萬華鏡-まんげきょう-

武悪(ぶあく)

◇武悪(ぶあく)◇



主人は召し使う 武悪 の不奉公(勤怠)に怒って、太郎冠者に成敗を命じる。
「彼は、同じ乳母に片方は前に抱かれ、もう片方はおんぶされて一緒に育った幼馴染みです。とても討ち取るなどということは出来ません。どうか許してください」
しかし、主人の心は収まらず、成敗できないのであればお前も斬るぞと言われ、つい観念し、武悪を討ち取りに出かけることとなった。

武芸を心得た武悪にまともに立ち向かっては勝算はない。
主人に魚を進上するようにすすめ、武悪を水中に追い詰めだまし討ちにしようとする。

武悪は子どもの頃から一緒に育った仲ではないか、御主人の命によってこの武悪を討ち取りに来たのなら、そのように最初から言ってくれれば覚悟を決めて斬られようものを・・・

と嘆き悲しむ。

武悪は覚悟を決めたとばかりに、太郎冠者の前に座し、さぁ斬れと言う。

何度も何度も刀を振りかざす太郎冠者。
しかし、どうしても斬ることが出来ず、刀を下ろしそのまま泣いてしまう。

このまま遠国へ出奔することを条件に見逃し、主人には武悪の首を斬って取ったと嘘の報告をする。

素直に斬られたと聞いた主人は何となく後味が悪くなり、弔いがてら太郎冠者を伴い、東山へ出かける。

一方、命が助かった武悪は、そのお礼参りに清水寺へ参詣に向かう。

その途中・・・ 鳥辺野(とりべの)でばったり!
※鳥辺野・・・京都東山にある、平安時代からの墓場

お互いにビックリする3人。
死んだはずの武悪が今いたぞ、と疑う主人。
必死に隠そうとする太郎冠者。
まさかこんなところで出会うとは思いもよらず、いよいよ覚悟を決めなければならないかと追い詰められる武悪。

太郎冠者は必死に取り繕う。
主人が見に行くというのを「私が何のためにいると思いますか?=家来です」と説得、ようやく止め、自分で様子を見に行く。

太郎冠者「なんでこんなとこにいるんだよーヽ(`Д´)ノ」と思ったに違いありません。

武悪は観念して、「ここで俺の首をはねて行けばいいよ」と言うが、既に主人には斬り捨てたと嘘をついている。そういうわけにもいかない。

太郎冠者「ハッ!Σ(・∇・) ここは 鳥辺野(=墓場が存在する) ではないか?幽霊がいたとしても不思議ではない。幽霊になれっ!」←んな無茶な(笑)

武悪「そう言ったって、今まで幽霊なんかになったことはないし」←そらそうだ( ̄▽ ̄:)

とにかく幽霊らしく身づくろいをしておけと太郎冠者が言い残し、武悪は一旦去る。

主人に「やはりあれは武悪の幽霊でした」と報告すると気味悪がる主人。
さ、早々に帰りましょう・・・と促す。

しかし武悪が白い着物と黒いボサボサの鬘(鬼が付けるようなもの)を付け、杖を突いてやってくる。

ビックリする主人は恐る恐る武悪に「ここで何してるんだ」などと尋ねる。
オドロオドロシイ幽霊の演技(笑)で「 魂(こん)は冥土にありながら、魄(はく)はこの世にとどまって 成仏できずにこの辺りを彷徨っています」

主人は自分を本物の幽霊と信じ込み、調子に乗った武悪は、「冥土でご主人のお父上に会いました」と言う。
父親は極楽にいるのか?と尋ねれば、極楽でもなく地獄でもないと答え、主人は「確かに父親は、生前良いことも悪いこともしてないから、当然かもしれない」などと妙に納得している(笑)

あちらの世界では物が不足しており、お父上が困っているからと、主人の刀、小刀、扇を貰う。

さらには「冥土には広い屋敷が用意してあり、ご一緒に参りましょう」と言われ追い、主人は恐れをなして逃げていく。


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