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しおしおのぺーじ
哀愁学園
下記は、TBS「笑って笑って60分」の『哀愁学園』のストーリーを、ずうとるびファンのしまこさんが台本風にまとめたものです。
☆しまこさん、情報ご提供ありがとうございました。
=====================================================================================================================================
哀愁学園 第1話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 (石原初音)
結城竜夫 (千葉 裕)
白楊学園・・・
4人の少年は甲子園出場を夢見ていた・・・
そして4人とも野球部のマネージャーである聖子を愛していた
(教室で机に暗い顔で座っている早乙女。大川・風巻・黒田が来る。)
大川 「早乙女!聖子がお前の兄と結婚する準備の為に、女子高に転校するって本当か!?」
早乙女「ほ・・・、ほんとうさ。聖子の父さんが、俺の父さんに莫大な借金をした為に・・・、聖子は・・・。」
風巻 「金で人間の心まで買えると思ってるのか!」
早乙女「風巻。」
(グローブを投げつけて立ち去る風巻)
(野球部部室。大川と聖子二人だけ。)
大川 「聖子・・・。君を連れて誰もいない所へ行ってしまいたいよ。」
(立ち去る大川と入れ違いに風巻が来る。)
風巻 「聖子!」
聖子 「風巻さん。」
風巻 「行くなよ・・・。早乙女の兄貴の処へなんか行くな。」
聖子 「女の子はね、16になれば結婚してもいいんですって。
結婚するのは、愛してするより愛されてするほうが幸せになれるの。」
風巻 「じゃぁ聖子お前・・・。」
聖子 「早乙女さんのお兄さんとの結婚、喜んでます。」
風巻 「お嫁に行けなくしてやる!」
聖子 「キャー!!」
(聖子を襲う風巻。早乙女・大川・黒田来る。)
黒田 「やめろ、風巻!」
早乙女「聖子・・・。俺の兄貴の・・・。」
黒田 「こんな事で甲子園に行けるか!!」(机を拳でたたく)
(みんなで歌を歌う。
「茜雲 空にたなびき おもぐごと きずるその日よ
おお我ら 武蔵野の風 さわやかに 世界をつつむ」)
ナレーション
~少女は鳥になりたいと思った。
心のない鳥に、そして翼を持つ鳥に。
そんな小鳥になって歌い続けて飛んで行きたい・・・
少女はそう思っていた。~
哀愁学園 第2話
※大川真紀は大川道夫の妹です。
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
(野球部部室。大川が駆け込んでくる。)
大川 「大変だ!聖子の結婚式が早められた!」
黒田 「なんだって!」
風巻 「どうしてまた・・・。」
大川 「早乙女の兄貴が、アメリカへ急に赴任することになったからだそうだ。」
風巻 「アメリカへ!」
早乙女「すまん、みんな。」
3人 「早乙女。」
(教室。聖子と黒田、二人だけ。)
黒田 「聖子。君は4人のうちでいったい誰が一番好きだったんだ?」
聖子 「言えないわ。みんな同じように好きだった事にしておいて。」
(放課後、クラブが終わった後。黒田と早乙女、たわいもない話をしながら部室へ。)
黒田 「聖子は・・・?」
大川 「さっき、どこかへ行ったよ。」
黒田 「どこかへ?」
(妙な胸騒ぎがして、飛び出す黒田。)
黒田 「聖子!」
風巻 「黒田!」
(3人、理由もわからず・・。)
風巻 「あいつどうなってんの?」
(教室へ行く黒田。)
黒田 「あっ!」
(聖子、睡眠薬を飲んで机に倒れこんでいる)
(部室へ戻る黒田)
黒田 「大変だ!聖子が・・・。」
