イスティスの隠れ家

イスティスの隠れ家

Jan 16, 2008
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皆さんこんばんは。イスですヾ(゚ω゚)ノ゛

ここ数日で色々と厄介なトラブルが舞い込んできます。

おかげで昨日更新しようとした物語も、家に帰ってきて速攻でベットに倒れこんだせいでUPできなかったり。

あー・・・あたしに平穏という文字はないです。まぁ、社会人なら誰でもそうなんだろうけど。

じゃ、早速始めましょうか。

蒼き石の物語外伝
蒼き氷の女神

蒼き氷の女神 6『不穏の空気』

予想に反してそこにいたのは、十数人の「人」だった。
あたし達は背の高い切水草に潜んで様子を伺っている。
・・・あれって・・・ブリッチヘッドのシティシーフ?
畑に現れた連中の姿は、ブリッチヘッドで時折見かけるシティシーフたちだった。
彼らは青い装束を常に身に纏い、ブリッチヘッドの裏を牛耳っている者たちだ。
様々な悪事を働くと同時に、その存在が大きな抑止力となり外国との取引がよく行われるブリッチヘッドではある意味なくてはならない存在。
非常にまずい。
彼らを敵に回すという事は、つまりブリッチヘッドの裏を敵にまわすことだ。
アウグスタに近い都市でもあることから、それはあたしにとってかなり致命的な事だった。
だけど何故? 連中はなんでこんな田舎とも言える村に出てきている?
「・・・切水草の根が、目的ですね」
ヘディンさんが珍しく自分から話しかけてきた、が。
切水草の・・・根・・・あ!?
そうだ、失念してた。
切水草は滋養強壮となる薬の原材料。だけど、その根にはかなり依存性の高い「麻薬」に近い成分が含まれている。
ううん、実際に特殊な製法を使えば簡単に麻薬を作れるのだ。
よくよく考えれば、公社から依頼が来たのも、この切水草の事を知っていたためかもしれない。
でも、住人の話では魔物ということになっていたので公社も個人受注を許したのだろう。
だけど、人が相手・・・しかもシティシーフが相手であれば、本来この依頼は個人単位ではなくギルド単位で発注する依頼だ。
「厄介な依頼を受けちゃったな・・・」
どうする? 相手はブリッチヘッドの闇。
一人一人を相手にするのであれば、そう苦戦はしないが彼らの実力はグループになったときに発揮される。
確認できる数としては十人。こちらは二人。
ヘディンさんの腕が立つと考えても、これは分の悪い勝負かも。
・・・・よし。
「ヘディンさん。引くよ」
「いいのですか?」
「命があっての冒険者家業。これは明らかにオーバーワークだし、危険な状況だよ」
「分かりました」
こういう時、彼の身軽な動きは助かる。
ライネルたちだったら、突っ込むのだろうな。
内心苦笑しつつ、あたしたちはゆっくりと身を引いていく。
ふと、彼らから声が聞こえた。
「――――れを―――ブリッチ――ドへ――――――」
・・・嫌な・・・予感がした。とても、嫌な。
村へ戻ったら、急いで村長に知らせて、アウグスタへ戻ろう。
不吉な予感を胸に抱いたまま、あたしとヘディンさんはゆっくり・・・・静かに後退していった。


