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NARUTO 10~13
マンガ撮影(何それ)をするナルトとサスケです。(サスナル・ギャグ)
注:サスナルです。要素はごく軽く、ギャグものですが、苦手な方はご遠慮ください。
『マンガ撮影~ナルトvsサスケ 終末の谷決戦編~』(NARUTO 10)
ここは終末の谷。ひげ面のマンガ監督は、ナルトとサスケにマンガの下書き原稿を渡し言った。
「今日は終末の谷決戦編を3シーン演じてもらう。分かっていると思うが、それにより原稿が上がり、週刊少年シャンプへ掲載されるのだ」
ナルトとサスケは、いつもの監督の話は聞き流し、下書き原稿に目を通した。
「オレってば、サスケに負けるのかよ。納得いかないってばよ……」
(……!! 長い撮影だったが、ついにきたぜ! 夢のシーンが!!!)
落ち込むナルトをよそに、サスケは心の中でガッツポーズを取った。けれどナルトの様子を見て、サスケは顔をしかめる。
(ナルトのヤツ、落ち込んでやがる……。まあいい。今日こそ目覚めさせてやる!)
サスケはニヤリと笑った。
「始めるぞ。二人とも準備して位置に着け」
ナルトとサスケは、軽く戦ってお互い体に傷を付けた。そしてサスケは崖にうずもれ、ナルトはサスケに覆い被さりサスケの首を腕で締め付けた。
~シーン1「オレの何が分かるんだってんだ!!!」
『初めから独りっきりだったてめーに!! オレの何が分かるんだってんだ!!! アア!!?』
サスケはセリフを叫んだ。
(うっ、顔が近いな。動揺を隠すのが辛いぜ……)
サスケは続きのセリフを言いながら、ナルトを派手に蹴飛ばすふりをしつつ、実はチャクラで軽く吹き飛ばした。ナルトは、考え込むような落ち込むような表情を演じる。
(うっ、その切なそうな表情、くるぜ……)
サスケはハァハァした。それがちょうど原稿の通りだったのは、サスケにとって都合が良かった。ナルトはセリフを続けた。
『…お前といるとき…』
ここで見つめ合う二人。
(くっ…長いなこのシーン。どっ、動悸が……。苦しいぜ。だがナイスシーンだ!)
サスケは苦しみと幸せのはざまで葛藤していたが、ふと思った。
(ここでナルトは「兄弟ってこんな感じかなぁ…」と言うんだ。チッ! なぜ「好きなヤツってこんな感じかなぁ…」じゃねぇんだ。くそっ……ナルトのヤツ、アドリブでも利かせろよ)
その時、ナルトはふと腕を組み、うーんとうなった。
「どうしたナルト」
監督が、いぶかしげに聞く。
「あのさぁ……。オレ、サスケのこと別に兄弟なんて思ってないってばよ。このセリフ、おかしくねー?」
(ナルト! やっと目覚めたか!! その通りだオレ達は……!!)
サスケは目を輝かせた。
「だってよ。サスケはオレの友達だろ。兄弟ってのはちょっと……」
「いいから、原稿通りにやれ」
監督の言葉で、撮影は再開された。
『兄弟ってこんな感じかなぁ…ってよ…』
『何でだぁーーー!!!!!!!!!!』
「サスケ。やり直し」
監督の言葉に、サスケはくやしそうにこぶしを叩きつけて崖を砕いた。
~シーン2「螺旋丸vs千鳥」~
(ついに来たぜ夢のシーン!!!)
ナルトの螺旋丸を千鳥で返しながら、サスケはご満悦だった。
(ナルトと手を……! ぎゅっと握れないのは残念だが、指をからめられる……!!)
サスケは猛烈に心臓をバクバクさせながら、ナルトにそっと手を差し伸べた。
「なにやってんだ? サスケ……」
螺旋丸を解いたナルトは、不思議そうにつぶやいた。
「何って、原稿通りだろう。ここでオレとお前は……」
(くそっ。照れて先が言えないぜ……)
サスケは、顔を赤らめないようにするのに必死だった。
「はいOK。あとは回想シーンだから、子役に交代だ」
にべもなく言う監督に、サスケはあせって原稿を取り出した。よく見ると、例のシーンの自分たちは子供時代に戻っている。浮かれていたサスケは、今までそこに気付かなかったのだ。
サスケは自分たちにそっくりな子役たちを、人知れず猛烈な嫉妬の目でにらみつけた。
~シーン3「ナルト…オレは…」~
(今度こそ正真正銘のおいしいシーンだ! ふふ…やってやるぜ)
サスケはあることをたくらんでいた。ナルトと顔をぎりぎりまで近づけるシーン。やることは、言うまでもない。
(あそこまで近づくんだ。ふとした拍子に少しだけ手を滑らして…ということにしておいて…)
あくまで自分は不可抗力だったという理由付けまで考えている。
(そうすればナルトも変に思わないだろう。いや、いっそのこと、ここでいきおいにのり告白……いや、しかし…)
それは撮影が終わってからにしようと、サスケは思った。
その時、地面に寝ていたナルトは、ふと目を開けた。
「サスケ、ちょっと間が長すぎねぇ? 死んだようにじっとしてるってのも、結構疲れるんだってばよ」
ナルトは、再び目を閉じてじっとした。
(よぉし行くぜ!)
