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1~15
物語の中の子供TOP
1.「フランダースの犬」(アニメ)
フランダースの犬のあらすじを簡単に紹介します。
主人公ネロ(8~10才)はベルギーの小さな村に、おじいさんとパトラッシュという犬と暮らしています。ネロにはアロアというガールフレンドがいますが、アロアの父は貧しいネロを快く思わず、アロアとの交際を禁じます。おじいさんを亡くし、さらに放火の疑いをかけられたネロ。仕事も失い、最後の希望である絵のコンクールに出品します。優勝すれば賞金と絵の勉強ができます。ところが落選。失意のネロは、教会へ。一番の望みだったルーベンスの絵を見ることができ、幸せな気持ちでパトラッシュとともに天国へ旅立ちます。
ネロについて
青い目が印象的な、とても素直で心優しい少年です。私の知る中では、完全なる「いい子」の一人です。ネロは自分にどんなに辛くあたる人にも誠意を持って接します。
ネロは家族や友達をとても大切にする子です。自分が苦しいときにも、他人を心配させたりしません。
おじいさんの言うことをいつも素直に聞き、パトラッシュをとてもかわいがります。アロアへの接し方はとても優しく、アロアが大好きなネロの気持ちが伝わってきます。
小さな体で辛い牛乳配達の仕事をこなし、家計を支えるネロ。さまざまな困難にあっても最後まで優しい心を失わず生きようとしたネロ。とてもけなげな子です。
アロアについて
アロアは富豪の娘。お花が大好きな、かわいい女の子です。とにかくネロのことが大好きでたまらないという子です。私はアロアのネロへの想いに、とても深い愛を感じます。子供だし、設定上キスしたり…なんてことは一切ありません。だからこそかもしれませんが、とても純粋な愛が切なく感じられるのです。物語最後でネロにおいていかれてしまったアロアがかわいそうでなりません。
ジョルジュ・ポール・アンドレについて(ネロの友達)
ジョルジュとポールは兄弟です。ジョルジュはネロの兄貴分で、いつもネロを励ましたり助けたりします。しっかりした子です。ネロに惜しみない友情をそそぎます。一見いたずらっ子っぽい雰囲気ですが、細かい気遣いもできる子です。この子も理想の友達キャラだと思います。
ポールはジョルジュの弟です。いつもジョルジュにくっついている甘えん坊さんです。とても小さい子なのに、ネロが辛いとき一緒に泣いてしまう…幼いながら人の気持ちが分かる子です。
アンドレは気の弱い子です。でも、ネロの優しさにふれてネロの味方になります。初めは性格上ネロを困らせることもありましたが、物語後半ではネロの心の支えとなりました。
2.「天使のカノン」シリーズ 倉本由布作 コバルト文庫(全9巻)
あらすじ
花音は中一の女の子。母を亡くし、離れていた父の元へ戻ります。けれどそこには新しい家庭が…。
幼なじみの男の子との再会、家族の絆、友達関係など、さまざまな問題をのりこえ成長していく花音。
シリーズ中、二人の幼なじみとの恋愛関係を中心に、大学生まで書かれています。みーくん、淳くん。どちらも好きな花音でしたが、中三の時とうとう淳くんを選びます。けれどみーくんのことが忘れられず、最後にはみーくんといっしょになるというお話です。
花音について
子供がテーマなので、シリーズ中の中学生時代を中心に語ります。
主人公花音は、とても女の子らしいことが好きな子です。チェックのリボン、お花のカーテン、甘いケーキetc..かわいいもの大好き、甘いもの大好き。ふつうの女の子です。
二人の幼なじみ、みーくんと淳くんに再会し、二人を好きになってしまう花音。悩んだ末に淳くんを選びます。その心の葛藤、決心。
淳くんを選んだことは正しいかどうかなんて、実際のところ誰にも分かりません。けれど、私なりの解釈ですが、花音は淳くんに恋しながらも、本当はみーくんを好きだったはず。幼さ故の考え方で、先に好きだと言ってくれた淳くんを選んでしまいました。それにより、その後の物語が急展開するのですが、私は二人の男の子の間で一生懸命悩んで過ごした中学生の花音が、とても愛おしいのです。
みーくんについて
みーくんは、とても優しい男の子。大好きな花音をあたたかく見守ります。けれど優しすぎて、親友の淳くんに遠慮してしまったのか、とうとう花音に告白できませんでした。(淳くんとつきあい始めて、初めて気持ちを打ち上げましたが…)頭もよくて、優等生タイプの優しい子です。
淳くんについて
淳くんは、照れ屋の男の子。花音が好きでも、ぶっきらぼうに接してしまいます。それが成長するにつれ、花音に自分の気持ちをアピールするように。不器用だけれど、まっすぐな男の子です。
3.『どーにかしたい!!』湖東美朋作 (マンガ)
あらすじ
主人公千明は高校生の女の子。小5の弟 優羽をジャニーズで活躍させることに人生をそそぐ。優羽のグループ「ホッパーズ」には千明の憧れの人が…!千明の恋、優羽の成長、ジャニーズの世界の物語です。
優羽くんについて
初登場小5から、中学生まで成長します。初めは、どうしようもなく泣き虫で弱虫くんです。姉に無理矢理ジャニーズに入れられます。けれど姉やジャニーズの仲間に支えられ、強くなっていくのです。