哀愁学園 第3話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
※結婚式の日・・・
(ユニホームを着て、教室でチャッチボールをする大川・風巻・黒田)
風巻 「行くぞ~!」
3人 「それっ!」「はい!」「よし!」「それっ!」「いいぞ!」「それ!」
風巻 「どうしたんだ大川。」
大川 「早乙女が結婚式で忙しいのに、俺たちがこんな事をしてるなんて・・・。」
黒田 「そうだ!みんなで金集めて小さな花束でも買って持って行ってやろう!」
風巻 「それがいい。」
(結婚式場。花嫁控え室に入る早乙女。)
早乙女「聖子・・・。きれいだったよ。素敵だ、聖子。」
聖子 「早乙女さん。」
早乙女「?」
聖子 「お式も済んだわ。婚姻届も出した。そう、私は貴方の義姉さん。」
早乙女「もう、言うなよ。」
(3人、花束を持って来る)
3人 「聖子、おめでとう!」
聖子 「大川さん、風巻さん、黒田さん・・・。」
早乙女「お・・・お前ら・・・。」
(微笑む大川)
大川 「これ、小さいけど皆でお祝いに・・・。」
聖子 「あ・・、ありがとう。」
(涙ぐむ聖子)
早乙女「みんな、ありがとう。」
(全員、涙ぐむ)
※その夜・・・
(部室。大川・風巻、静かにイスに座っている。そこへ黒田が入ってくる)
黒田 「おい!買って来たよ。」
(机の上に品物を出す黒田。)
黒田 「それから・・・。」
(ビールを手にする黒田。)
風巻 「お前、お酒なんか・・・。」
黒田 「いいじゃないか、1杯くらい。」
大川 「ああ。」
風巻 「そ・・、そうだな。」
(ビールを注ぐ黒田。)
黒田 「じゃあ。」
大川 「乾杯なんかやめろ!」
(シーンと静まり返る部室。そこへ早乙女が駆け込んでくる。)
早乙女「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
黒田 「早乙女。」
大川 「披露宴で忙しいはずのお前がなぜ・・・。」
(早乙女、置いてあったコップを手に取り、一気に飲む。)
早乙女「うっ!ぺっ!」
風巻 「バカ!ジュースじゃないんだぞ!」
大川 「いったいどうしたんだ。」
早乙女「兄貴が・・・死んだ・・・」
大川 「お前、ほんとうか・・・。」
早乙女「ああ、披露宴の途中で脳の中の血管が切れて、それっきり・・・。」
黒田 「聖子、いったいどうなるんだ・・・。」
ナレーション
~少女は喪服であった。
そして、少年たちの心は・・・、
その色よりももっと暗かった~
哀愁学園 第4話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
~淳の兄の急死で事態は一変し、また以前のような4人と聖子の生活が戻るかに見えたが、
それぞれの心に刻まれた傷は、そうたやすくは癒えなかった。それは・・・・~
(野球部合宿所。草原のログハウス。)
風巻 「き・・・汚ねぇよな、金持ちってのは。汚ねぇ!」
(道具を投げ捨てて飛び出す風巻)
黒田 「おい!」
大川 「風巻!」
(走り去る風巻を見ている聖子。そこに早乙女来る。)
聖子 「早乙女さん。」
早乙女「聖子・・・。断ってくれ。」
聖子 「え・・・?」
早乙女「お前との結婚の事は、断ってくれ。」
聖子 「そんな・・・。」
早乙女「借金のために結婚するなんて、それも兄貴の代わりに俺と・・・。」
聖子 「私はそんな事気にしていません。」
早乙女「でも・・・。」
聖子 「むしろ、喜んでると言った方が正しいかもしれません。」
早乙女「俺は聖子をもう愛さない。ナイト・・・聖子の騎士になる。」
聖子 「えっ。」
早乙女「騎士は姫を守るために、いつも姫の傍にいる。それだけで幸せだ。」
(早乙女、ログハウスに入り無言で部屋へ・・)
黒田 「早乙女。」
大川 「おい!」
(表にたたずむ聖子。風巻、戻ってくる。)