サスケはついに本格軌道に乗りだした。
『ナルト…オレは…』
そこで作り物の雨が降り、サスケは顔を上げて空を見上げる。そして左腕にチャクラを込め、血管を浮き上がらせる。心の内はどうであれ、サスケもさすがはプロのマンガ俳優だ。痛そうに腕を押さえ、ナルトの前にひざまずく。さすがに血を吐くシーンは、あらかじめ口に含んでおいた偽物の血を吐き出す。そして……ナルトに顔を近づける。
(位置は完璧だ。よし……)
サスケは、胸の高鳴りを必死で抑え、ナルトの頭にそっとキスしようとした。
「……ひゃあ~~! サスケの息、くすぐったいってばよ」
ナルトは、急に我慢出来なくなったようにがばっと身を起こした。そう、サスケはあまりの興奮で、激しく息を乱していたのだ。
「バカ! 途中で起きるな! もう一度やり直すぞ」
「いや、もういい」
怒鳴るサスケを制したのは、監督だった。
「何? どういうことだ」
「今のシーンは、そんなに長い時間いらないからな。もうOKだ」
「やりぃ~終わったってばよ!」
うれしそうに飛び起きるナルトの横で、サスケは真剣にショックを受けていた。
(……くそっ! もう少しだったのに……!! だが、まあいい。所詮演技の世界だ)
サスケは立ち直ると、ナルトに声をかけた。
「ナルト……。お前にしてはなかなかいい演技だったな。褒美にオレが一楽のラーメンをおごって……」
サスケは言葉の途中で口をつぐんだ。ナルトが九尾のチャクラを出す勢いで、サスケをにらみつけていたからである。
「サスケ……こんなのただの演技だからな! 本当は……オレは……」
今度は今にも泣き出しそうなナルトに、サスケはドキンとした。
(まさかこいつ、オレが好きなどと言い出すのか……。いや、ありえん。いやけれど、今日のシーンでコイツは目覚め……)
「お前なんか嫌いだ!! バーカバーカ!!!」
怒鳴りつけるナルトにサスケは一瞬石化したが……。
(いや、こいつの意地っ張りはよくあることだ。嫌いは好きの裏返しとも言うしな。分かっているぞナルトお前の気持ちは……!)
サスケはいいように解釈した。しかしナルトは悔しそうに続けた。
「オレはお前に負けたりしねぇ! 演技じゃあなくて、本当にお前と戦ってやる。絶対オレが勝ってみせるってばよ!!!」
ナルトは、一目散に修業へ行ってしまった。
「ナルト…オレは…」
サスケは演技と同じ言葉を吐き、うなだれて帰ろうとしたが、監督に引き止められた。
「時間があまったから、もう1、2シーンやるぞ」
~シーン5「…どうでもいい…」~
サスケは大蛇丸、カブトと共に屋敷を歩く。
『…どうでもいい…さっさと力をくれ』
(…どうでもいい…さっさと終わらせてくれ)
これがサスケの本音だった。ナルトがいないシーンなど、彼にとっておもしろくもなんともない。サスケの目は、完全にグレていた。
『死にたくなければもう少し口を慎む事だよ』
カブトが耳打ちしてくる。
(くそっ……! これがナルトだったら……! しかし……)
ナルトとの共演シーンは、今日で終了してしまった。シャンプ映画第二弾には、出演することすら出来ない。何より、現実世界のナルトに敵意を抱かれてしまった。
サスケは、ものすごく凄まじい目つきでカブトを睨んだ。カブトは腰が抜けそうになるほどビクッとし、大蛇丸も本気で鳥肌が立った。
「よしOK。サスケ、今のシーン迫真の演技だったぞ」
「うん。サスケ君、上手い演技だったね」
「さすが君は選ばれた人間だわ」
三人はサスケをほめたたえた。だが誰一人として、サスケの演技に今日の無念と悔しさとショックが込められていたことに、気が付かなかった。
☆あとがき☆
初!のサスナルギャグです。現実世界もマンガ撮影シーンも両方NARUTOで人物も同じ…。複雑になってしまいました^^;
3000アクセス記念 リクエスト小説 カカシともみじ(オリジナルキャラ)の恋愛物語。夏祭りの夜、第七班三人、そしてカカシと過ごすもみじの物語です。(カカシともみじ・甘甘)
注:リクエストいただきました春風詩様は、カカシ先生とオリキャラとのCP話について読者様からの反応をとても心配されているご様子です。さらにこの小説は、春風様NARUTOオリジナル小説のネタバレが少々入ります。OKな方のみお読み下さいませ。
※オリジナルキャラ もみじについて(春風様NARUTO小説オリジナルキャラです)