とっても優しくて、とってもかわいい子です。おさるのぬいぐるみをいつも持っていて、姉を「おねいちゃん」と呼びます。初めはいつもおどおどしているけれど、笑顔はとってもキュートです。
華やかだけれど裏では厳しいジャニーズの世界。優羽は何度も失敗しながら、泣きながら、それでも成長していくのです。だんだんと、プロへの自覚も持ち始めます。
一生懸命がんばるけなげな姿がよいです。物語後半、姉に「ぼく、カワイイはもうやめる。ぼくはもう中学生なんだからね!」と言う台詞に、成長した優羽とそれまでの頑張りに感動を覚えます。
4.「おしん」 橋田壽賀子作 (ドラマ)
あらすじ(少女時代)
時は明治、雪国の貧しい農家に暮らす幼い少女おしん。生活を支えるため奉公に出されます。辛い仕事に懸命に耐えるおしんでしたが、ある日盗人の疑いをかけられてしまいます。
とうとう逃げ出すおしんは、吹雪の中倒れ、山奥に住む男に助けられます。おしんを家へ送る途中、男は警察に銃殺されてしまいます。男は脱走兵だったのです。
おしんは新しい奉公先へ。苦難を乗り越え、いつしか奉公先の家族にとっておしんは大切な存在に。
そんなとき、実家の祖母が危篤。おしんが作った白いおかゆを食べて、亡くなります。おしんは決意します。もう村には戻らない。祖母のように働いても働いても貧しいだけの生き方はしたくない、と。
おしんは、とても強い子です。脱走兵の俊作あんちゃんは「おしんのしんは、辛抱のしん」と言うセリフがありますが、まさにその通りです。曲がったことが大嫌いで、大人に叱られても正しいと思うことは守り通す心を持っています。
また、とても優しい子です。初めて奉公に行くのをいやがっていたのに、母がお産を控えていることを気遣い、考えを改めるのです。奉公で辛くても、家族への手紙にはそんなことは一切書きません。
辛い時代を強さと優しさで生きていく、本当に強い子です。
おしんは、私が6才くらいの時初めてアニメで見て泣いた作品です。その時は、自分の境遇とあまりに違いすぎて、かわいそうでショックで泣きました。今もたまに見ます。昔と違って、「女性の生き方」という見方をしてしまいます。(作品ではおしんのおばあさん時代まで続くので)
大人のおしんもとてもすばらしいお話ですが、少女時代が強く印象に残ります。小さな子が辛い境遇に耐えるけなげなお話として、大好きな作品のひとつです。
ストーリー的には、なかなか母と会えない暮らしの中、母が奉公先にこっそり会いに来て、雪の夜に抱き合うところが好きです。
アニメの主題歌、小林綾子さんが歌う「ちいさな願い」は大好きです。ぜひCD化されてほしいです。
5.北の国から 倉本聰作 (ドラマ)
あらすじ(連続テレビドラマ)
小四の純は、母と離婚した父、妹の蛍とともに、東京から父の故郷北海道へ。自給自足に近い生活に初めはとまどう純。けれど自然や周りの人々とのふれあいにより、徐々に強くなる純。
ある日、母が亡くなります。悲しみにくれる純ですが、一年間の厳しい北海道での生活で、強く成長した自分に気づきます。
純について
初めは、典型的な東京っ子。口ばかり達者で、頭はいいが弱虫。けれど、自給自足の厳しい北海道での生活の中、さまざまな出来事を通し、強くなっていきます。
この物語は、時折純の独特の語りが入ります。印象的な例は、「でも、ボクには北海道は合わないと思われ…やはり東京が合っていると思われ…」です。ぼそぼそと、心の内でつぶやくように言います。私はこの語りが大好きです。たくさんの名台詞がありますが、一番印象に残ったのはなぜか上記のセリフです。二番目は、ラストの語りです。資料がないので、少し違うかもしれませんが…「母さん。辛いよ…。とっても悲しいよ…。でも、ボクたち、この一年でとっても強くなったんだ!」
蛍について
純の妹です。しっかりもので、お父さん子です。でも、お父さんを捨てたお母さんを許すことができず、意地を張り続けます。
そんな中で、とっても感動的なシーンがあります。有名なシーンです。お母さんが北海道に会いに来たとき、蛍は母に冷たく当たります。帰るときも見送りにもいきません。けれど、お母さんが電車に乗っていると、蛍が走って電車を追いかけるのです。泣きながら…。このシーン、大好きです。
テーマとはずれますが、大人になった蛍は不倫をしてある町で暮らします。父が会いに来たとき、初めは普通に別れるのですが、急に走って戻ってきて父に抱きついて泣きます。そのシーンもとてもじーんときます。
6.「千と千尋の神隠し」 宮崎駿監督 (アニメ映画)
あらすじ
10才の少女千尋は、両親とともに異世界へ迷い込みます。両親は豚にされ、千尋は温泉旅館で働くことに。仕事を通し、現代っ子で弱虫だった千尋は、たくましくなっていきます。両親を助けるため、異世界で出会った少年ハクを助けるため、千尋は奮闘します。すべて解決し、千尋は現実の世界へと帰っていくのです。
千尋について
初めは甘えん坊さんで弱かった千尋も、異世界でたくましくなっていきます。よく評論では、千尋は強くなったのではなく、もともと子供は強い力をそなえていて、それが引き出されたのだと言います。私もそんな気がします。
