青藍(せいらん)な日々

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第42話 ノルディックフォークボート



フォークというのはみんなという意味です。元々、このヨットはみんなのヨットとして、車で言うならフォルクスワーゲンと同じコンセプトで建造されている物です。ヨットが豪華な高級艇ばかりなら、ほんの一部の貴族の遊びしかならなかった。でも、このヨットが誰もがヨットの楽しさを味わえるようにと、戦前に企画され、当初はスウェーデンで建造開始されたものです。それが、ヨーロッパで定着し、やがて、アメリカ、カナダ、オーストラリア等々に広がったのです。当時は木造で建造され、現在では同じデザインでFRPで建造されています。そのことによってさらに広がりを現在でも見せている。

このヨットの仕様を見ますと、標準装備では、一般的に日本人が求める装備が殆ど無い。みんなオプション扱いです。でも、詳細を見るとセーリングに必要な物は全部標準で、このままセールアウェイ。しかも、使われている備品は常にストックされており、ボルト1本から即座に入手可能なのです。自分のヨットが30年前に建造されていようが、今年のモデルだろうが、ちゃんと揃っている。

オプションで何でも揃える事はできる。しかし、殆どが標準装備で乗るというのが一般的なのです。これは、いかにヨットが身近なものに浸透しているかを伺い知ることができる。もっと身近に感じれば海もヨットも、自然も爽快感も、全て自分の隣にあるという事です。この事を彼らは良く知っている。だから、気楽に楽しめるのです。自転車でサイクリングに行くのと何ら変わりない身近さで、セーリングに行ける。電子レンジも無ければ、温水もない、でもクラシックな美しい姿で、安全性が高く、必要な物は全てある。

私が、造船所に問い合わせする度に、何でそんなものが必要なのか?と聞かれる。どこの国も最初はそう思う。でも、きっと解るはずだ。と言われます。フォークボートはみんなのヨットです。自分がその気になれば、実に簡単に、気軽に、最高のフィーリングを得る事ができる。スローライフという言葉がありますが、これからは、シンプルにそのエッセンスを楽しむ。こういうスタイルもあって良いのではないでしょうか。

お出かけですか? ええ、ちょっとそこまで。



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