はっきり言えば、その予感は経験と知識から基づく直感とも言える。
ブリッチヘッド。おそらく彼らは切水草をあの街へ持っていくのだろう。
だが一つ疑問が浮かぶ。
シティシーフはそれなりに大規模な組織だ。わざわざ闇に紛れて動かずともどこかの村で栽培させることだって容易なはずだ。
なのに何故わざわざあんな村の農園に?
いくつか想像できるが、一番納得できるのは・・・
「動きづらい状況なのでしょう」
ここはハノブの酒場。
あたしたちはあの村の件から手を引いて、すでに一ヶ月が経っている。
あの後、村長には話をしておいたが、念のためアウグスタの教会や公社にもシティシーフの事は連絡している。
しかし、あたしはどうにも気になって仕方がなく、新たな依頼をこなしつつここでヘディンさんに話してみた。
彼は右手に持つティーカップを持ち、目を閉じつつ答えてくれた。
「動きづらい?」
「ええ・・・ザッハトルテをお願いします」
彼はとある宰相が菓子職人に作らせたと言われる伝統あるチョコレートケーキを注文。
「最近、ブリッチヘッドの議会から公社経由で大掛かりな依頼を各ギルド、教会関係に連絡しているという話があります」
「へぇ?」
それはちょっと意外。確かブリッチヘッドの議会って、シティシーフと共存の姿勢をとってなかったっけ?
彼は注文したザッハトルテにフォークを差し込みつつ、答える。
「ええ。確かにあの街はシティシーフと共存していました。しかし、最近そのシティシーフの頭領が交代したという話です」
「交代? 何か思想改革でもあったのかなぁ?」
「そこまでは分かりませんが・・・どうやら何かすれ違いのようなものがあったのは間違いないでしょう・・・すみません、パンドーロをお願いできますか?」
パーネ・デ・オーロ(黄金のパン)に由来される、これまた伝統のあるケーキを注文しつつ、彼は紅茶を飲む。
「でも、それが何で切水草を盗むことに繋がるのかな?」
「・・・噂が流れています」
噂? その疑問の顔色を彼は察したのだろう。注文したバンドーロをフォークで切り分けつつ答える。
「議会の議員の一人が、暗殺されたという噂です」
息を飲む。
暗殺・・・それは・・・つまり・・・
「まさか」
「ええ。彼らの仕業だと、議会は睨んだようです。その証拠に暗殺された議員はシティシーフ排斥派の中心人物でした」
それはあまりにも無謀な事だと思えた。
何故なら、そんな大物が急死したとなれば、まず真っ先に疑われるのはシティシーフ達のはずだ。
「公社側でも何か情報を掴んだのでしょうね・・・本腰をいれています」
彼は切り分けたケーキを「一人」で食べ続ける。
「でも、そんな状況で何故切水草を?」
「根にある麻薬の原材料は勿論ですが、おそらくポーションなどの薬品を作るためでしょうね・・・桜餅をいただけますか?」
桜色に色づけされた生地で小豆餡を包み、塩漬けした桜の葉で包んだ餅菓子を注文しつつ、彼は言葉を続ける。
「おそらく彼らは何か大きな戦いを起こすつもりなのでしょう。あくまで予想ですが、おそらく今ブリッチヘッドではポーションなどの薬品類の販売が規制されていると思います」
もしそうであれば、あの村で何故シティシーフたちがわざわざ危険を冒してまで切水草を手に入れようとしたのか、説明できる。
戦いとは、武器や食料は勿論。薬品なども重要な物資となるのだ。
薬品の規制などがあるならば尚更だ。おそらく彼らはその原材料を持ってどこかの薬剤師の元へ駆け込んだりしているのだろう。
「元からおかしいとは思っていました。何故彼らがあれほど大人数で切水草の採取を行っていたのか」
切水草の根だけが目的ならば、一人か二人で十分あたし達が見張っていた畑の切水草の根を採取できたらしい。
だが、彼らは十人以上で畑に来た。
しかも、彼らが去った後、その畑にあった切水草は根こそぎ奪われていた。
つまり、彼らは根の部分だけが目的ではなかったのだ。
「だけど、大胆すぎない?」
「もともと議会や公社、それに教会からもすでにマークされていたのです。今さらという気はしますが?」
ヘディンさんは桜餅をムシャムシャ食べつつ、珍しく皮肉を言う。
今さら・・・まぁ、確かにそれはそうだけど・・・