印象的な場面は、有名ですが、おにぎりを食べながら大粒の涙を流すところです。ハクの優しさを感じたのか、食べることで安心感を得たのか。子供らしくてほほえましいです。
千尋は美女でなく普通の女の子として設定されているそうですが、私はとてもかわいい子だと思います。場面をよく覚えていないのですが、笑顔で振り返って手を振るシーンは確か予告にもあり、いい表情だなぁと思います。
物語後半からクライマックスも良いです。姉銭婆の家で、泣きながらハクと両親を心配するシーン、ハクと空で手をつなぎ、うれし涙を流すシーン。どちらも感動的でした。
ハクについて
出来た男の子です。優しく頭もよさそう、美男子と、理想的な設定ですね。千尋に接するハクはあたたかくて、とても好きです。
正体には驚きました。
7.「ないしょのカウント5」 かわちゆかり作 (マンガ)
あらすじ
高校生の愛香と一聖は、研究者の作った薬を誤って飲んでしまいました。驚くと5才若返り、怒ると5才年をとるという、特異体質に!
子供になったり大人になったりしながら、二人は様々な体験をします。楽しいこと、困難なこと…二人で過ごした波瀾万丈の日々を通し、いつしか愛香と一聖はお互い大切な存在に。
ある日、一聖は事故のショックで薬の副作用がおこります。体がどんどん小さくなり、このままでは消えてしまいます。愛香は研究者の力で一年前の薬を飲む前日にタイムスリップし、薬を処分します。元の世界に帰ると、過去が変わって薬を飲まなかった一聖は、無事に普通の生活を送っていました。ところが、今までの出来事がすべてなかったことになってしまったため、一聖は愛香を覚えていません。悲しみに暮れる愛香でしたが、クリスマスに二人でとった写真を見た一聖は、愛香を思い出すのでした。
愛香について
愛香は薬のせいで、5才、10才、15才(本当の年齢)、20才と、いろいろな年齢に体が変化します。一聖にも言えることですが、なぜか身体の年齢が幼くなるほど、素直になる傾向があります。
子供の愛香は、とてもかわいいです。普段は意地を張っていても、子供になると一聖に抱きついたり甘えたり出来ます。小さな愛香が、女にだまされる一聖を救ったり、逆に助けられたりするシーンは良いです。普通の女の子らしい弱さもあるけれど、逆に強さ、優しさも併せ持っている子です。
一聖について
とってもかっこいい男の子ですが、性格は素直ではないです。愛香もそうですが、一聖は小さくなったとき素直になる傾向がより強いと思います。平気で手をにぎったり、抱いたりします。心は変わらないはずなのに、なぜ高校生に戻ると愛香に素直になれないのか、不思議です。大人になってしまうと、やはり周りの目もあるので子供のような振る舞いはできないのかもしれないですね。特に男の子は、無理にでも大人としての振る舞いをしなければならないのだと思います。だから、子供の姿であるときは、思い切り愛香に素直になれるのかもしれません。
5才の体で、怪我をしながら愛香を救うシーンが何度かありますが、とても感動的です。
この話は、心の中が大人なので、子供が当たり前に思うことに視点をあてているところが興味深いです。子供になった愛香や一聖が、つるつるのお肌や幼児体型に悲しんだり、レストランのテーブルが高かったり、万札を持っていて変な目で見られたり、犬においかけられて逃げ切れなかったり、手が小さくて泳げなかったり…。子供って結構大変なんだなぁと思います。
5才の体の二人が夜のデパートで遊ぶシーンは、無邪気でほほえましいです。
最後に、テーマとはずれますが、薬の副作用で小さくなっていく一聖への愛香のセリフ、「子供のまんまでも大人でもいい!! またふたりでいろんな冒険しよおよー!!」は、外見ではなく心から愛しているという気持ちをあらわしています。とても素敵なことです。
8.「ふしぎ遊戯」渡瀬悠宇作(マンガ)
あらすじ
主人公 美朱は、中三の女の子。ある日図書館で見つけた本の世界に入り込んでしまいます。美朱は物語の世界で、国を救うため仲間とともに様々な冒険をします。苦難の末、ついに本懐をとげた美朱。仲間の一人、愛する鬼宿といっしょになります。
張宿(ちりこ)について
美朱の仲間、朱雀七星士の一人、最年少13才の子供です。仲間にはそれぞれ能力があるのですが、張宿の能力は知能。知識で皆をアドバイスして活躍します。
弱点は、足の字が消えると能力がなくなってしまい、利発な性格から泣き虫な子に変わってしまいます。本人はそのことに、とてもコンプレックスを抱いています。(物語中ではそのギャップがたびたびおもしろく書かれていますが)
そんな張宿の最大の感動シーンは、やはり自らの命をかけて戦うところでしょう。足に字が消えているとき、張宿は敵の魂に体をのっとられてしまいます。張宿は、字がなくても朱雀七星士としての誇りを持ち、自らの命を絶つことで敵を倒します。とても立派な最期でした。
張宿は13才にしては外見がとても幼く、かわいいです。穏やかな、優しい子です。
9.家なき子 野島伸司企画 (ドラマ)
あらすじ