秋野もみじ(13歳)※ナルトたちと同年齢。陰陽師。サクラのいとこ。
第七班に所属し活躍。カカシとは両思い。
『山猫のお面』(NARUTO 11)
それは、夏祭りでの小さな出来事。けれどもみじにとって、一生忘れられない思い出となったあの日……。
今日は、木ノ葉の里の夏祭りだった。暗い夜道を提灯が照らし、たくさんの屋台が並ぶ。
もみじは、その光景をアパート「木ノ葉コーポ」の自室から独り静かに見つめていた。もみじは独り暮らしである。
なぜもみじは夏祭りに行かないのか……。先程第七班メンバー、ナルト・サスケ・サクラの三人がわざわざアパートまで誘いに来たのだが、もみじは断ってしまったのである。想いを寄せるカカシもあとから合流するのにもかかわらず、だ。
もみじは、さみしげに窓から外を眺め、どこまでも続く提灯の明かりを見、人々のざわめきを聞いていた。
その時、チャイムがなった。もみじはあわてて玄関へかけていく。
「はーい! どちらさまですか?」
しっかり者のもみじは、玄関を開けずにまず訪問者を確認する。
「あっ、オレ~」
「カカシさん……」
名乗らなくてもカカシの声はすぐに分かる。いつもならよろこんですぐにドアを開けるもみじだったが、そうはしなかった。もみじはドアに額を当ててよりかかり、悲しそうな表情でドア越しのカカシに語りかける。
「ナルト君たちと……会わなかったんですか? 私、お祭りはお断りしたはずですけど……」
「聞いたよ。だから来たんじゃない」
カカシの声に、もみじはいつも以上に切なくなる。
「オレと行かない? もみじ」
もみじは思わずドアを開けた。頬を赤らめて、カカシの前に立ちつくしていた。カカシはそんなもみじを少しの間じっと見つめたが、すぐににっこり笑って言った。
「んじゃ、行こっか。もみじ」
「……はい」
もみじは何かを決心するような表情で、頷いた。
通りはたくさんの人で賑わい、屋台が延々と並んでいる。わたあめ、あんず、バナナチョコ、射撃、金魚すくい……。もみじは、屋台ばかり見つめていた。と言っても、別に特別な興味をしめしているわけでもない。
「浴衣、かわいいね~」
もみじは、突然上から降ってきた声に反応してカカシを見上げた。カカシは、もみじを慈しむように見つめている。
「あ……ありがとうございます。カカシさん……」
もみじは、自分の浴衣を見つめた。本当は今日のお祭りに参加しようと思っていたもみじは、先日サクラと浴衣を買いに行ったのだ。サクラのアドバイスで、一生懸命カカシがよろこびそうな浴衣を選んだ。だからうれしかった。けれど同じだけ、苦しかった。
「混んでるな……。これじゃ迷子になっちゃうね~。手、つなごっか」
「でっ、でも、ナルト君たちに見られたら……」
あわてふためくもみじの方に歩いてきたのは、ちょうど話題に登った人物三人であった。ナルトはたこ焼きとやきそばを両手に持ち、サクラはあんず飴を、サスケはりんご飴とヨーヨーを持っていた。
二人でいるところを見られてこの上なく恥ずかしいもみじは、この場を逃げ出したかった。けれど、カカシは特に動じた様子もなく、三人に手を振っている。
「カカシ先生! 急にいなくなったから、どうしたのかと思ったってばよ! あっもみじも! 祭りには行かないんじゃなかったのか?」
ナルトが不思議そうにたずねた。どうやらカカシともみじが二人でいるということには、全く関心がないらしい。
「あ、いやね。もみじちゃんが忍鳥使いの修行に忙しいっていうのを、オレが説得したんよ」
「へー。もみじってこんな祭りの日まで修行してんだ。すげぇってばよ」
本気で信じ込んでいるナルトに、サスケとサクラは呆れていた。
「もう~もみじってば。カカシ先生と二人きりで行きたかったなら、初めからそう言えばいいじゃない。私たち、もみじがお祭りに行かないなんて言い出すから、心配してたのよ」
「うん。ごめんね、サクラ……って、ちっ違うってば~。カカシさんと、ふっ二人きりなんてそんな……」
もみじは、あわてふためいている。そんなことを言っても、サクラにはバレバレなのである。先日浴衣を買いに行った時も、もみじはさりげなさそうに、一生懸命カカシの好みをサクラに確認したのだ。実はもみじのほうがカカシの好みに詳しかったりするのだが、自信がなかったらしい。
「そっ、それより、サスケ君ってりんご飴とかヨーヨーとか好きなの? なんか、そんな風に見えないよ?」
もみじは、何とか話題を変えた。
