萬華鏡-まんげきょう-

宗論(しゅうろん)

宗論 しゅうろん



【登場人物】
シテ 浄土僧、アド 法華僧、アド 宿屋

【あらすじ】
京都下京あたりの法華僧が身延山に参詣した帰り道、善光寺帰りの浄土僧と偶然道連れとなる。

同じ出家同士、共に行こうと喜んで歩いていく。
ところで、そなたはどちらに身を置いているお方か?と浄土僧が尋ねると、甲斐の身延からの帰りだと話す。
(※現在の山梨県身延山の日蓮宗総本山久遠寺のこと。)

浄土僧「ぬわにぃぃぃ~?身延山となっ?日蓮宗の者だったかっ!」

逆に法華僧が、浄土僧にどちらから参られたのかと尋ねれば
片辺土 かたへんど (※片田舎)の者であると言って、なかなか素性を明かさない。
しつこく聞けば、信濃の国善光寺(※長野県の天台浄土兼宗の名刹)からの帰りだと明かす。

法華僧「なんだとぅ~(ーー)こやつは浄土宗の者であったのかっ」

さすれば話は無用。法華僧は、宗派の違う浄土僧と離れて行こうとするが、浄土僧はこの生真面目そうな法華僧をどうにか"なぶってやりたくて"離れようとしない。

法華僧が「この数珠はかの日蓮上人から子細あって我が手元に納められているもの。もしそなたが改宗しようと言うなら、これをやろう」と言えば、浄土僧も「この数珠もかの法然上人からわけあって、ここにたどり着いたものである、そなたが改宗するならば、これをやろう」と言うが、二人とも

「(〃*`Д´)ケッ、そんなもんいらんわっ」 とまあ、この調子。

ちょっと小意地の悪い浄土僧は自分の持っている数珠をグルグルと法華僧の持っている笠になすりつける。
違う宗派の数珠で自分の笠を撫で回されては気分も悪い。
法華僧「ヽ(`Д´)ノやめれーっ!」とばかりに激怒。

お互いにいかに自分の宗派が善いものであるかと言うことを熱弁するも、相容れることが出来ない。

不意を付いて、法華僧は浄土僧をまいて、一人宿屋に一晩泊めてもらうために入るが、浄土僧はめぼしを付けて宿屋に入る。

宿屋には「ここに出家の者が入りませんでしたかのー?連れじゃから同じ部屋に入れてくれ」と言って、まんまと同室へ転がり込む。

びっくりしたのは法華僧。
「なんでこんなとこまで着いてくるんじゃーっ」

あっけらかんとしている浄土僧。
「連れじゃもの~♪」

已む無く同じ部屋に宿を取り、一夜を過ごすことになった二人。
そこで 宗論 しゅうろん でもしよう、ということになる。
宗論とは、宗派間の論争・法論(教義問答)のこと。

法華僧は
五十展転随喜の功徳 ごじゅうてんてんずいきのくどく という法華経を説いて聞かせる。
それは 「随喜」 ずいき 「芋苗」 ずいき を掛詞して
「芋苗の汁を食えばその美味しさにこぼれた涙が芋茎の功徳である」などと間違った教えを説く。
芋苗 ずいき とは、芋の茎のことで食用。
※本来の"五十展転随喜の功徳"の意味は「法華経の感動を次々伝えると五十人目には莫大な功徳となるが、初めての感動はそれ以上と讃える」

浄土僧「は?なんのこっちゃさっぱりわからん」「そんな料理を食べたのがそんなに有難いのか」とけなす。

次に浄土僧が
一念弥陀仏即滅無量罪 いちねんみだぶつそくめつむりょうのざい という「 一遍上人語録 いっぺんしょうんごろく 」の話を説いて聞かせる。
こちらは 「無量罪」 むりょうのざい 無量の菜
に掛けて
「檀家の家に経を上げに行くと布施のほかに食事を頂く。事足ろうたお方(裕福な人)ならば種類豊富な料理が並ぶが、そうでない人は・・質素な料理しか振舞われない。そこでこれを念ずれば例え焼塩一品であっても多くのすばらしい菜に思える」とその教えをこちらもまた間違って説く。
※本来の「一念弥陀仏即滅無量罪」の意味は、一心に阿弥陀仏を信ずれば、ただちに無限の罪も消える、と讃える。

法華僧「は?そっちこそなにいってんの」
それは 有罪餓鬼 うざいがき (※膿血や残骸を食べる餓鬼)だと笑われる。

お互いその宗論に決着が付かず、諦めて眠りに付く。

翌朝、浄土僧が目を覚まし、勤めをしようと経を読み始めると法華僧も負けじと 勤行 ごんぎょう を始め、互いに段々と声が大きくなる。

浄土僧  うじゃらうじゃらうじゃらうじゃらうじゃら・・・・・・・

法華僧  うじゃうじゃらうじゃうじゃら・・・・・!! ←ヤケ

ついに踊念仏へとなり

浄土僧「なもうだーっ」

法華僧「れんげきょうーっ」

浄土僧「れんげきょーっ」

法華僧「なもうだーっ」


・・・・・・・・・浄土僧&法華僧「( ̄□ ̄;)!! あっ!」(間違えた)

あまりに夢中になりすぎて、念仏と題目を取り違える。
そのうち、二人は釈迦の教えに法華も弥陀も隔てはないと悟り仲直り。謡で締めくくる。




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