小六の少女すずは、貧乏暮らし。母は入院生活、父は働きません。
すずは母の手術代を稼ぐため、お金を盗むことを繰り返します。母のために父を放火犯にしたて、自ら家なき子となります。様々な家を転々とし、いじめに耐えながらも、いい人たちに巡り会えることもあります。
すずの努力もむなしく、ついに母はこの世を去ってしまいます。悲しみに暮れるすずでしたが、強く生きることを決意するのでした。
すずについて
安達祐実さんが子供時代演じたすずは、とてもかわいく、演技力にも驚かされました。
すずは、とても強い子です。母を助けたいという強い気持ちが、彼女をそうさせたのでしょう。本当はいい子なのに、手術代のためにお金を盗まなければならなかったのは、とても辛いことだったと思います。
また、すずは人間にとって大切なことを知っている子です。お金ばかりほしがる大人たちを、すずは理解できません。
最終回、担任の先生が金を手に入れ、残忍な性格に変わってしまいます。すずは言います。「お金を手に入れたら、心を売り飛ばさなくちゃいけないのかよ。だったら私は金なんかいらない」このセリフは物語の重要なテーマであると思います。
母のために懸命に努力するすずは、本当にけなげでした。
「家なき子」は、高視聴率でした。過激な場面の連続だったことも一つの原因だと思いますが、私はとにかく、すずが母のためにさまざまな苦難に耐えるという場面が感動的で、大好きなドラマでした。
10.「宮廷女官 チャングムの誓い」(韓国ドラマ)
あらすじ(少女時代)
昔の韓国のお話です。ミョンイは宮中で料理人として働いていました。ある日、無実の罪を着せられ毒を盛られます。九死に一生を得たミョンイは、手当をした男性と結婚します。訳ありの両親は追っ手から隠れ、村で暮らします。二人の間に生まれたのが、主人公チャングムです。
チャングムが6才(推定)の頃、ついに追っ手が! 父はとらえられ消息不明、母は矢で射られ命を落とします。母の遺言状には、宮中に入りチェゴ尚宮(宮中の偉い女官)になり、無念をはらしてほしいと書かれていました。
チャングムは、料理人カン・ドック一家で育てられることに。
数年後、チャングムはついに宮中に上がります。身分の低いチャングムには、様々な困難が降りかかります。けれど、母の行いを見てきたチャングムは、徐々に料理人としての才能を発揮していくのです。
運命の歯車で、ミョンイの親友、ハン尚宮がチャングムの師匠となりました。ハン尚宮のもと、厳しい修行の日々。
ある日、ハン尚宮に母をほめられたチャングムは、泣いてしまいます。ハン尚宮は言います。心が弱いようではチェゴ尚宮にはなれません、と。
チャングムは懸命に修行に励み、成長していきます。
チャングムについて
ストーリー中の年齢は、推定6才から始まり10才くらいまでだと思います。とてもかわいい、利発な子です。
役を演じている子供はとても演技が上手で、雑誌でも絶賛されていました。吹き替えの子も、とてもかわいらしくて上手です。
チャングムはよく泣くけれど、強い子です。どんな窮地におちいっても、決してあきらめません。
特に印象的なシーンは二つあります。
一つは、チャングムが女官見習いになるため試験を受けるまでの過程です。出入りしてはならないところに入ってしまったチャングムは、罰として水の入った壺を持ち、一晩中立っているようにいわれました。できなければ、試験は受けさせないというのです。チャングムは泣きながらも、やりとげました。どんなに辛かったろうと思います。母への遺言をかなえたいという思いが、チャングムを強くさせたのだと思います。
もう一つは、前記した、母をほめられて泣くシーンです。ハン尚宮は、修行として、毎日チャングムに水を持ってこさせました。普通の水、熱い湯、木の葉を浮かべた水…、いろいろ工夫してみても、ハン尚宮は認めてくれません。ある日チャングムはどうしてかたずねると、ハン尚宮はヒントを言います。チャングムは気づき、ハン尚宮に体の調子をたずね、病状にあった水を持ってくるのです。それが母の教えだと分かると、ハン尚宮はチャングムの母をほめます。その時、涙を流すチャングム。母が生きていれば、ほめられて笑顔になれたでしょう。悲しみを背負った幼いチャングムは、かわいそうでした。けれど涙の中には、悲しみだけでなく、母をほめてもらった喜びの涙も含まれていると思うのです。
チャングムの誓いは今も放送中です。大人になったチャングムは、相変わらず波瀾万丈の人生を送っています。回想シーンで時々現れる、子供時代のチャングム。とってもかわいいです。
11.「テニスの王子様」許斐剛作(アニメ)
あらすじ
青春学園(青学)に入学したリョーマは、青学テニス部に入部します。個性豊かな先輩たちとともに、全国制覇を目標に次々と大会を勝ち進みます。
全国大会を目前に控えたある日、リョーマの元に全米オープン出場の話が…! 迷った末、リョーマはアメリカへ。しかし青学の部長、手塚と決着をつけるため、日本へ一時帰国します。リョーマは未来へ突き進むため、手塚に全力でぶつかり、そして勝利します。
リョーマは、部員の心の中で「青学の柱」となり、アメリカへ!