「オレは甘いものは好きじゃない……。これはお前のだ」
サスケは、りんご飴と赤いヨーヨーをもみじに渡した。
「えっ? 私に?」
「オレたち三人で買ったんだ。もみじへの土産だってばよ」
ナルトはニカっと笑った。もみじは、並んで立つ三人を一人ずつ見つめた。サクラはにっこり笑い、サスケは顔を背けてなんだか照れくさそうにしている。
「ありがとう! ナルト君、サスケ君、サクラ……。ホントに仲いいね。みんなで三人一組(スリーマンセル)だね」
もみじはにっこり笑った。
「何言ってんだってばよ。オレはサスケなんか好きじゃねーぞ。たださ、たださ、カカシ先生がみんなで行こうって言うからさ」
「私だって本当はサスケ君と二人きりで行きたかったのに~!」
「オレはサクラに強引に連れてこられた……」
相変わらずな三人を、もみじはうらやましく見つめた。そして思い出す。第七班で過ごした日々。数々の任務。辛いときも苦しいときもあった。けれど、楽しかった。いつも、三人と一緒だった。けれどもう、誰も四人一組(フォーマンセル)とは言ってくれない。無理もない。もみじはもう……。
もみじは笑顔をたもつことができなくて、困っていた。カカシはすぐに気付く。
「もみじちゃん修行で疲れちゃったかな? じゃ、オレが送ってくから。帰ろうね~」
カカシに腕をつかまれ連れて行かれながら、もみじはみんなの方に振り向いた。
「ありがとう……。みんな」
三人は、笑って見送った。ナルトもサクラも、サスケでさえも。
うつむくもみじを、カカシは黙って引っ張り歩いていた。
「あの、カカシさん……。なんか、うちの方向と違うみたいですけど……」
「あっいいのいいの。だってもみじ本当は疲れてないじゃない。あっそろそろあいつらから完全に遠ざかったかな」
カカシはもみじの腕をはなすと、そのままもみじの手をにぎった。カカシの大きくあたたかい手に、もみじはドキンとする。けれどまた、胸の痛みが激しさを増す。もみじは再び、屋台にばかり目を向ける。
「もみじ。何か買ってあげようか? 何がほしいのかな~」
カカシは、にこにこしながらもみじをのぞき込む。カカシの顔を見たもみじは、なぜか真っ赤になり、ますますうつむいた。いくらカカシが好きとはいえ、普段のもみじなら顔を見たくらいでこんなに赤くはならない。
もみじは、顔をゆがめて辺りを急いで見回すと、急にある屋台にカカシを引っ張っていった。お面屋である。
「これ買ってください!」
もみじが急いで指さしたのは、白い猫のお面だった。
「もみじ、お面好きなの?」
「うちの式神に似てるんです!」
もみじが言うのは、もみじの家系陰陽師家の式神で、名を山猫という。普段は白い猫の姿をしているのだ。
「じゃ、ここで待っててね」
カカシはにっこり笑い、お店の人にそのお面を指さした。そのあいだもみじはそわそわしながら、ヨーヨーで二、三度遊んでみた。そして、りんご飴をなめる。
「甘い……」
「はい。もみじ」
もみじはカカシが差し出したお面を奪い取るように取ると、さっとかぶった。普段礼儀正しいもみじが、お礼も言わずにである。それきり黙るもみじ……。
「もみじ、休もっか」
カカシはもみじの手を引いて、通りを抜け、人気のない路地へ入った。ちょうど丸太風のベンチが一つあったので、カカシはもみじを座らせた。そして自分は、もみじの前にしゃがみ込む。カカシはもみじと目線を合わせ、静かに言った。
「やっぱり……さみしいの?」
びくっと体を反応させるもみじ。
「今日でもみじは、第七班卒業だもんね……。でもね~もみじ」
カカシは、もみじの手を取り、その中にあるヨーヨーを裏返す。そこにはこう書かれている。
― ナルト サスケ サクラ もみじ ―
ナルト、サスケ、サクラは自分の名を自分の字で。もみじの「も」はナルト、「み」はサクラ、「じ」はサスケの字で書かれている。
「あいつらからの伝言。もみじが暗部入りしても、いつまでも四人一組(フォーマンセル)だって」
もみじは、ヨーヨーの文字をじっと見つめた。山猫のお面で、表情はうかがうことが出来ない。黙ったままのもみじだったが、ふいにカカシにりんご飴を差し出した。
「ん? オレにもおすそわけしてくれんのかな?」
もみじににっこり笑い、りんご飴を手に持つカカシ。
「……です」
もみじは、ほとんど聞き取れない蚊の鳴くような声を出した。肩が、少しふるえている。
「もみじ?」