「それにしても、あそこまで派手に動くかなぁ・・・?」
「彼らのような組織は、もともと上下絶対の世界ですからね。上がYESと言えば、下はそれに従うのでしょう」
そんなものかな?
とはいえ、組織といわれるほど大きな物に所属したことがないあたしは確実な事が言えない。
というか、この人一体いつまで食べてんだ!? あと、酒場なのに何でこんなにお菓子揃ってるんだ!?
「さて・・・・食べたりない気もしますが・・・」
そこでヘディンさんは紅茶を皿に戻しつつ、立ち上がる。
「気付いていますか?」
「うん。準備できてる」
その瞬間だった。
まず窓が割れ、大量の矢が降り注いできた。
洒落にもならない攻撃。あたしはテーブルをひっくり返して盾にする。
トス、という軽いが矢が突き刺さる音が連続した。
次に聞こえた音は、ドアが開く音。こっちはドン!だ。
見ると、すでに店員やマスターはもういない。さすが荒くれ者の街ハノブ。慣れたもんだね。
「どうします?」
あたしの横でのんきに構えるヘディンさん。さて、どうしようかな。
今襲ってきている連中の錬度がどれだけか知らないけど、殺気も隠せないようだったらまだいける。
「逃げよっか」
「追いかけてきますよ?」
「さぁ? 逃げ切れればOKじゃない」
あたしはヘディンさんに強気の笑顔を見せ、動き出す。
「足止めお願いね」
その言葉に、彼は一瞬で答えてくれた。
『シルバーインパクト』
その言葉と同時に彼を中心に氷の大地が作られた。
って、わわ!? あたしも滑る!?
転げそうになった瞬間、あたしはヘディンさんに後ろの首根っこを掴まれてジャンプ。
そのままカウンターを飛び越える。彼は意外と力持ちだ。
気分はネコだねにゃーご。
と、敵は・・・顔面から思いっきりゴツンと倒れてる。正直、かなり痛そうだ。
でも問題はここからだ。
一瞬だけ感じる殺気。上だ。
あたしは銀弓を天井に構える。
『マジカルアロー』
現れた光の矢は凄まじい速度で天井裏にいるだろう暗殺者を貫く。
何かが倒れる音を聞き、あたしを掴んだヘディンさんはそのまま裏口を通り抜け街へ飛び出す。
おそらく『ヘイスト』を使っているのだろうけど、それを引いても早い早い。
あ、でも首痛い痛い!!
少し涙目になる。
追いかけてくる敵は・・・いる!?
あたし達よりも遥かに早い速度で建物を渡ってくる影。
「ヘディンさん。上!!」
「・・・『ダイヤモンドカノン』」
その魔術が発動すると共に、あたしの前に数十の先端が鋭く尖った氷塊が現れ、その影に向かって撃ち放たれる!!
だが、驚くことにその影はそれを見事に避けきってみせた。
しかし、そこが狙い目だ。
避けた影に狙いを合わせすでにマジカルアローをいくつも打ち込んでいる。
いくつかは避けられたが、それでも影の足に命中したことを確認してあたしは弓を下ろす。
「どこまで行きましょうか?」
「アウグスタまでお願い」
「分かりました」
あたしたちはそのままハノブの街を出る。いくつか仕事が残ってたけど、こうなってはどうにもならない。
ひとまず、今はアウグスタに戻ることが第一だ。
・・・でも、いつまであたしの首掴んで走るのかなぁ・・・
まさか・・・・本当にアウグスタまで走る気・・・・?
この後、あたしはしばらく首を動かすこともつらいほど、長時間ネコ状態になっていたのだった。
・・・にゃ~ご・・・

続く


と、いうことで6話目です。

全体的に見ると、どうやらこれってヘディンさんの外伝を超えちゃうほど話数ができちゃってるよーな・・・

あ、でも文字数を考えればどっこいどっこいかな? 移動が多いというのもありあますしね。

ってことで、お話はブリッチヘッドに向かって少しずつ動き出します。

一体どうなるやらね?

では次回、『アウグスタの夜』にて御座候。

それじゃね~ヾ(゚ω゚)ノ゛








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Last updated  Jan 16, 2008 10:51:34 PM
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