リョーマについて
テニスが抜群にうまい、つり目の生意気な男の子(中一)です。口癖は「まだまだだね」 自信に満ちあふれています。
クールなリョーマですが、先輩たちには一目置いているようで、尊敬しているのが態度にあらわれています。また、ペットの猫カルピンをとてもかわいがるところや、寝顔がとても子供らしくて、そのギャップがなんだか好きです。
冷めた態度や言動がクールで好きです。けれど、その言葉の中にテニスへの真剣な思いが含まれているところも良いです。
試合での熱いリョーマもカッコいいです。
手塚に負けたままのリョーマが、決着をつけたいと何度もお願いするシーンも、テニスへの情熱が伝わってきますし、けなげです。
この子はとても泣くようなキャラではないと思いましたが、一回は泣いてほしいなぁと言う密かな願望を抱いていました。普段泣かないから、泣いたらとても感動しそうだなぁと。
最終回、最後の最後で泣いてくれました。私が想像した、悔し涙ではなかったです。けれど、先輩一人一人にお礼をいいながら、試合が終わって手塚部長と話しながら、涙をふかずにずっと流していました。リョーマらしい、さわやかな涙だなぁと思いました。最後も涙の笑顔で「一足先に待ってます」というリョーマは、とてもいい顔をしていました。
桜乃について
リョーマと同い年で、髪の長いおさげのかわいい女の子です。少しおとなしい感じの子ですが、リョーマが好きでいつも一途に応援しています。リョーマとの恋のからみがもう少しほしかったです。印象的なのは、リョーマの似顔絵を描いたテニスボールで練習する桜乃に、リョーマがこのボールもらってもいい? と言うところです。ちょうどリョーマがアメリカ行きを迷っていた時期であり、「懐かしくなって」と言うリョーマ。昔、同じように桜乃がこんな風に練習し、見かけたリョーマが桜乃に憎まれ口をたたいたのを思い出したのでしょうか。私も懐かしくて、しんみりしてしまいました。
リョーマのアメリカ行きについて一喜一憂する桜乃。淡い恋心ですが、その一途な気持ちはとても素敵です。
カチローについて
青学一年のテニス部員です。なぜかこの子が気になります。この子自体がというより、リョーマが普段先輩としか話さないので、同級生同士でのちょっとした会話がなんだか新鮮なのです。
印象的なのは、アニメオリジナルだと思われる、カチローが主役の話です。先輩と試合をすることになってしまったカチロー。リョーマに技を教えてもらうようたのむと「カチローにはまだ無理だよ」と返されます。セリフの内容はともかく、クールなリョーマが同級生をあだ名(本名? それでも下の名前)で呼んでいるのが、なんだかとってもうれしかったんです。自分はレギュラーだから、同じ一年でも相手にしない、そんなことを考えてる子でなくて良かったなーとリョーマに対し思う一方、呼ばれているカチローもレギュラーでなくてもリョーマと同じ一年生なんだなと、妙にうれしく安心しました。
テニス、上手になってほしいです。
青学の先輩たちについて
子供というにはちょっと抵抗があるのですが…。先輩あっての青学であり「テニスの王子様」のストーリーも成り立っているので、簡単ですが語らせていただきます。
手塚部長
みんな言っていますが、中学生とは思えません。監督みたいです。この人がいなければ青学を全国まで導くことができなかったでしょう。とても立派なお方です。
大石副部長
実はファンです。普段は暖かくて優しく、でも時に厳しく…副部長として最適な人だと思います。
不二先輩
穏やかな面と熱い面、二面性をもっています。そのギャップがたまりません。
菊丸先輩
かわいいです。甘えん坊さんタイプで、感情豊かです。アクロバティックなプレイ、カッコいいですね。
乾先輩
この人、おもしろいです。独特のジュース○○汁を作るのが最高です。
データばかり調べているふりをして、実はとても努力家です。
河村先輩
この人も、ラケット持って豹変するシーン楽しいです。
家のお寿司屋を継ぐため今しかテニスができない、という設定がなんだか寂しいです。(本人はそれでいいと思っているようです)
海堂先輩
プシューというセリフが印象的です。とても努力家で、尊敬します。青学一がんばっている人だと思います。
桃城先輩
リョーマと仲が良く、気さくな性格です。熱い正義感がある人だと思います。
最終回へむけて、リョーマに泣きながらアメリカへいくように言う桃先輩は、本当にリョーマのことを思ってるんだなと感激しました。
青学メンバー初め、個性豊かなキャラが大勢出演するこのお話は、楽しかったです。原作はまだ続いているようです。この先、先輩たちが卒業した後の話まで続くのかなぁと、とても気になります。