「甘いんです……りんご飴……。とっても……」
「もみじは甘いもの苦手だったかな~」
とりあえず話を合わせるカカシ。
「甘くて……胸が苦しくなるんです……。いろいろ……思い出して……」
「りんご飴なめて、あいつらとの日々、思い出しちゃったのね」
「……ちょっとだけ……違います……」
もみじの、山猫のお面の下から、涙が伝った。
「みんなと離れるのは……さみしいです……。でも……みんなとの日々を思い出すと……そこには必ずカカシさんがいて……そこにいなくても……いつも見守って……」
もみじは、本格的に肩をふるわせ、しゃくりあげた。
「……ひっく、だから……、お祭り……行きたくなかっ……です。だっ……、お祭りの夜が……こんなに切ないなんて……思わなかっ……。みんなの前で……明るく振る舞えないと……思ったから……。せっかく…さっ、最後の任務で……うっく……笑って、みんなとお別れできたのに……」
「もみじ……」
「せっ…かく……、カカシさんに……、お面買っていただいたのに……。涙、見せないように……」
激しくしゃくりあげるもみじの両手を、カカシはそっと包み込むようににぎった。
「もみじ~。最後最後って、それはないでしょー」
もみじの体がわずかに反応する。カカシは、もみじのお面をそっと外した。もみじは目も頬も真っ赤にして、今もその目からは涙があとから流れている。
「オレたちは、これからもずーっと一緒だよ。そーでしょ」
もみじは、涙が止まらないまま、うなずいた。カカシはマスクを外しりんご飴をなめると、もみじにキスをした。あっと思ったときには、カカシは再びマスクをつけていた。
もみじの、たった一度だけ訪れた13歳の夏。りんご飴の甘さは、今でも鮮明に覚えている。あの時の言葉通り、いつもそばにいてくれるあの人の愛とともに……。
☆あとがき☆
3000アクセス記念。春風 詩 様からのリクエスト小説です。
リクエスト条件は満たしたつもりですが、甘甘過ぎたでしょうか?(自分でもそう思います。かなり…特にラスト^^;)甘甘は初めて書いたんです(*^_^*)
カカシ先生の口調も春風様の小説に合わせようと頑張りましたが、難しかったです^^; また、オリキャラ紹介等で、もみじちゃんを呼び捨てにしてごめんなさい。
この物語を、春風詩様に捧げます。
追記:春風様が、この作品をご自分のHPに掲載してくださいました。とても光栄です。本当にありがとうございます。また、春風様原作では、もみじちゃんは暗部入り時点で14歳です。作者(管理人)のミスです。『山猫のお面』では13歳もみじちゃんを書いてしまいましたので、本文は修正することができません。春風様、読者様、本当に申し訳ありませんでした。
サスナル小説を書くサスケと指導するシカマルの物語です。(サスケとシカマル・ギャグ)+(サスナル・ヤバめ)&(シカテマ・甘め)
注:作中にサスナル(狂)が存在します。苦手な方はご遠慮いただくか、とばしてお読み下さい。また、サスケの頭脳レベルが実際よりはるかに低い設定になっています。ご了承いただける方のみお読み下さいませ。
『シカマルのCP小説講座』(NARUTO 12)
いつも大好きなナルトに振り向いてもらえないサスケ。そんなサスケに、ある日名案が浮かんだ。
「そうだ! サスナル小説を書こう! そうすれば思いのままに! ふふふ……」
サスケは妄想をフル回転させながら、白紙の巻物を取り出した。
「オレの文才をいかんなく発揮させてやるぜ!」
サスケはわざわざさわやかな草原へ出かけ、木の下に腰を下ろすと意気揚々と書き始めた。そして三時間後。
『ナルトが好きだだからナルトにキスをした。そーしてらナルトもオレもお前のこと好きだってばよと言って抱きついてキスした。』
サスケは自分の文才に酔いしれた。
「まさかオレにここまでの文才があるとは! これは直○賞受賞間違い無しだ!」
そして自作の、ナルトとの甘い物語の世界に浸っていると……。
「あー? なんだこりゃ」
いきなり背後から声をかけられ、サスケはバッと振り向いた……はずだったが……。
(かっ、身体が動かねぇ。まさか……)
サスケは、自分の影がとらわれているのに気が付いた。そう、サスケの背後に現れたのはシカマルである。サスケは、影真似の術にかけられていた。
「あーなになに? ナルトが好きだだからナルトにキスをした。そー……」
(よっ、読むんじゃねぇー!!!)