聖子 「風巻さん。」
風巻 「聖子。早乙女との事は断れ!断ってくれ。」
(窓の外で話をする二人に気づく黒田・大川)
風巻 「聖子、好きだ。」
(聖子を抱き寄せる風巻。)
(窓の外を気にする黒田・大川)
早乙女「お前ら何やってんだ?」
黒田 「べ・・別に。」
大川 「何でもないよ。」
※次の日・・・お茶会が開かれた・・・
(お茶を点てる聖子。ヒソヒソと話をする黒田・大川)
黒田 「いてぇー、足がしびれちゃったよ。」
大川 「ばか、静かにしてろよ。」
聖子 「どうぞ。」
大川 「あ、どうも・・・。」
(静かに口に含む大川)
大川 「ウ・・、ペッペッ。苦い。」
聖子 「クスッ。」
黒田 「どれ。」
(順番に器を回して飲む)
黒田 「苦いや。」
風巻 「にげ~。」
早乙女「おぇ。」
聖子 「クスクス。」
(久しぶりに大笑いする5人。)
(外に出る風巻・早乙女)
早乙女「風巻。」
風巻 「・・・。」
早乙女「俺は、聖子の騎士になる事にした。」
風巻 「・・・。」
早乙女「姫を、聖子を守る騎士に・・・・。」
風巻 「よし、俺も聖子の騎士になろう。」
早乙女「なんだって!」
風巻 「聖子が、道夫か俊也を選ぶにしても、聖子を守っていこう。」
早乙女「よし。」
(手を握って誓い合う二人。)
(ログハウスの中。一人座る聖子。)
聖子 「野球部に戻りたい・・・。」
(階段を下りる人影)
早乙女「戻れよ。戻るんだ聖子。」
聖子 「早乙女さん。」
大川 「早乙女、それじゃぁ風巻が・・・。」
早乙女「大川・・・。」
風巻 「俺の事なら心配しないでくれ。」
黒田 「風巻。」
大川 「でも・・・。」
風巻 「俺と早乙女は聖子の騎士になったんだ。」
黒田 「え・・・。」
風巻 「だから・・・。」
大川 「帰れ。帰るんだ、聖子!」
聖子 「ウ・・・。」(涙ぐむ聖子。)
早乙女「やめろ!」
大川 「でも・・・。」
早乙女「いいんだよ、俺と風巻のことなら。騎士は、姫君の傍にいるものだからな。」
大川 「・・・。」
早乙女「それより次の栄光学園との試合の事を考えろ。」
大川 「ああ。」
4人 「聖子、がんばってくれよ!」
聖子 「はい。」
※数日後
聖子 「がんばってね、今日の試合。」
早乙女「あぁ、がんばるがんばる。」
(黒田が駆け込んでくる)
黒田 「たいへんだ!」
風巻 「オイ、どうしたんだよ。」
黒田 「大川が栄光学園の番長グループに襲われたんだ!」
早乙女「なにぃ。」
黒田 「それで、崖から突き落とされて・・・。」
聖子 「大川さん、どうなったの!?」
(病院の廊下。祈る4人。)
早乙女「大川、大丈夫か。」
風巻 「大川。」
黒田 「・・・。」
聖子 「大川さん、お願い。また、あの元気な姿を見せてください。」
ナレーション
~初夏であった。夏の香りがすぐそこまで漂いはじめていた。しかし少年たちの心は、夏の喜びとは程遠かった。~
哀愁学園 第5話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
(大川病室入り口。看護婦さんが部屋から出てくる。)
黒田 「あの・・・、大川どうなんでしょうか?」
看護婦「明日の朝になったら目が覚めますよ。」
黒田 「じゃあ、助かるんですね。」
早乙女「では、あの、看護婦さん、いつごろ練習やってもいいんですか?」
風巻 「また打てるんでしょうねぇ。」
黒田 「こいつファーストなんですよ。ジャンプしたり走ったり出来ますね?」
看護婦「ま、完全に治れば大丈夫でしょう。」
早乙女「いや、だからいつごろ・・・。」
風巻 「もうすぐ地区予選なんですよ。のんびりした事言ってられないんですよ。」
(病室へ入る3人。)
黒田 「大川、お前しっかりしろよ。」
早乙女「大川、お前目開けろよ。」
風巻 「大川!」
3人 「大川!」「大川!」「大川!」
看護婦「静かにしてください!