12.「母をたずねて三千里」(アニメ)
あらすじ
イタリアの少年マルコの母は、家計を助けるためアルゼンチンへ出稼ぎに行きます。ところがしばらくして、連絡が途絶えます。マルコは母を迎えに単身アルゼンチンへ。ところが母は、違う場所へ身を移していました。異国の地でたくさんの人に助けられながら、マルコは母を捜し続けます。苦労の末、ついに母の元へ。しかし母は病気でした。けれど母はマルコに会ったことで、元気を取り戻したのです。将来は医者になるとマルコは誓い、母とともに祖国イタリアへ帰ります。
マルコについて
マルコ(推定9歳)は、とても意志の強い子です。感情をかなり激しく出す子なので、泣くときは思い切り泣きます。けれど、頑張るときは、これでもかっていうほど頑張ります。
子供が異国の地で一人旅をするなんて、現実的には考えられません。母に会いたい強い気持ちが、大きな力となったのでしょう。
印象的な場面は、たくさんありますが、やはり下記のシーンでしょう。
マルコはただ乗りした汽車から途中で追い出され、町まで遠い遠い道を一人歩く羽目になります。どこまでも続く草原の中、歩き続けるマルコ。靴は壊れ、足の爪ははがれます。びっこをひきながら懸命に歩くマルコを吹雪がおそいます。母の夢を見ながら、マルコは倒れます。
この一連のシーンは旅の中でも一番苦難の場面であり、頑張るマルコがとてもけなげで感動します。
フィオリーナについて
旅芸人の娘です。イタリアでマルコと出会い、旅の途中でも再会します。フィオリーナ(年齢不明 マルコより少し年上と思われます)は、とても優しい子です。けれど、おとなしく、自信のないおどおどした子でした。それは、家族が立派な旅芸人であるのに対し、芸が下手な自分への劣等感からでした。けれどマルコと出会い、フィオリーナは少しずつ自信をつけていきます。人との出会いは、時に自分を成長させるのですね。
13.「天使にさよなら」リー・ホール原作(映画)
あらすじ
ジミーは、11歳の少年。父、母、祖父と四人暮らしです。
幼い頃ジミーは父に抱き上げられ、空高く放り上げられました。それは父との幸せな思い出でした。今や父は病におかされ精神的に荒れていました。それは家族中に影響を与えていました。
ジミーは、昔父に放り上げられ空を飛んだみたいに、本当に空が飛べるようになりたいと思いました。
ある日天使ガブリエルが現れ、ジミーを天使見習いとしました。ジミーは本当の天使になれるよう懸命に努力しましたが、父や母を逆に落胆させてしまうことになってしまいました。
やがて病気が進行した父は入院し、ジミーは母から父は余命わずかであることを知らされます。
父の見舞いに行ったジミーは、幼い頃抱き上げられたあの日の思い出を語る父をうれしく思います。それを、覚えていてくれたことに…。そして父は天国へ召されます。
ラスト、ガブリエルが夢の世界へ導きます。家族が見守る中、ジミーは幼い頃と同じように父に抱き上げられ、空高く放られます。ジミーはそのまま、空を飛んでいくのでした。
ジミーについて
不器用ながらも一途な少年です。幼い頃の父との幸せな思い出を胸に生きています。現在の父はもうそんなことは覚えてないだろうと思いこみ、父を嫌おうともします。けれどラスト、父がそれを覚えていてくれたことで、ジミーの父への想いがあふれだすのです。
天使見習いから本物の天使に昇格するために、頑張る姿もけなげです。おぼれる少年を救ったり、鳥の羽を集め天使の服をつくり、空を飛ぶ練習をしたり…。
本当の天使にはなれなかったけれど、「愛を求める純粋な心の天使」だと思いました。
14.『東京少年物語』羅川真里茂作(マンガ)
あらすじ
私立中学に合格した吉蔵でしたが、両親が離婚したため、東京から母の実家へ。東北の田舎暮らしにとまどう吉蔵でしたが、友人や自然の影響を受け、しだいに生活になじんでいきます。
中一の夏休み、吉蔵はパパのいる東京へ。そこにはすでに新しい家族がありました。家族は吉蔵と暮らすことを望みましたが、一人になるママを気遣い吉蔵は東北へ戻ります。
いとこの鷹は、同級生であり、東北での一番の友達。鷹の母は病気で入院しています。
吉蔵たちと夏祭りに行く鷹。花火を見た鷹は、急に悪い予感がして病院へ。「我は海の子」を歌う鷹に、涙を流す母。次の日、鷹の母は他界しました。
一人山へ行く鷹を追いかける吉蔵。泣いていいよと言う吉蔵に、だいじょうぶだからと、一人先へ行く鷹。同じ年なのに…同じ男なのに…と思いながらも、涙が止まらない吉蔵。一方「我は海の子」を歌いながら山道をすすむ鷹。昨日母にあげた綿菓子がしぼんでいたのを思いだし、気がつくと涙がこぼれていました。堰を切ったように、鷹は一人号泣します。