顔を真っ赤にして心の中で叫ぶサスケだったが、ふとシカマルが黙り込んでいることに気が付いた。
(シカマルのヤツ……オレのあまりの才能に言葉も出ないらしい)
サスケは超得意げだった。だが……。
「最悪すぎ……」
シカマルはため息をつきながら、影真似の術を解いた。
「貴様! この歴史に残る名作のどこが最悪なんだ!」
サスケはすかさずシカマルの襟首をつかんで怒鳴りつけた。だがシカマルは、馬鹿にしたような目でサスケを見ている。
「何だその目は! 殺す……」
「まず、文法がなってねー」
怒鳴るサスケを遮り、シカマルはめんどくさそうに説明を始めた。
「文法だと? なんだそれは……」
サスケはシカマルから手を離し、興味津々で聞いた。
(こいつ……文法も知らねーで直○賞受賞を狙ってやがるとは……)
シカマルは大きなため息をつくと、草むらに腰を下ろした。
「めんどくせーけど教えてやっから、来な」
サスケはシカマルの態度にかなり腹が立ったが、IQ200以上のこの男に教えを受ければさらに完璧なものが書けると思い、おとなしくとなりに座った。
「まずここ。『ナルトが好きだ』 誰がナルトを好きなんだかこれじゃ分かんねーぜ。ここは『オレはナルトが好きだ』か『サスケはナルトが好きだ』のどっちかだ」
シカマルはすでにナルトの相手がサスケだと決めつけているが、無理もない。あの小説もどきを読んでうっとりしているサスケを目にしてしまっているのである。
「とりあえず一人称でいっとくか」
シカマルは『ナルトが好きだ』の前に『オレは』と付け足した。
「こいつ……出来る……!!」
サスケは自分の文章力のなさには全く気付かず、ただただシカマルに感服していた。
シカマルは次々と校正していく。句読点を入れ、カッコを付け、誤字を訂正する。すると、次のようになった。
『オレはナルトが好きだ。だからナルトにキスをした。そーしたらナルトも「オレもお前のこと好きだってばよ」と言って、抱きついてキスした。』
「フン……。まぁ少しはよくなったな。じゃあ……」
言葉とは裏腹にかなり満足な気分で立ち上がろうとしたサスケを、シカマルは再び影真似の術を一瞬かけて止めた。
「まだ終わってねーっつうの」
「何だと? この完璧な作品にこれ以上どう手を加えろと……!」
サスケは驚きながらも、腰を下ろした。
「あー? なんつーか、たくさんありすぎてめんどくせーな。例えばシチュエーションとか……」
「しちゅえいしょん、だと? それは何だ」
シカマルは、サスケのあまりの無知さに面倒の限界に達したらしい。サスケから巻物を奪い取ると、一気に何か書き始めた。その間約十秒。
「ほら。説明すんのめんどーだから、手本書いてやったぜ」
サスケは、早速読み始めた。
『木漏れ日が差す森。辺りは静けさに包まれている。
オレは寝ころんで雲を眺めていた。すると、待ち合わせをしていたテ○○が、木の陰から姿を現す。少し恥ずかしそうに、顔を赤らめながら……。
「すまないシカマル……。任務で遅れてしまった……」
「いーってことよ。オレぁ、雲を眺めんのが好きだかんな」
テ○○は、空を見上げる。緑の葉の遙か先に、真っ青な空が見える。そこに、ぽっかりと浮かぶ雲。
「あーだめだめ。雲ってのは、寝っ転がって見んのがいいんだよ。ちょーどここはベストの位置だな」
「そうなのか?」
テ○○はますます顔を赤くしながら、オレの横に仰向けになる。
「どうだ? いい眺めだろ」
「ああ……。お前が一番好きだと言っていた意味が良く分かった……」
テ○○は、いつになく少女らしい表情で雲を見つめていた。オレは横を向き、覆い被さるように片方の手をテ○○の肩越しに立てた。
「シっ、シカ……」
「オレが一番好きなのは、雲じゃねーって」
オレは、そっとテ○○にキスをした。
「シカマル……」
テ○○は、オレに全てを任せるように目を閉じた。』
読み終わったサスケは、驚愕した。
(まさか、このオレの名作を越える文をシカマルが……!)
いまだに己の文章力の無さに気付いていないサスケであった。
「それ読んで勉強しろよ。じゃーな」
「待てシカマル!」
必死で呼び止めるサスケに、シカマルは振り向いた。
「このテ○○というのは誰だ」
「……めんどくせーから教えねー」
シカマルは平静を装って去ったが、顔に赤みがさしていた。
「シカマルのヤツ、テ○○というやつが好きらしいな。おっといけねぇ。アイツなんかに負けてらんねぇぜ!」
サスケは猛烈な勢いで筆をとった。
そうして六時間後。出来上がったサスケ会心の自信作。
『ここは素敵な世界。白い羽が舞い、辺りは星のかけらが散りばめられている。
城の王子であるオレは、きらびやかな服を着て、豪華な部屋から外の景色を眺めていた。すると、隣国のナルト姫が馬車を降りるのが見えた。ピンクのドレスを着たナルト姫は、星の輝きを持つ瞳でオレの部屋を見つめた。ナルト姫は、オレの部屋へ通される。
