◇茶子味梅(ちゃさんばい)◇
流派:和泉流
登場人物:唐人の夫(シテ)、日本人の妻(アド)、教え手(アド)
【あらすじ】
箱崎の浦(福岡市)に住む唐人と日本人の妻は今で言う国際結婚。
最近、唐人の夫が
「日本人無心我唐妻恋(にっぽんじんむしんがとうさいれん)」
「ちゃさんばい」
「きさんばい」
と意味不明なことを言ってさめざめと泣くので、物知りな知り合いにその意味を尋ねに行く。
すると
「故国に残してきた元の妻が恋しい」
「茶が飲みたい」←それはデタラメ
「酒が飲みたい」←これも実はデタラメ
という意味だから、帰ったら夫に酒を飲ませて慰めてやるがよい。
決して怒ってはならぬぞ と教えられる。
一方、夫は 唐土たいけんの国キサンバイとう唐人だと名乗り、故郷の妻を慕っては泣く。
妻は十年も連れ添ってきたのに、と心外に思うのだが、先ほど教え手から言われたとおり一旦心を落ち着かせ、夫に酒などを振舞い、ご機嫌を取る。
夫は勧められるがまま酒を飲み、唐の楽の舞を舞うが舞い終わると母国を思い出し、また
「日本人無心我唐妻恋(にっぽんじんむしんがとうさいれん)」
と言いながら、さめざめと泣き出す。
さすがにキレた妻は夫に恨み言をぶつけ、逆上した夫は妻に追いかかる・・が、たちまち妻の威力に負け、追われていく。
唐音(とういん)を台詞に用いた作品。
他にこのような唐音を使う狂言は、「唐相撲(唐人相撲)」、「唐人子宝」というものがあります。
言葉は、何となく日本語を唐人語に模写して話しているので、分るところもあれば、上記の「日本人無心我唐妻恋」などと言われると意味がわかりません(苦笑)
ただ、身振り手振り、妻との会話では雰囲気などで状況の把握ができます。
これは能の「唐船(とうせん)」に類似している曲で、演出も能がかり。
夫が舞う(楽)は、狂言の三段ノ舞(能の略式三段の中ノ舞を模した狂言の舞)を基本にして囃子に合わせて楽しく舞います。