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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年05月04日
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「ばっかねぇ、アンタって」

カウンターのむこうで、いかつい男の声が笑った。長い金髪の巻き毛に日焼けした肌、フリルのついた白いぴっちりしたボディラインの服を着ている。「彼女」は、明日いっときクリロズの自室にバーを開店させるのだ。

「どういたしまして」

旧い友人に穏やかな微笑みを見せて、トールはグラスを干した。隣には神妙な顔で座る緑の少女、そのむこうには、昔の情報部仲間で飲み友達の銀樹がいる。

「まったく、この知能犯の確信犯! アタシもそんな愛がほしいわ。アタシをさらって! 結婚して!」

「・・・・・・その栄誉は銀樹に譲りますよ」
「こら、まてトール」

「いやん、アタシの取り合いなんてしないで。どっちにも熱いキスをおみまいしてあげるワ」

ばっちん、と強烈なウィンクを男達に見舞って、フレディことフレデリカは緑の少女に向き直った。さきほどまでは、彼女に真面目なお説教をしていたのだ。

「はいこれ、明日の衣装」

フレデリカが取り出した濃いグリーンのフリルたっぷりのメイド服に、少女は思い切り顔をしかめた。
えーっこれかあ?と渋る少女にかまわず、フレデリカは衣装を彼女の手におしつける。

「緑だし! 色!! だから大丈夫! かわいいから!」

と訳のわからぬ説得をして、最後には押し切ってしまう。その後今度は白い衣装を取り出してトールに手渡した。

「こっちはマリアちゃんね。頼りにしてるわよん。髪は結ってあげるから、早めにいらっしゃいな。それじゃ明日ね」

席を立ったトールは、了解のしるしに軽く片手を上げた。



開店当日のバー「QUEEN」は、フレデリカ好みのピンクに赤いハートの派手な内装がほどこされていた。

「すっごいよね。・・・・・・うわ、すごいゲストが来てるよ」

淡いプラチナブロンドを波打たせ、黒いタキシードをぴしりと着た銀樹が、すれちがった後光のさしている集団に会釈する。

「ほんとにねえ」

同じく会釈し、こちらも黒いタキシードを着たトールが言った。奥のほうの二人がけテーブル席が空いていたので、そこに腰かける。
ちょうど、大きくスリットのあいた金色のロングドレスに身を包んだフレデリカがヒールの踵を鳴らしてやってきた。今日は金髪をアシンメトリーな前下がりボブにぱっつんと切りそろえ、たしかに女王然とした雰囲気を醸し出している。

「トール君、これすごく良さそうよ。ありがと」

ショッキングピンクの大きなピコピコハンマーを振り回す。見た目はまるっきりのおもちゃだが、中身はトールが仕掛けをしてあり、かなりの浄化とヒーリング効果があるのだ。店じまいの最後には、これで客をクリロズ内の大浴場にふっとばすことになっていた。
開店祝いを述べる二人に、今日はゆっくりしていってね、とウィンクをして、彼女は姿勢よく歩みさっていった。

店内はすでに色々な客が入りまじって混みあっていた。クリロズで会うサンディじいさんや女の子、マイクを握った中年男性もいるし、ハリセンを持った若い女性、老若男女にドラゴンも入り混じっている。
格好もばらばらで、クイーンにちなんだTシャツを着た者もいれば長い黒髪にエプロンドレスの女の子、三次元の姿のままとおぼしいパジャマやトレーナー姿、白いドレスを着た男・・・いや女性。
白い服の女性は年齢を問わず何人かいた。中には十歳以下にみえる子もいて、三次元では問題になるところだろうが、もちろんここではそんなことはない。

カウンターのむこうの方には、同じく情報部仲間のアル少年が、ステージで踊り終わったばかりの誰かと話していた。
オーク材の入り口扉を開けて、シュリカンに案内されたらしい紫のドレスの女性、おかっぱとウェーブ髪の二人の少女が入ってくる。さらにボブカットの女性と詰襟を着た細身の若い男性が入ってきて、満員御礼というところだ。
ただし途中で本体が寝落ちるなど消える者もいるし、ほんの瞬間から数分だけ現れる者、ずっといる者もいる。めまぐるしいといえばめまぐるしい。

最初は個人部屋にすると言っていたはずだが、これだけ雑多なエネルギーの客がくるとパーティ形式でなくてはやっていられないのだろう。
どちらにせよ、ホストのフレデリカと本体はかなり疲れてしまうはずだ。ヒーリングでエネルギーのバッテリー役を買って出ればよかったな、とトールは思った。

やがて、ミニのメイド服に身を包んだ緑の少女が盆に飲み物をのせてやってきた。
あれだけ嫌がっていたのに、衣装を着てみたら借りてきた猫のようにおとなしくなっている。

「あれ、僕まだ頼んでないけれど」

しゅわしゅわと発泡する好みの酒を前に置かれた銀樹が言った。

「マリアだよ。カウンターにいるから」

その言葉が聞こえたように、何人か助っ人の入ったカウンター内でマリアがにこやかに手を振る。銀樹がかるく目礼した。
マリアはやはりミニの白いメイド服で、フリルつきのニーハイソックスにハイヒール。ふんわりとまとめて、細い赤いリボンをつけたアップヘアはフレデリカの傑作だそうだ。
「なによ、アタシより美人ホステスじゃないの! 嫉妬しちゃうわ。アンタのトゥシューズに画鋲入れてやる!
でもホント、非の打ち所のない子なのよねー。素直で綺麗だし…アタシには劣るけど!!」
とは麗しき女主人の弁だが、もしデセルが来られたらどんな反応をするか、見てみたいところではあった。