「ごめんなさいサスケ様……。公務で遅れてしまいましたの……」
「いいんだよナルト姫。オレは、白い羽を眺めるのが好きなのさ」
ナルト姫は、椅子に座ったまま窓の外を眺める。辺り一面白い羽が舞い、地面にはきらきらした星のかけらが散りばめられ、空にはペガサスが飛んでいる。
「ダメさナルト姫。白い羽は、窓から眺めるのがいいのさ。ちょうどここはベストの位置なんだぜベイビー」
オレは、白い歯をキラリと輝かせ、ナルト姫を窓辺にいるオレの隣りに呼び寄せる。
「そうなのですか?」
ナルト姫は白い顔を赤く染め、オレの隣りに立つ。ナルト姫は、花のような甘い香りをただよわせている。
「どうだい? いい眺めだろう」
「はい。あなた様が一番好きだとおっしゃっていた意味が良く分かりました……」
ナルト姫は、いつものように愛らしい表情で白い羽を見つめていた。オレは横を向き、ナルト姫の肩に手をかけた。
「サ、サスケ様……」
「オレが一番好きなのは、白い羽ではないのさ」
オレは、ナルト姫のサクランボ色の唇にディープなキスをした。
「サスケ様……」
ナルト姫は、オレにやわらかい身体を全て預け、うっとりと目を閉じた。』
「完璧だ!!!」
夕日の中で、サスケはガッツポーズをとった。
次の日、昨日の草原に寝そべっていたシカマルの腹を、サスケは足で踏みつけた。どうやら昨日の影真似の術の仕返しらしい。
「んぁ? なっ、なんだよ」
シカマルを足で押さえつけたまま、サスケは昨日の会心作を突きつけた。シカマルがいぶかしげに受け取ると、サスケは足を離す。
「さぁとくと読め! そしてオレの方が文才が勝っているということを思い知れ!」
指導してもらった者に対して、あんまりな言い方である。しかしサスケの性格を知っているシカマルは、特に気にもせず読み始めた。その間約二秒。
「どうだシカマル。完璧な文章だろう」
「あ、ああ……」
自分が書いた手本の文を土台にしていることはバレバレだったが、シカマルにはつっこむ余裕はなかった。
「自慢はこのシチュエーションだ! お前のよりずっと勝っているぞ。さぁ負けを認めろシカマル!」
「……ああ。……じゃ…な……」
シカマルは、ふらふらと去っていった。
「ついにやったぜ! これはもう直○賞どころのレベルではない。ノー○ル賞受賞確定だ!」
サスケはまたも自作小説を読み返しては、どっぷりと甘い夢の世界へ浸るのだった。ちなみに、読み返すのは653回目である。
一方シカマルは、青ざめた顔でガクガク震えながら、木ノ葉病院へ足を運んでいた。
「きっ、気持ち悪りー。サスケのヤツよくあんな恐ろしい妄想を……。とっ、鳥肌が……」
シカマルは滝汗を流し、たびたび道ばたで吐きながら、病院へ向かった。そして即入院。ベッドの上でも、悪夢にうなされつづけるのだった。
☆あとがき☆
あまりにも壊れたものを書いてしまいました^^; 本当はサスケがただサスナル話を書き(ただって…)、その妄想話を主体にするはずだったのですが……。
ところで管理人にとって、これは記念作品です。それは、ファンのシカマルを初めて書くことが出来たからです。なにげに入っているシカテマも初めてです。
そんな大事な作品なのに、この話の内容っていったい……(汗)
カカシともみじ(春風詩様オリジナルキャラ)の純愛小説です。(カカもみ・純愛)
カカシと付き合い始めたもみじ。サクラに「大人の恋」を教わったもみじは……。
注:上記の通りです。OKな方のみお読み下さい。
もみじについて
秋野もみじ 13歳 第七班所属。陰陽師。サクラのいとこ&同年代。
もみじ13歳の誕生日にカカシとお付き合いを始める。
『ずっと一生』(NARUTO 13)
それは、雨の日だった。もみじは、独りで暮らしているアパート「木ノ葉コーポ」の部屋で、ベッドに座っていた。静かな部屋に、雨音に混じりシャワーの音が聞こえる。
もみじは、ベッドのシーツを両手でぎゅっとにぎり、うつむいていた。ほおは赤く、体は少し震えている。そして、思い出していた。
「知ってる? 男の人と付き合ったら、どんなことするか」
任務の帰り道、サクラはもみじに振り向いてにっこり笑った。もみじはどきっとしてあわてて辺りを見回したが、誰もいない。もみじは、ううん、と小さくつぶやいた。
「まぁ私はサスケ君だから、そういうのはゆっくりでいいんだけどね~。もみじの場合、大人の男が相手だからね。あんたたち、キスまですませたんだから、次はねー」
サクラは、くったくのない笑顔で次々と話していった。すべて話し終えたサクラにもみじは一言。私…できないよ……。するとサクラは怒った顔で言ったのだ。
「カカシ先生の気持ちも考えてあげなさいよ」
そして、ふっと顔をやわらげるサクラ。
「それに……それが愛されてるってことなんだから」
ガチャっとバスルームのドアが開く音に、もみじははっと我に返った。
