よんきゅ部屋

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Apr 25, 2007
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第1楽章:
この楽章の冒頭にある表情記号の指示はpiacevole、つまり「柔らかい優しさのある表現で」ということ。まさにエルガーの世界にふさわしいものだと言えそうだ。ヴィオラによる8分の6拍子の特徴的なリズムの上に、ホ短調で少し陰がありながら寂しさをあまり感じない不思議な旋律でスタート。曇っているけれど、ジメジメした感じはなく、時折太陽の光が差したりという情景が浮かんでくる。

中程でホ長調に転調するが、その明るさが何ともいえず優しい。包んでくれるような優しさとでもいおうか。一瞬だけ登場するヴァイオリン・ソロも単純な音型ながら深いものを感じさせる。その部分が終わると最初の音楽を繰り返すような形で、最後はあっさり終わる。

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第2楽章:
ハ長調のゆっくりした音楽。平和な雰囲気が全体を包み込んでいて、これもやはりエルガーの世界だと思う。しばらくしてから、やっとハ長調だと明確にわかるように書かれた旋律がとても美しい。家族と過ごす静かな昼下がりという感じだ。激動のドラマのような音楽もいいが、その対極にある音楽も素晴らしい。フォルテでもあくまで優しい音が要求されている。最後は弱音器をつけて演奏されていくが、薄いカーテン越しに見るような風景が想像される。

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第3楽章:
最初はト長調でさわやかにスタート。最初は流れていくように、そして色の移り変わりも激しくなく、あくまで平和な雰囲気で盛り上がっていく。第2楽章と共通する音の進行が隠されていて、構成の上でもバランスがとれている。後半は、第1楽章の回想。ホ長調の部分が優しく奏でられ、流れを保ちつつ柔らかく終わっていく。ヴァイオリンの上行音型は愛のあいさつの最後の部分を思わせる(調性も同じ)。これは妻への愛の表現を象徴する音型、調性なのかもしれない。

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この曲は規模がとても小さく、全曲演奏しても10分ほどしかかからない。流転のドラマがない分、コンパクトになっていくのかなと思ったりする。しかし、そのコンパクトさと優しい雰囲気とが相まって素晴らしい曲になっていると思う。一度聴き始めると、すぐに終わってしまうのでつい何度も聴いてしまうが。

この曲は2回演奏したことがあるが、そのときに感じたのはコンパクトであり、平和な雰囲気である故の難しさだ。スコアを見るとよくわかるのだが、とてもシンプルな作りで、どのパートにも複雑な音型がまったくと言っていいほど出てこない。つまり音をなぞるだけなら時間はそれほど要らないのだが、これを聴かせることはきわめて難しい。ヴァイオリン・ソロは本当に簡単なのだが、和音の動きにうまくはめて、音質を追求していこうとするととんでもなく大変だ。いつまでたってもたどり着けない場所がそこにはあるような気がするが、その場所はとても魅力的、また演奏してみたい曲である。





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Last updated  Apr 25, 2007 10:50:09 PM
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