夕方戻ってきた鷹は、吉蔵と二人、鷹の家に戻ります。長い長い影を連れながら。たった一度だけ訪れた、13歳の夏でした。
吉蔵について
吉蔵(中一)は、歴史好きの頭のいい少年で、有名な私立中学に合格していました。けれど両親の離婚で東北へもどります。なれない田舎暮らしに、泣いたりごねたり、わがままな吉蔵でしたが、しだいに環境になじんでいきます。
わがままで理屈っぽい子が、人を思いやる優しい子へと成長していきます。
鷹について
吉蔵とは対照的な田舎っ子です。吉蔵にとって、初めての辛い田舎暮らしを助けてくれた良いいとこであり友達です。強くたくましい鷹も、病気の母にだけは優しく接します。親思いの、まっすぐないい子です。
『東京少年物語』は、『赤ちゃんと僕』(マンガ)と同じ原作者です。どちらの作品も、少年の心情がすごく丁寧に書かれています。泣かせるツボを書くのもうまい作者様だと思います。
15.「MAJOR-メジャー」満田拓也作(マンガ・アニメ)
あらすじ(少年時代)※アニメは少年時代で終了です。
5歳の少年吾郎は、野球が大好き。父はかつて一軍ピッチャーとして活躍していましたが、妻を亡くし、ヘルニアにかかり一軍半の選手となります。けれど吾郎は、父が一軍へ戻り、自分も強い選手になって、いつかいっしょに試合に出ることを夢見ています。
父の遠征で、一人暮らしの吾郎をいつも助けてくれるのは、保育園の桃子先生です。
けれどある日、父は肘を怪我してしまい、野球を続けることができなくなってしまいます。ショックの吾郎は、球団事務所へ父をやめさせないよう頼みます。そんな吾郎を見て、父はバッターとして再起しました。
新しい野球友達、寿也もでき、大好きな桃子先生と父は交際を始めます。父も一軍でバッターとして活躍し、心満たされる毎日。
そんなとき、父はメジャーリーグからやってきたギブソンのデッドボールをくらい、死んでしまいます。
吾郎は桃子先生に引き取られることに。父が死んだことで、もう野球はしたくないという吾郎に、寿也は野球をやめないでと言います。泣きながら、キャッチボールをする二人…。
月日は流れ、吾郎は9歳になります。人数が足りない三船ドルフィンズの状況を知り、友達を集めてチームを完成させます。けれど三船の監督は吾郎の高い才能を評価し、一流の横浜リトルに入ることをすすめます。集めた仲間を裏切ることはできない吾郎でしたが、横浜リトルに寿也がいること、そして父がかつてここのチームにいた事を知り、吾郎の心は横浜リトルへ。
友達を裏切る行為を反対する桃子でしたが、吾郎は死んだ母なら自分の気持ちを分かってくれると言います。ショックの桃子は、かつて吾郎の父の親友であった茂野に相談します。その最中、桃子はストレスで倒れ病院へ。かけつける吾郎に、茂野は諭します。吾郎は桃子に、横浜リトルへ入団しないことを告げます。
厳しい夏合宿を終え、ついに大会へ。一回戦、二回戦となんとか勝ち進んでいきます。三回戦の相手は横浜リトル! 苦戦の中、肩を壊す吾郎。けれど仲間を思い、吾郎は最後まで投げ抜き、チームを勝利へと導きます。
肩の怪我で投球禁止の吾郎でしたが、次の試合へ向けてこっそり練習してしまいます。見かけた茂野は吾郎の頬を打ちます。その晩、茂野の手紙を読んだ吾郎。父の代わりに、長く野球を続けてくださいと書いてありました。吾郎は茂野に、自分を心配してくれたことに対して、泣きながら感謝の言葉を告げます。そして桃子と茂野は結婚。
やがて春。吾郎は新しい父、茂野の都合で転校します。誰にも告げずに。「さよなら」は、父が死んだときから、吾郎が一番嫌いな言葉だったからです。
吾郎について
5歳の吾郎は、少し生意気な面もあるものの、とても純粋に夢を追いかける野球少年です。5歳で一人暮らしをしている、とんでもなくしっかりした子です。また、野球で強くなるための努力をおしみません。
吾郎は薄幸の少年ですが、元気で明るい子です。けれどまだ5歳。本当はさみしかったり甘えたかったりするのです。5歳の吾郎の話は、本当にけなげで泣けるシーン満載です。
5歳で毎日一人、コンビニ弁当を買い、お風呂に入り、歯磨きをして、布団で眠るのです。それでも昼間は元気いっぱい、野球の練習に励みます。そんな吾郎の感動セリフ。(以下、セリフ全てうろ覚えですが…)
(桃子先生に)「ずっと一緒にいてよ…ぼくもう、ひとりでお風呂入ったりご飯食べたりするのやだよ…」
強がっていても、まだまだ子供な吾郎にほろりときます。
(父の亡骸の前で桃子先生に)「ボク、ぜんぜんさみしくないよ。だっておとさん言ってたもん。死んじゃった人は、天国に行くんだって。そこへ行けば、また会えるんだって。だから、少しのあいだだけ…さよなら、おとさん」