「お姫様、よくお似合いですよ」

まるで初めてのバイト先で緊張、といった面持ちでトールの前にもグラスを置いた緑の少女に微笑む。
モスグリーンの大きなリボンを髪につけられた少女は、ぎこちなく微笑みかえしてカウンターに戻っていった。
見送って銀樹が呟く。

「我らが姫君に、形から入るってやり方が有効だとは思わなかったな」
「たしかに」

本体を同じくする黒の少女はコスプレが好きだから、やはり根っこは同じなのだろうが。
トールはにこにこしながら少女の背を見守った。

(どう、ビデオに撮りたいくらい可愛いわよね~。これに味をしめて、今度はアタシ好みのもっとプリーンとした可愛いコスチュームを用意してあそばせていただくわ。ウフフ)

と心話を送ってきたのは、入り口とカウンターの間で客の応対をしているフレデリカだ。トールは肩をすくめて笑う自分のイメージを送り返した。

カウンターの近くに、窮屈そうに白いタキシードを着たジョゼがいる。まだ服に着られている感じだが、学校の友達と一緒に来たようだ。
フレデリカにハグをされて驚いている。軽く手をふるとこちらに走ってこようとしたが、フレデリカに止められたようだった。
どうやら、妖精たちの機械に熱中しすぎて倉庫で寝たり、食事もせずに学校へ行ったりしているのを彼女に見抜かれたらしい。少年がしどろもどろで応答しているのが見える。

少年の熱中癖はトールも承知していたが、一度きちんと話をしておかなければならないな、と彼は思った。
むしろルキアに部屋を作って、そこから学校へ通わせたほうがいいかもしれない。
あそこならばサバトもいるし、マリアが生活面の面倒をみてやれる。同じ技術方面ということでデセルも興味を示していたから、ちょうどいいだろう。

そう考えているうちに、白いドレスの大柄の「女性」が、傍らのパンク少年をフレデリカに預けてこちらにやってきた。

「いっつもうちの馬鹿息子がお世話になってますぅ」

しなを作って挨拶する後ろから、「俺はお前の息子じゃねーっつーんだよ!」という声が聞こえる。トールの魔法理論の生徒で、先日学校でリックにふっ飛ばされたこてつだ。してみるとこの女性は、こてつと同じ本体を持つ分身なのだろう。

「いえ、どういたしまして」

トールは席から立ち上がり、丁寧にお辞儀をかえした。こてつが何か叫んで、フレデリカにぺしっと頭をはたかれているのが見える。

「相変わらず苦労性だねえ」

トールが席に戻ると、銀樹がにやにやしながらグラスに口をつけた。
彼はかつての旧クリロズ――はるか地球が創世された頃の仲間で、クリロズにいたドラゴンライダーの一人だ。当時上所属の連絡係であったトールが届ける星団中の情報を受け取り、整理してクリロズに生かす情報部の仕事をしていた。
当時のリーダーの片割れ(つまり今の緑の少女だ)に伝えたら最後、鉄砲玉になって前線に向かってしまうと思われる危険な情報は、トールやシュリカンと一緒になって隠しおおせた、という秘密を共有する仲間でもある。

「おたがいさまだろ」
トールは笑ってグラスをかかげた。

そこへ今度は象牙色の肌をした一人の女性が、人波を縫いながらやってきた。手にグラスホッパーとおぼしい緑の液体を満たしたグラスを持っている。
ほとんど白に近い栗色のふわふわした長い髪をゆらし、いつも紅茶をありがとう、とトールに笑いかけた。

「どういたしまして。座りますか? ・・・・・・今日はハルドは?」

「ありがとう、でもいいわ。いま探しているところなの。今日は来ていないのかしらね」

金髪にターコイズの目をした金星人の若者。クリロズに来られないわけではないはずだが、今日はまだ姿を見ていなかった。
それじゃあまた、と女性はもう一度人ごみに潜ってゆく。顔の広い彼女らしく、あちこちで会話の花を咲かせているようだ。

「彼女とはあっちの仕事?」銀樹が指で地下をさす。

そう、とトールはうなずいた。教職は副業のひとつで、実は彼はさまざまな仕事をしている。

「姫君が本気で嫌なら上と喧嘩しても止めるって」

「たまにはそういうのも楽しいだろ」

よくやるよ、と銀樹は笑った。今は穏やかに笑っているだけの銀髪の友人が、そうとなったら本気で喧嘩を売るであろうことを、彼は知っている。
たとえそれがWBH相手であっても、だ。

少女の性格からしても、おそらくそうはなるまいが・・・・・・もしなったら混ぜてもらおうか、それとも諌めるべきかな、と銀樹は考えた。

「我らが姫君に乾杯」

合わせた二人のグラスから、リン、と澄んだ音が生まれる。
その音は、雑踏の中でも彼らの耳に心地よく残った。















*************

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書くのが忙しくてお返事できず申し訳ないのですが、ご感想くださるととっても幸せ♪
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※連休中、セミナー参加等のため、来週水曜くらいまでメールのお返事ができないかと思います~
物語はもう書いてあるので、実家でPCが触れたらささっとアップするつもりですが
メールのお返事は自宅に戻ってからゆっくりさせていただきたいと思うので
どうぞよろしくお願いいたします m(_ _)m





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最終更新日  2009年05月11日 09時03分44秒
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