さぁ、もういいでしょ。出てってください。さぁ、出てってください。」
早乙女「大川、お前元気出せよ。」
風巻 「大川、また来るからな。」
黒田 「大川。」
看護婦「さ、出てってください。」
(部屋から追い出された3人。)
黒田 「くそー、栄光学園のやつら。」
早乙女「あいつらな、実力がないから番長なんか使いやがってよ。」
風巻 「汚ねぇよ!くそー、ぶっ飛ばしてやる!」
黒田 「お前、どこ行くんだよ。」
風巻 「決まってるじゃないか、栄光学園に殴りこみに行くんだよ!」
黒田 「やめろ、そんな事!」
風巻 「何言ってんだ!悔しくないのか!」
黒田 「俺だって悔しいさ!だけど!」
早乙女「だけどな!お前が行ったってな、お前があっちへ殴りこんだってな、大川の怪我は治んないんだぞ。」
黒田 「そうだ、それよりな、今日の試合で栄光学園をコテンパンに殴りつけてやるんだ。」
早乙女「よーし!大川の弔い合戦だよ!」
聖子 「アーーーー、アーン、アーン。大川さん。」
(泣きながら走り去る聖子。)
黒田 「聖子!」
(病室から看護婦出てくる。部屋に札を下げる。)
3人 「面会謝絶!!」
風巻 「くそー!こうなったら栄光学園に負けられねぇぞ!」
早乙女「チキショー!メッタメタにしてやる!」
黒田 「チキショー!」
(教室。大川の机に座る聖子。)
聖子 「大川さんの机、大川さんの椅子。早く治って。一日も早く、また座って。」
(机に頬を付けていとおしむ聖子。それを見た黒田が教室を飛び出す。部室へ追いかける聖子。)
聖子 「黒田さん。」
黒田 「勘弁してくれ、聖子。許してくれ、大川!俺は・・・、俺はさっきの君の姿・・・、このまま大川が治らなければいいと思ってたんだ。」
聖子 「黒田さん。」
黒田 「このまま治らなければ、君は俺一人のもんだ。俺は、俺は悪いやつなんだ。殴ってくれ、聖子。」
(部室の外へ出る聖子。)
聖子 「星が出てるわ。」
(黒田も外へ出る。)
聖子 「いつかみんなで、『甲子園の星になろ』って言ってた事があったわね。光り輝く甲子園の星のつもりでプレイしよって。」
黒田 「聖子・・・。」
聖子 「私、忘れない。この言葉、絶対に忘れないわ。」
哀愁学園 第6話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
(大川の病室。花瓶に花を生ける聖子。大川に寄り添い居眠り・・・。)
大川 「聖子・・・。」
(手を握り見つめあう二人。)
ナレーション
~少年は少女に、夏の香りを嗅いだように思った。そして少女は、少年の瞳に夏の光を見ていた。~
~愛があった。初夏の風の中に愛がにえった。それは、芽生えたばかりの若葉のように小さく幼い愛であった。~
聖子 「早く元気になってください。野球部の為に。そして、私の為に。」
(朝を待ちきれなかったかのように、黒田病室に来る。)
黒田 「大川!」
大川 「黒田・・・。」
(手を握り合ったままの二人。黒田、静かに去る。)
大川 「黒田!」
(追いかけようとする大川を制止する聖子。)
大川 「聖子・・・。」
聖子 「大川さん。」
(聖子、立ち上がり背を向けて・・・。)
聖子 「いいの、これで。だって、私・・・。」
(振り向き笑顔で。)
聖子 「大川さんが、好き。」
(笑顔に頬染め見とれる大川。)
(部室。)
黒田 「トレーニングやろうぜ。二人とも着替えて来いよ。」
風巻 「黒田・・・。」
早乙女「どうしたんだい?」
黒田 「俺はなぁ、大川にだけは負けたくねぇんだよ!」
風巻 「どうしたんだ、いったい!」
早乙女「おい黒田、お前それはどういうことなんだ。」
黒田 「あいつにいつまでも4番打たしとく事ねぇんだよ!俺が打つ!!なぁ、風巻、早乙女、やらしてくれ。」
風巻 「黒田、落ち着けよ。」
