萬華鏡-まんげきょう-

鏡冠者(かがみかじゃ)

◇鏡冠者(かがみかじゃ)◇


太郎冠者は、山伏から貰ったとされる蔵の中の「鏡」にお神酒を供えてくるように主人から命ぜられる。
さて「鏡くらいわかるわい」と言うも、この太郎冠者。どうやら知らないらしい(狂言ではよくある話・・・蝸牛(かたつむり)を知らなかったり・・)
お神酒を鏡の前に供え「南無鏡大明神、南無鏡大明神~」と唱え、
「さぁ、(持ってきた酒を)お飲みください」と勧める。
「そなた、下戸(=酒が飲めない)のですね、それならば仕方がない。私が代わってお飲みしましょう」
「こりゃ、粗末な酒だ」
などと言いながら、一人でお神酒を全て飲み干してしまう。
酔って気分が良くなった太郎冠者は鏡に被さっている布を取ってみる。
すると、鏡に映った太郎冠者(=鏡冠者)が登場し、お互いが向かい合って浮かれ舞い踊る。
そこへ、なかなか帰ってこないと主人が見に来ると鏡冠者を太郎だと思って叱る。それを面白がってからかう太郎冠者と鏡冠者。
訝しげに主人が去っていくと、また太郎と鏡が舞い踊り浮かれる。
再度迎えに来た(叱りに来た)主人と一緒に鏡冠者が帰っていく。
しかし、太郎冠者は蔵の外へ戻ることができない。
次第に事の重大さに気づくも後の祭り。
最後には鏡冠者が抜け出た鏡の中へ閉じ込められてしまう。



いとうせいこうさんの脚本の鏡冠者。これは2000年に初演された新作狂言です。ブラックユーモアが狂言の中に上手く競合した作品です。

新作狂言とはいえ、
・能舞台の形式を用いて演じること
・セリフは「ござる調」でしゃべること
・衣装は装束(着物)で
という、狂言本来の定義を満たさなくてはなりません・・と、野村萬斎氏の著書には書かれています。

演出家 宮城聰さんとのポストトーク中でも話題に上がりましたが、脚本は作家が書き、それを狂言の台本に合うように狂言師が手直しするといいます。

萬斎さんは「でも、いとうせいこうさんはかなり勉強されていて、マニアックでしてねぇ・・(笑)」と話し、殆ど手を入れなくて済んだと仰ってました。

萬斎さん「だけど、これは大蔵流の言い回しだな・・とか(笑)」そういう部分については、ご自分の家(和泉流・野村家)の言い回しに変えて直されたと言うことです。

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