は通知を受けた翌日から起算して二ヵ月以内に「介護保険審査会」に申し立てを行い審査請求することができるという。
 「在宅」での介護を希望する場合は、作成された(ケアプラン)に沿ってサービスを受ける。ケアプランは利用者または家族の人が、心身の状態や生活環境に応じて、サービスの内容を相談して決める。これに基づいてケアマネージャーがケアプランを作成する。
 そしてケアプランの作成依頼をしたことを、依頼届として役所窓口に届け出る。すると待ちに待った在宅サービスが、ケアプランに沿って開始されるのだ。在宅サービスには訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、小規模多機能型居宅介護などがある。
「介護サービスを受けながらリハビリを頑張りましょうね」
 介護相談員は言った。
 kaigokaigokaigokaigokaigo
 サイアク





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最終更新日  2013.02.24 11:29:02
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