早乙女「お前、いったいどうしたんだい。」
黒田 「頼むよ、俺の言うこと聞いてくれ、な。」
風巻 「しょうがねぇなぁ。早乙女、やるか。」
早乙女「ああ、ま、練習して損って事ないからな。よし、じゃあやろう。行こう!」
(聖子、部室に入ってくる。)
早乙女「ああ、聖子。急に黒田がな、バッティングの練習したくなったんだって。」
風巻 「こいつ何を思ったか、大川より打撃が強くなりたいんだ・・・」
(風巻の言葉をかき消すように)
黒田 「やめろ!練習なんか止めだ!」
早乙女「おい!」
(ディスコで踊る人々。カウンターで一人酒を飲む黒田。)
聖子 「黒田さん!」
不良1「聖子じゃねぇか!」
不良2「来いよ。」
聖子 「いや!離して!」
不良 「へへへ。」
聖子 「キャー!やめて!」
黒田 「・・・・・。」
(大川の病室。見舞う早乙女・風巻。)
早乙女「ふーん。聖子、お前の事好きだったのか。」
大川 「すまん。」
早乙女「謝るやつがいるかよ。」
大川 「だけど・・・。お前も風巻も聖子を・・・。」
早乙女「風巻も俺もな、聖子の騎士だぞ。大丈夫だよ。黒田もそのうちわかってくれるよ、な。」
看護婦「早乙女さんって人います!」
早乙女「はい、あの、僕ですが。」
看護婦「佐原聖子って人から電話なんですけど。」
大川 「聖子が・・・。」
看護婦「すぐ来てくださいね。なんだかずいぶん慌ててるみたいでしたわ・・・。お願いします。」
風巻 「早乙女!」
早乙女「聖子がいったい何だろう!」
ナレーション
~少女は何を告げようとしているのだろうか。一瞬・・・。
若葉の香りの中に漂う野獣の匂いを少年たちは嗅ぎ取っていた。~
哀愁学園 第7話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
(病院の電話に出る早乙女)
早乙女「もしもし俺だよ。」
聖子 「早乙女さん!すぐ来て、アーーー助けて!」
早乙女「おい聖子!聖子!聖子!」
(ディスコの中)
聖子 「いやぁー止めて!」
不良 「来いよ!」
聖子 「黒田さん、助けて!」
黒田 「・・・・・・。」
聖子 「助けて!黒田さん!」
(電話があった店に気づく3人)
早乙女「あの店だ!聖子!」
(店に向かう3人)
早乙女「聖子!」
聖子 「早乙女さん!」
(不良と戦う黒田に気づく)
早乙女「黒田・・・。俺たちも行こう!」
風巻 「よし!」
(不良との乱闘が始まる。「それ!」「わっ!」「えい!」
松葉杖の大川は、黒田に駆け寄る。)
大川 「黒田・・・。」
黒田 「大川・・・。」
聖子 「キャー!」
不良 「へへへ。」
4人 「聖子!」
不良 「お前の家は金持ちだったな。10万円持って来たら、聖子を放してやらぁ。」
早乙女「卑怯だぞ!」
大川 「聖子を放せ!」
不良 「うるさい!」
(松葉杖を蹴られ、倒れる大川。)
大川 「ウッ。」
聖子 「大川さん!」
結城 「うるせぇなぁ。酒がまずくなるぜ。気分治しに暴れさしてもらうぜ!」
不良 「ウッ!」
(不良を殴る結城)
聖子 「アッ・・・。」
(聖子をつかんでいた不良が倒れた弾みに、結城に倒れこむ聖子。)
大川 「聖子!」
結城 「白楊学園に転校してきた結城竜夫だ。野球部に入ってこの女をいただくぜ。今日の所は返してやる。」
聖子 「大川さん。」
大川 「聖子。」
(大川に駆け寄る聖子。早乙女・結城睨み合う。)
~次の日~
黒田 「退院おめでとう。」
大川 「ありがとう。」
黒田 「良かったな。」
(教室に結城入ってくる。)
大川 「お前は昨日の・・・。」
(聖子を抱き寄せる。)
聖子 「いやっ!」
早乙女「聖子に何をする!」
風巻 「よせ!」
(風巻、結城をつかむ。)
早乙女「聖子!」
結城 「離せ!」
結城 「俺も野球部に入れてもらうぜ。」
早乙女「断る!」
結城 「何!」
