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よんきゅ部屋
震災回顧(その2)
テレビを早速つけてみた。何とも表現のできない地獄絵図だった。建物の1階がすべて倒壊してなくなったという現象は街中で何度も見かけたが、ショックだったのは、やはり長田で起きた火事だった。彼女(現在の妻)の家はそのすぐ近くにあったので、何かなかったのか心配だった。直後に電話をしたきりまったく連絡が取れない状態だったので不安だった。あと、高速道路の倒壊も恐ろしかった。これも自宅からそれほど離れていない場所にあったので、人ごとではない。また、三宮で起こった火事と爆発もショックだった。テレビ画面で確認すると、祖父母の家があった場所の2件となりが爆発した場所だった。もう祖父母も亡くなっていて家も売った後だったので直接関係はないのだが、父にとっては生まれ育った家だから、きっとショックだったに違いない。
それからはずっとテレビをつけっぱなしに。死傷者の情報をとにかく見る。知り合いが亡くなっているのではないかという不安を抱えながら。すると、やはりいた。オケのメンバー、高校の先輩、中学校の同級生、小学校時代の知り合い(何度か遊ぶ機会があったという程度だが)...いろいろと出てくる。後で聞くと、ほとんどが建物の下敷きになってしまったらしい。紙一重で助かった人の話も聞いたことがあり、人生には運ってあるもんだなと思うようになった。
3,4日経った頃から、少しずつ電話がつながり始める。「大丈夫か?」というメッセージがほとんど。大学の後輩などは「先輩は人類が滅亡しても生き残ってそうですから大丈夫だと思ってましたよ!」ん?フォローになっていないぞ!そんな中、彼女から電話が。バイト先の先輩の家に転がり込んだとのこと。初日すぐに近くの小学校に避難していたそうだ。崩れそうなマンションからとにかく食料と服を少しだけ持って行ったらしい。長田の火事は、マンションの2筋先まで来ていたらしい。後日聞いた話によるとあと何センチか柱がずれていたら確実にマンションは倒壊していたそうだ。よくぞ生き残っていてくれたと思う。先輩の上は丘の上にあるそうで、それほどひどい被害はなかったようだ。安心して寝泊まりできる場所ができたようでよかった。
私の方はというと、家にいても何もする気が起きないし、せめてできることはないかと小学校に行って手伝いをすることにした(いわゆるボランティアの仕事)。炊き出し、救援物資の受け取り、救護室との連絡など、とにかくできることをやろうと思った。家にいても余震への恐怖感があって落ち着かないのだ。学校なら建物の倒壊の心配はないし、疲れて帰れば寝られるだろうしと考えてのことだ。
ここでもいろいろな人に出会った。しばらくするとずいぶん仲良くなった。それぞれの被害自慢大会には参ったが、こうでもしないとやっていられないのだ。強烈だったのは、マンションに住んでいる人で、寝ていたすぐ横を下の階から柱が突き抜けてきたという話だった。これも運がよかったとしか言いようがない。あと20センチずれていたらアウトだったらしい。
救護室に行っても再会があった。この小学校を担当する医師は2人とも知り合いだった。1人は小学校の同級生、もう1人は高校の先輩だった。どちらも私がいることにびっくりした様子だったが、私の方こそ驚いた。ちゃんと診察している姿を見ると、やはり月日を感じずにはいられない。
夜の仕事で一つつらかったのは、送られてきた救援物資を捨てなければ行けないというものだった。送られてきたものの中で一番どうにもならなかったのはおにぎりだった。神戸市内の交通はズタズタ(道は通れないところだらけ、ひどい渋滞)だったため、大阪からでも半日以上かかっていたようだ。東北や九州からだと消費期限はとっくに切れてしまって、カチカチに固まって石のよう。とても食べられない。中にはカビが生えたものもあった。というわけで捨てなければどうしようもないのだ。しかし、見えるように捨てたのでは、「ありがたくいただいたのものを捨てるとは何事か!」と怒られてしまう。送って下さった人、もらう立場の人、どちらの気持ちも分かるだけにつらいのだが、結局みんなが寝静まった頃に捨てていたのだ。
そのような毎日を過ごして、夜は帰ったらすぐに眠る状態が続いた。彼女は船で大阪まで出て、そこから実家へと戻ったという連絡が入った。無事で何よりだ。その中で、「一度来たらどう?お風呂入っていないんでしょ?」と言われた。ありがたい言葉だったので、少しだけおじゃますることにした。電車がやっと近くの駅まで来るようになった(とはいえ、歩いて40分かかるのだが)ので、それに乗って大阪へ。大阪へ行ってビックリ!たった20キロほどしか離れていないのに、そこは別世界だった。こっちはボロボロの格好で歩いているのに、大阪ではみんな普通にしている。スキーに出かけようとする人、スーツを着て行き交う人、なんと違うことか。とてつもなく悲しい気持ちになった。そんな気持ちを抱えながら、彼女の実家で少し休み、また神戸へ戻った。さあ、これからどうしようかと迷う日々が始まっていく。
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