◇ 鍋八撥 ◇
シテ 鍋売り
アド 鞨鼓売り
アド 目代
【あらすじ】
所の目代が新しく市場を立てるので、一番最初に店についた者を、その市場の代表( 市司
)とする高札を出した。
市場の代表になると、当然商品を一番良い場所に置くことが出来るほか、色々な免除がされるというので当然誰しもその座につきたいものです。
夜明け前、鞨鼓売りは1番のりを果たします。
まだ朝までには時間があるので、そこで一寝入りしていると、一足遅れた浅鍋売りがやってきました。
「ややっ!!先を越された!」
でも都合のいい事に相手は眠りこけている。
抜き足差し足忍び足・・・。一番乗りのフリをして鞨鼓売りの前に陣取りをし眠り始める。
1番のりをした鞨鼓売りは目を覚ましてビックリ仰天。
自分こそが一番である、と諍いになる。
目代が現れ仲裁に入るも、お互い一歩も譲らず。
それでは、と目代は二人が勝負をして勝っている方に市司にしよう、と提案。
では棒を振って見せましょう。
と鞨鼓売りが鞨鼓を括りつけていた棒を勇ましく振る。
さて次は鍋売り。・・といわれても棒がない。
「棒を貸してくだされ」とお願いするも、「自分の持ち物でせい」と言われ已む無く「浅鍋」を振り回す。
そして鞨鼓売りが鞨鼓を打ちながら舞う。
撥のない鍋売りが、鞨鼓を借りようとしてもやはり「自分の持ち物でせい」と言われ、仕方なく「浅鍋」を胴に括りつけて舞おうとする。
鞨鼓売り「それではこの撥だけでも貸してやろう( ̄∀ ̄)ニヤリ」
鍋売り「おお、ありがたい」
・・・撥で鍋を打とうとしたところ・・・
。。。。。。。。(ノ゜◇゜)ノ あっ!!割れる
わざと意地悪をする鞨鼓売りに悔しさ隠せない鍋売りだが、懸命に応戦する。
身軽な鞨鼓売りが囃子に合わせて身軽に水車返り(側転)をしながら舞い興じる。
負けじ、と鍋売りも真似をしてみるが、どうも恰好よくいかない。
そのうち、胴に括りつけた浅鍋を下敷きにして割ってしまい
「数が増えてめでたい」と終わる。
【おまけ】
前にもトークで聞いたことがあるのですが、この鍋八撥で使う鍋(焙烙)は1舞台1回限りの品物。
最後には割ってしまいますからね。
最近はあまり売られていないらしくて、見つけると「買占めてくる」のだそうです。
浅鍋を買い占める集団・・・怪しいですねぇ(笑)
上記にも書きましたが、腹の下で鍋を割って『数が増えてめでたい』と終わるこの鍋八撥や煎物という狂言ですが、もしも割れなかったら・・・どうするのでしょう。
生の舞台ですからハプニングは考えられます。
鍋が割れない場合には、そういう時に言う台詞がちゃんと決まっているのだそうです。「良い鍋だから大切にしよう」というような意味合いだったかな。
台詞までは記憶してないけれど、この台詞を聞くことのできた人は滅多にないのでラッキーかもしれませんね。