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青藍(せいらん)な日々
第2話 キールと舵
ロングキールのヨットに乗ってみると解るが、船底の前から3分の1ぐらいの位置から、斜めに
キールが始まり、徐々に深くなって、それが最後端まで続く。横から風を受けた場合、普通の
フィンキールに比べると頭が風下に流されやすい。考えてみると簡単な事で、前側には横に
流される抵抗が少ないの対し、後側はキールで抵抗だらけ、バウが流される。フィンキール
にもラダーという抵抗はあるが、キールとラダーの間には無い。だから、ロングキールの方が
バウは風に流されやすい。
ロングキールは舵効きが悪いと言うが、キール全体を舵だと思えば、このキール部分は左右
に動くわけでは無いので、当然だろう。最後端部のみが左右に動く。プロペラの水流は前進
する時は舵に当る。だから前進は結構舵が効く。でも、後進の場合はプロペラの造った水流
は全部キールに当る。そうなると、ヨット自体の移動スピードで水流を造らないと舵は効かない
という事は相当距離をバックしていかないと舵は効かない事になる。狭いマリーナでなら、バッ
クは効かないのは当然な事。フィンキールの場合は舵とキールが離れているせいで、この間
は水が流れ、抵抗が少ないので、バックでも曲がりやすい。
ロングキールの場合はどうするかという事になるが、風を利用する事になる。比較的流され易
いバウの性質を利用して、風がある時は、バウを風下に流してやる。その方向によってはバック
で出ていく事になるが、ある程度の長さを移動する事になるので、今度は舵が効く。真っ直ぐ後
進して、バウが出口と反対側に流される状況なら、無理して、バウを出口に向けようと努力しな
い方が良い。そのまま流して、後進で出る方がやりやすい。出口に向かってバウが流れるなら
それは好都合となる。流れる間、エンジンを使って、艇が中央ぐらいに来るようにだけ気をつけ
ればいい。
ロングキールのヨットは船体が重いので、エンジンも通常のフィンキール艇よりちょっとパワーの
あるエンジンにしておきたい。場合によっては、舵をきった状態で、前進にスロットルを思いきり
ふかしてやると、前側の抵抗が無いだけに、今度はスーっとバウが切りあがる。それも、瞬間
的にエンジンを高回転にする、そして間をおかずにすぐにニュートラルに戻す。そうすると、プロ
ぺラがつくった大きな水流が舵に当る。これでバウは左右に移動する。しかも、艇自体は前進
する事無く、頭を左右に振れる。どのくらい効果的かはエンジンのパワーによる。つまり、瞬間
的にどの程度大量の水流を造る事ができるかにかかっている。そして、もちろん、エンジンさえ
大きければ良いというものでは無く、プロペラのジャストサイズというのが重要だ。おうおうにして
エンジンばかり注目してしまうが、プロペラが小さいケースが多い。プロペラが大きいと帆走時に
大きな抵抗となってしまう為、造船所ではプロペラを小さく作る傾向にあるように思う。ちょっと高い
がフェザリングプロペラは大きな水流を作れるし、帆走時には抵抗にはならない。優れものだ。
ロングキールでも慣れてしまった人は実にうまい。良く見ているとエンジンの使い方がうまい。
狭い場所でスロットルを大きく動かすのは勇気が要るものだが、うまい人は実に効果的にスロット
ルを大きく上げている。大事なことは、スロットルをだらだらと長く挙げておかない事だぐわっと上げ
て、さっと下げる。必要なら、もう一度やる。これをだらだらやるとドカンとぶつかってしまう。
ロングキールは難しいキールかと言うと、メリットもある。直進性の良さは抜群。舵をほっといても
ヨットは真っ直ぐ走ってくれる。これはその名の通り、ロングを走る時はありがたい。操船は実に
楽になる。ラダーポストはたいてい舵の最前部にある。という事は舵を曲げると、ラダーポストから
後側に水流が当るので、舵は水の抵抗で重い。でも、ロングを走る時はそういつも大きく舵を切って
ばかりはいないから、たいした問題でもない。フィンキール艇で、ラダーポストが舵の前側からやや
後ろ側へついているのがある。バランスラダーと言われるが、舵を切った時、水流はラダーポスト
の後側だけでなく、ポストの前側にもあたるので、力が殺し合い、舵は軽い。でも、舵の操作は
ロングキールより繊細です。もちろん舵効きも良い。ロングを走る時は多少ほっといても真っ直ぐ
走ってくれる方が楽なのです。
舵の形状も前後に長い方が舵効きが良くなる。舵に水流が当るのを想像してみればわかる。曲が
った舵に水流が長く当っていた方が舵は良く効く。ところが、反面、これが長すぎると抵抗が大きく
なり舵は重くなる。それにヒールした時の事を考えれば、ある程度深くないといけないし、下部が
細いとヒールした時に舵がきかなくなる。ヒールした時は舵を切ると舵は左右では無く、上下運動
も加わってくる。つまり、舵は左右の力が上下に取られてしまう。だから、ヒールした時にもある程度
の舵の面積をもたないと舵効きが非常に悪くなる。
レーサーのキールは前後に細長く、最下部におもりを設置している。細い事で舵を中心にヨットが
回りやすくなるので、舵効きは非常に良くなる。がしかし、横流れもふせぐ役目を考えるとキールを
深くして面積を取るし、深い位置の設置された錘はテコの原理でスタビリティーが良くなる。舵効き
が良いというのはメリットともとれるし、反面、いつも舵操作は微妙な操作が要求される。用途しだい
でメリットにもなるし、デメリットともなる。また、キールも揚力を生み出す。
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