風巻 「野球はチームワークが必要だからな。」
結城 「それじゃぁ・・・。俺が別に野球部を作ろう。」
4人 「なんだって!」
結城 「チームワークより実力だってことをわからせてやる!後で後悔するなよ!」
哀愁学園 第8話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
鮫島[結城の手下]
黒田 「大変だ!」
大川 「どうかしたのか?」
黒田 「部員が、鮫島たちの第2野球部に暴力で脅かされて・・・。」
大川 「なんだって!卑怯な・・・。」
(部室に結城たちが入ってくる)
結城 「あきらめてお前たちも仲間に入ったらどうだ。」
早乙女「卑怯だぞ!暴力を使うなんて。」
結城 「『後悔するなよ』と言ったはずだぜ。おい、行くぞ!」
(出て行く結城たち)
風巻 「チキショー、あいつら・・・。」
(部員の名札を外す黒田)
風巻 「おい、またかよ。」
黒田 「フー、これで7人か。」
早乙女「また2人減ったよ。」
黒田 「とうとう俺たちだけか。」
(飛び出す大川)
黒田 「大川!」
(結城のいる教室に行く大川)
結城 「何か用かい!」
大川 「部員を返してほしい。」
(キャァーと悲鳴が聞こえる)
大川 「聖子!」
結城 「どうだ。お前も来いよ。」
聖子 「だめよ!大川さん、いけない!」
結城 「野球部は返してやる。その代わり・・・。聖子と引き換えにな。」
大川 「貴様・・・。」
結城 「悔しかったら自分の力で取り戻すんだな。第2野球部に入った方が身の為だぜ。」
(結城、教室を出て行きながら)
結城 「離してやれ。」
鮫島 「しかし・・・。」
結城 「離してやれ!」
(残された大川・聖子)
聖子 「大川さん。」
大川 「聖子、別れよう。」
聖子 「いけないわ。そんな事をしたら敗北を認めるだけだわ。」
大川 「しかし・・・。」
聖子 「相手の思う壺になってもいいの!」
大川 「わかった。すまない、聖子。」
ナレーション
~少女は遠い海鳴りを聞いていた。それは、近づく嵐を予感させて・・・・
少女の胸に重く深く響いていた~
哀愁学園 第9話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
鮫島[結城の手下]
(廊下を歩く黒田)
結城 「待ちな!」
黒田 「あ・・。」
結城 「第2野球部に入らないか。」
黒田 「誰が入るもんか!」
結城 「第2野球部にお前が入ったら、聖子を自由にしてやると言ってもか・・・。」
黒田 「本当か!」
結城 「信じなければそれでいいけどな。」
黒田 「・・・・・・。」
結城 「どうなんだ。」
(名札を外す黒田)
早乙女「何してるんだ、黒田。」
風巻 「お前、まさか・・・。」
黒田 「すまない。聖子の為なんだ、許してくれ。」
(出て行く黒田)
大川 「黒田!」
早乙女「よせ、大川!」
(追いかけようとする大川を止める早乙女)
早乙女「行かせてやれ。」
(廊下を歩く風巻・早乙女)
鮫島 「おい!お前らも第2野球部に入ったらどうだ。」
風巻 「いやだね。」
早乙女「断る!」
風巻 「お前らの言う事を聞くぐらいなら死んだ方がましだよ!」
鮫島 「言ったな!やっちまえ!」
(部室。聖子と大川)
大川 「・・・・。」
聖子 「大丈夫よ。まだ、正式の野球部とは認められてないんだから。」
(殴られてボロボロの早乙女・風巻が入ってくる)
大川 「早乙女!風巻!何があったんだ。」
風巻 「第2野球部に入れって言うから断ったんだ。そしたらこんなに・・・。」
(早乙女、結城の言葉を思い出す。『聖子と大川を助けたければ、俺たちの野球部に入るんだな。野球が続けられなくてもいいのか。』)
(風巻を呼び出す早乙女)
風巻 「話ってなんだよ。」
早乙女「第2野球部に入る。」