言葉とは裏腹に、涙を流しながら言う吾郎。(吾郎は両親を「おとさん」「おかさん」と呼んでいます)父の言葉は、母が死んだとき吾郎に言った言葉です。両親を失った吾郎のセリフ、切ないです。
そして物語は3年後、吾郎は9歳になります。9歳の吾郎は一見冷めた性格です。けれど本当は、熱い心を持っています。特に野球への情熱は変わりません。むしろ、強くなっているようです。
そんな彼の感動名シーン&名セリフです。
(横浜リトルへ入団する決心をした吾郎。ストレスで倒れた桃子へ)
「俺、今でもはっきり覚えてる。おとさんが、初めて母さんといっしょになりたいっていったときの言葉。(中略)おかさんもきっと許してくれるよねって。だから俺もおとさんに言うよ。これからは、母さんと一緒に、前だけを向いて生きていくよって。おとさんもきっと、許してくれるよね」
父がいた横浜リトルへの入団をあきらめ、仲間を選んだ吾郎が桃子に言うセリフです。病院の窓から夕日が差し込んで、じーんと来るシーンです。
横浜リトルとの試合シーン。肩をいためた吾郎をマウンドから下ろさせようとする茂野へのセリフ。
(選手一人一人の努力と活躍を語り)「この試合はそういう試合なんだ。だから俺だけにげるわけにはいかないんだ」
そしてゲーム最終回、ぼろぼろの体でヒットを打ち、倒れながら一周する吾郎。そして勝利!
「今日の空って、こんなに青かったんだ…」
勝利直後に、仰向けの吾郎がつぶやくセリフ。
その後、病院で投球禁止令をだされた吾郎ですが、こっそり練習。茂野に見つかり平手打ちされた吾郎は怒って帰りますが、その夜茂野へのセリフ。
「ごめん…さっきは殴られて生意気言ったけど、俺、本当は少しだけうれしかったんだ。だって、俺のこと本気で心配してくれる人なんて、もう母さん以外いないと思ってたから…」泣き出す吾郎。
「肩をこわすって分かってたけど、ここまできて優勝をあきらめるなんてくやしくて…チームのみんなをがっかりさせたくなくて…」
このセリフには、少年時代編でのテーマが集結されていると思います。家族、仲間、野球…9歳の吾郎にとって、大切な三つのものです。
そしてラスト、転校する吾郎に三船ドルフィンズの監督が、別れを言わなくていいのか聞きます。吾郎の答え。
「サヨナラは、おとさんが死んだときから、俺の一番嫌いな言葉だから」
誰にも告げずに転校していく吾郎。ラストシーンも切ないです。
9歳になって生意気ぶりはかなりましましたが、野球への情熱は人一倍。夢を真っ直ぐ追いかけるカッコいい子です。なにより、家族や仲間を大切にする、やさしい子です。
寿也について
5歳の寿也は、母に受験勉強を押しつけられていました。家にとじこもる、優しいけれど弱い性格の子でした。そんな寿也は吾郎に初めて野球の楽しさを教わるのです。そして強くなっていきます。吾郎が父の死により野球をやめると言ったとき、それをとどめたのは寿也でした。
「ボクは、野球をやめない。だから、吾郎くんも絶対野球をやめないで」
これは吾郎の人生を大きく変えた一言だと思います。
9歳になった寿也。このころには母も野球をすることに賛成し、寿也は横浜リトルへ入ります。吾郎が同じチームに入らなかったことを残念に思いますが、吾郎を責めたりしません。デッドボール恐怖症におちいった吾郎は、それを克服するために横浜リトルと試合がしたいと言います。それを自分のチームの監督に頼んだのも寿也です。とても優しい子です。
そんな彼ですが、野球への情熱は吾郎に負けていません。三船ドルフィンズ対横浜リトル戦。キャッチャーを務める寿也の横に立つ吾郎。話しかける吾郎に一言。
「うるさいな。(中略)まあもう、打たせやしないけどね」
マウンドに上がったら、敵同士。リトルリーグながら、さすが横浜リトル選手。プロ意識を持ったこのセリフ、普段の寿也からは考えられない言葉使いでしたが、カッコいいです。言葉通り、この場面は寿也のリードで吾郎を押さえます。
試合に負け、涙を流す寿也にも、もらい泣きしそうです。
彼は、野球のセンスも持ち、頭も良いです。吾郎と同じく優しい子ですが、それを素直に態度にあらわしているところは、吾郎と対照的です。
今後、原作(マンガ)では、吾郎の良き仲間として活躍するようです。
この話は、野球マンガです。迫真迫る試合シーンも見所です。けれど、それ以上に、家族や仲間との関係が丁寧にかかれている良作だと思います。セリフの言い回しもうまく、感服します。
家族、友達…大切なことがまっすぐにかかれている、とてもすばらしい作品です。
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