■解説■
狂言の曲目中最多の演者が登場し、一人の日本人を除いて全て中国人という設定の奇想天外な大スペクタル狂言「唐相撲」。
茂山家の女性たちが代々作ってきた珍しい唐人装束、怪しげな中国語の大合唱(唐音)、サーカス並みのアクロバットなど、見どころ満載。茂山唐人軍団VS日本人力士萬斎の、相撲と芸の対戦ぶりも必見です。
■ストーリー■
長く中国に滞在していた日本の相撲取りが帰国を願い出ると、帝王は名残にもう一度相撲が観たいと所望する。
そこで通辞(通訳)が行司になり、唐人たちが次々に挑むが、全員なぎ倒されてしまう。
ついに帝王自らが相手をすることになるが・・・。
<唐相撲DVDの解説より抜粋>
■登場人物■
日本人:野村萬斎
帝 王:茂山千之丞
通 辞:茂山千五郎
髭掻き:茂山七五三
菰持ち:茂山千作
菰持ち:野村万作
唐 人:茂山千三郎、前田たえま、野口浩、黒崎剛、藤田修、国弘正彦、橋本昇、
五十嵐雄造、 高野和憲、石田幸雄、茂山宗彦、茂山正邦、月崎晴夫、
深田博治、茂山茂、茂山あきら、茂山逸平他(略)
太 鼓:柿原光博
太 鼓:観世元伯
小 鼓:森澤勇司
笛 :松田弘之
後 見:野村万之介、木村正雄、丸石やすし、黒沢正蔵
■感想■
元々は満州へ戦争で駐在していた日本軍への慰問として演じられたのが「唐相撲」であったという。
バッタバッタと唐人を相撲で打ち負かしていく凄腕の日本人は観ていて爽快でありながら、唐人役のバイタリティの広さ、まさにサーカス団顔負けの身体能力の高さ、負けても笑える滑稽さ、可愛らしさが面白い。
「まさか?能舞台で、あーんなことや、こーんなことを?」
と言ったパフォーマンスが繰り広げられる。
この通辞(とうじ)は、いわゆる「相撲の行事 兼 通訳 兼 ストーリーテラー」
この役どころの力量により、この唐相撲の良し悪しも左右されるらしい。
何と言っても、見どころといえば当然「相撲」
通辞が次々と日本人(野村萬斎)戦う唐人を指名していく。
当然、唐人(中国人)だからセリフも中国語であるところだが、本物の中国語を話すわけではない。
型どおり決められたセリフを話つつも、中国なまりで
「イッペー(茂山逸平) イケ」
「イチダ(石田幸雄)イケ」
「センサブロー(茂山千三郎)、オマエイケ」
「ムスコ イケ」
などと仕切るところが可笑しい。
伝統芸能といって、お固く感じてしまいがちだが、柔軟でなおかつ親しみを感じる演出である。
私が好きな部分は
「日本人萬斎 VS 唐人千三郎」対決。
唐人逸平もトボけていて、かなり笑えたがさすがは茂山家のアニキ分、絶妙である。
通辞に指名されて、あまりに強い日本人に恐れをなし「イヤイヤ」をしながら舞台を逃げ惑う。
「カンベンしてーーー」と柱に噛り付く情けない状態にありながら、通辞からついに
「ええい、観念して相撲をとれぃ!!」とばかりに、舞台中央へ引っ張り出される。
思わずでんぐり返し、気づけば唐の帝王の御前へ召しだされてしまう。
腰をひきつつも、強引に相撲をとらされ、威勢良く「やぁーー」と声を上げる日本人を前に戦う
ことも出来ず、結局は橋掛りへ一番近い柱を外側から跳んで逃げたりと大騒ぎ。
ここがまた、萬斎さんに負けずとも劣らない千三郎さんの身体能力の高さを見せ付けられる。
もうこれは、ここでの感想文のみでは伝えきれず、是非興味のある方は「唐相撲」のDVDか
ビデオをご購入、鑑賞していただかなくては・・・。(特に回し物ではないのですが)
人間国宝「茂山千作さん」と日本人を演じる萬斎さんの師であり父「野村万作さん」といった狂言会を代表する重鎮も登場する。
コレと言って、相撲をする唐人として登場するわけではなく菰持ちという役どころで、帝王の身につける簡易的な防具を召しだす、というだけであるが、二人で出てくる場面が可愛らしく(失礼かもしれないが)存在感がタップリとある。何と言うのか、「味がある」という一語に尽きるのかもしれない。
「唐相撲」は基本的にストーリーというストーリはなく、日本人が唐人に相撲を挑まれるが、無敵ということ。そのまた負けて逃げる唐人が滑稽で楽しいところが最大の面白さである。
狂言の曲のうち、演者の数が総勢40人以上という一番登場人物の多い演目である。
そしてこの2000年に国立能楽堂で演じられた「唐相撲」は、野村家(和泉流)の江戸前狂言と茂山家(大蔵流)の柔和な関西の狂言が融合した貴重なものであると思う。
茂山家では、何度となく演じられておりHPにも紹介があるが、また両家の再演とあらば、是が非でもチケットを入手して観に行きたいものである。
↑・・・と書いたところですが、20年間封印されるとか・・・
暫く観られませんね・・・暫くドコロの騒ぎじゃないね。
あめみこはいくつ?(/∀\)イヤン!
■DVDのご購入はこちらに出てました。(回し者ではありませんよ)
amazonさんや楽天さんには本日現在、販売してませんでした。
森崎事務所HP
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