風巻 「お前・・・。」
早乙女「俺たちさえ犠牲になれば、大川と聖子は助かるんだ。」
(部室。大川に話をする早乙女・風巻。)
大川 「お前たちも行ってしまうのか。」
早乙女「すまない。だが、俺たちは野球がしたいからじゃない。お前と聖子の為に行くんだ。」
風巻 「聖子を幸せにしてやってくれよな。」
大川 「・・・・・。」
聖子 「とうとう私たち2人だけになってしまったのね。」
大川 「人数も揃ってるし、学校にも正式の野球部と認められたよ。」
聖子 「私がいけないのね!私がみんなを不幸にする!」
大川 「聖子・・・。君のせいじゃないよ。」
聖子 「大川さん。」
(部室を飛び出す聖子。結城の所へ行く。)
聖子 「貴方の物にして・・・。その代わり野球部を返してください。」
結城 「いいだろう。」
(聖子を引き寄せキスしようとする。目をつむり覚悟する聖子。)
結城 「お前のひたむきさに負けたよ。野球部はあんたに返すぜ。」
(雨の中、泣きながら校庭へ駆け出す聖子。そっと傘を差し出す大川。再び駆け出す。)
大川 「聖子!」
(追いかける大川。)
聖子 「寄らないで!私は汚れた女よ。貴方以外の男に身を任せようとした悪い女よ!」
大川 「もう何も言うな。この雨が・・・、雨が・・・、すべてを流してくれる。」
(聖子を抱き寄せる大川。見つめ合う2人。大川、聖子にキスをする。)
ナレーション
~初めてのくちずけであった。それは少年にとっても少女にとっても、生まれて初めての経験であった。
2人はお互いの愛が、もう引き返す事の出来ぬ地平にたっている事を確かめ合っていた~
哀愁学園 第10話
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
結城竜夫 (千葉 裕)
(セミの声。盛夏。)
(甲子園。応援の声。歓声。)
風巻 「一回戦で敗れるなんてついてねぇよな。」
黒田 「もう、野球ともお別れだっていうのにな。」
早乙女「いいじゃないか。甲子園の土がふめただけでも。」
風巻 「あー、暑いなぁ。」
真紀 「あらあら、みんなこれくらいでくたばってるの。それでよく野球が出来たわね。気分治しにスイカでもどうぞ。」
早乙女「ありがとう、真紀ちゃん。」
真紀 「兄さんは?」
黒田 「ああ、さっき聖子と散歩してくるって言って出かけたよ。」
風巻 「良かったな、聖子のやつ。」
早乙女「大川のやつ、上手くやってるな。」
(暗い顔の真紀。)
風巻 「幸せだよ、聖子は。」
早乙女「騎士なんてカッコいい事言ったけど、何もしてやれなかったもんな。」
真紀 「貴方たちは嘘つきよ!自分の心を偽ってるわ!」
早乙女「真紀ちゃん・・・。」
真紀 「兄さんに聖子さんを取られても平気なの!」
(大川・聖子戻って来る。)
大川 「やめないか、真紀!」
真紀 「兄さん。」
早乙女「そうだ。みんな山へ行かないか?」
風巻 「山?」
早乙女「山へ行って一人一人を見つめ直してこないか。」
3人 「行こう。」
大川 「しかしこれは、男だけの問題だ。聖子は来ないでくれ。」
聖子 「わかってます。」
(山登り当日。野球部部室。)
聖子 「みんな、買ってきたわ!」
風巻 「おい聖子。お前ほんとに来ないのか?」
早乙女「考え直せよ。な。」
聖子 「ええ、でも・・・。」
黒田 「来るな!」
早乙女「黒田。」
黒田 「来ないでくれ!」
(教室へ行く黒田。聖子、後を追う。)
聖子 「黒田さん。」
黒田 「すまん、聖子。」
聖子 「私、行こうとは思いません。」
(山を歩く4人。)
(部室に掛けられた絵を直す聖子。)
真紀 「どうしてみんなと行かなかったの。」
聖子 「真紀さん、あなたって意地悪ね。」
真紀 「そう、私は意地悪。」
聖子 「野球部のお別れ会を兼ねて、一人一人を見つめ直してこようということで山へ行ったのよ。だから男の人だけで行かせてあげたいの。」
真紀 「意気地なし!あなたは男の心を弄んでいるのよ。もっと自分に自信があったら行くべきだわ。」
聖子 「わかったわ。」
(山。降りしきる雨。山小屋の中。)
早乙女「ああ、ひどい雨になったなぁ。」
(山男が一人入ってくる。)
早乙女「やぁ、寒いですねぇ。さぁ、どうぞどうぞ。」
山男A「白楊学園の方ですね。さっきバスを降りる時に女の人が捜してましたよ。たしか・・・、佐原聖子とか言ってましたけど
・・・。まだ、お会いしてなかったんですか?」
大川 「聖子・・・。」
風巻 「きっと道に迷ったんだ。」
早乙女「捜しに行こう!」
山男A「ばらばらに行くんじゃない!」
4人 「聖子!」「聖子!」「聖子!」「聖子!」
哀愁学園 第11話 (最終回)
配役 佐原聖子 (関いずみ)
早乙女淳 (山田隆夫)
大川道夫 (江藤博利)
風巻 進 (新井康弘)
黒田俊也 (今村良樹)
大川真紀 ( )
(雨の中、捜し回る4人。大川、倒れている聖子を見つける。)
大川 「聖子!」
(抱き上げる大川。意識が戻る聖子。)
早乙女「聖子!」
大川 「早乙女。」
風巻 「黒田は?」
早乙女「小屋に戻ってるんじゃないか?」
大川 「大丈夫か?」
聖子 「ええ。」
(大川、聖子をおぶって山小屋へ)
早乙女「あれ?黒田は・・・。」
山男B「誰も来ませんでしたよ。どうかしたんですか?」
早乙女「おかしいなぁ。」
風巻 「あいつ・・・。」
大川 「捜そう!」
聖子 「私も!」
4人 「黒田!」「黒田!」「黒田!」
(雨の中、捜し回る4人。)
(ヒュー。ゴー。激しく吹く風の音。)
黒田 「聖子!」
「早乙女!大川!」(ゴホン、ゴホン。咳き込みながら)
「風巻・・・。」
ナレーション
~遭難・・・。
少女の為に少年の1人は
今、その命を危機にさらしていた~
黒田 「聖子・・・・・。せ・・・い・こ・・・。好きだ。好きだ・・・。好きだ。聖子・・・。ア・・・。」
(笑顔の聖子を思い浮かべながら、意識が遠のく黒田。)
4人 「黒田!」「黒田!」「黒田さん!」「黒田!」
(捜し続ける4人。倒れている黒田を見つける。)
3人 「黒田!!」
聖子 「黒田さん。」
4人 「黒田!」「黒田!」「黒田さん!」「黒田!」
(黒田に必死に呼びかける4人)
早乙女「おい!しっかりしろよ、黒田!」
大川 「黒田!」
早乙女「目開けろよ!黒田・・・・。」
(黒田の葬儀。ユニホーム姿の遺影の前には、バット・グローブ・ボール。)
早乙女「黒田、すまん。俺が『山へ行こう』と言った為に・・・。許してくれ。」
風巻 「黒田・・・。俺たちがもっと早く気づいていれば死なずにすんだのに。すまない。」
大川 「・・・・。黒田・・・・。何も言う事はない。ただ・・・。許してほしい。」
真紀 「黒田さん、ごめんなさい!私が聖子さんに嫉妬して、みんなをなじったのがいけなかったんだわ!
私が悪いのよ!」
聖子 「真紀さん、貴方のせいじゃないわ。私が山へ行ったのがいけなかったんだわ。
黒田さん。みんな私が悪いんです。私が・・・・。
黒田さん。この告別式が私と貴方の結婚式です。
私の為に死んでくれた貴方に、私が出来る恩返しは、これから一生、貴方を愛して生きる事だけです。
私、たった今、貴方の奥さんになります。」
(全員、涙ぐむ。)
聖子 「大川さん。大川さん、ごめんなさい。私、どうしても黒田さんに恩返しを・・・。」
大川 「もう、何も言うな。黒田は喜んでるよ。」
ナレーション
~愛とは若さということ。
愛とは哀しみを知ること。
そして、愛とは人間の激しさ・・・・。
学園でのあの青春は、もう二度と返らない・・・・~ 完
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