タオルを出そうかと立ち上がったが、さっき用意して渡したことに気付いてベッドへ座る。飲み物を用意しようかと立ち上がったが、何が飲みたいのか聞いてからにしようと再び座る。そしてわけもわからず立ち上がり、辺りを見回し、うろうろきょろきょろ。何もすることがなくて、やはり座り直す。
「どーしたの、もみじ……」
バスルームから出てきたカカシは、もみじが用意したお客様用のパジャマを着ている。……いや、本当は違うのだ。サクラの助言で買っておいたパジャマを、お客様用と偽ったのだ。つまり、実はカカシの為に用意されたパジャマなのである。
「い、いえ……」
真っ白なタオルで濡れた髪をふいているカカシを、もみじは一瞬ちらりと見たが……目をそらす。
付き合ってから、初めて家に訪問したカカシ。雨にぬれて、シャワーを浴びさせてほしいとやってきた。サクラの予言したとおりである。カカシ先生のことだから、さりげなく理由を付けて、そして……。
「もみじ?」
カカシに呼びかけられ、もみじは顔をあげる。カカシは、不思議そうにもみじを見つめていた。
「ごっ、ごめんなさい! なんでもないんです!!! あっ、なっ、何飲みますか?」
もみじはドキドキしながら立ち上がった。
「んー、じゃ、冷たい麦茶ちょうだい」
カカシはにっこり笑った。
「はい。……えっ?」
秋も終わりのこの季節に麦茶!? ともみじは思ったが、言葉を飲み込みあわててキッチンへ小走りした。そして夏に残った麦茶パック(賞味期限ぎりぎりセーフ)を見つけ、ポットの中に無理矢理それをつっこみガシャガシャ振ってコップにつぎ(耐熱でないため割れる寸前)氷をめいっぱい入れた。それを猛スピードでやってのけると、もみじはふらふらになりながら麦茶を入れたコップをカカシに持っていった。盆へ乗せるのも忘れている。
「ん、ありがと」
カカシはベッドに座っている。またもサクラの予言したとおりである。さりげなく、いつの間にか……。
カカシにコップを渡すとき、かすかに手が触れ合った。もみじはびくっとして手を引っ込める。たったそれだけで、胸がバクバクする。
カカシはマスクをずらし(もみじはカカシの素顔を見たことがある)一口飲むと、またマスクを元に戻した。
「なんかこの麦茶、温度差が激しいね~」
カカシはコップの中身を見つめ不思議そうだったが、ふと気がついた。
「そっか。女の子はこの季節に冷たい麦茶は飲まないか」
「あっ、はい。でもごめんなさい。あの…そんなに激しいですか? 温度差……」
カカシはニコッと笑うと、自分が座る隣りの場所にぽんぽん手をやった。
「ま、とりあえず座れば?」
「は、はぃ……」
ぎくしゃくと、もみじは座ろうとする。どこまで近づいて座ったらいいのか分からない。サクラどうしよう~!! ともみじは心で叫びながら、カカシが置いた手の横辺りにおどおどと座った。カカシはもみじにコップを渡す。
「飲んでみる?」
カカシの一言に、もみじはまたもひぇ~~~となった。か、か、間接キッスではないですか! ともみじは動悸が激しくなる。カカシが口を付けた場所に同じく口を付けてもいいのか、もみじは迷う。迷って迷って迷いまくる。けれど、わざわざコップをまわして飲むのは付き合っている相手に失礼だと思い(もみじにはカカシと付き合っていること自体が夢のようで実感がないのだが)かすかに震える手でコップを口へ持っていった。そしてそっと口を付ける。カカシの触れた唇が間接的に自分の口に触れる。もみじは胸がきゅーっとして、うれしくて泣きそうになるほど感情が高ぶった。けれどのどへ流れ込んでいく液体は、確かにぬるかったり冷たかったり熱かったり……。こんなものをカカシに出してしまったと落ち込んでいて、気がついたら飲み終えてしまっていた。
「あっ、ごめんなさいカカシさん。飲んじゃいました。それに、こんな変な飲み物お出しして……」
「いや、オレこそごめんね。それに頑張って作ってくれたんでしょ。ありがとね」
もみじはカカシの言葉にホッとする……はずだったが、うれしくて胸がいっぱいで、顔が真っ赤になる。
「もみじは、いつも何飲んでんの?」
「あの……」
息が苦しい。もみじは簡単な質問さえも、すぐに答えが思い浮かばない。
「あ……、最近は、紅茶とか、ハーブティーです」
やっと答えるもみじ。
「そっか。おしゃれだね~」
カカシはにっこり笑ったが、その後真顔でもみじを見つめた。もみじは硬直する。またもサクラの言っていたとおり。何気ない会話の最中、急にそういう雰囲気になり……。
もみじは硬直したままカカシを見つめた。顔はほてり心臓は早鐘をうち……けれど不思議と震えだけは治まっている。だいじょうぶ、と自分に言い聞かせる。初めてだけど、だいじょうぶ。だいじょうぶ……。ただそれだけを心で繰り返して……。
その状態が、どのくらい経っただろう。一瞬だったかもしれないし、長い間だったのかもしれない。分からない。
カカシはニッコリ笑うと、立ち上がった。
「じゃ、オレ帰るわ。今日はありがとね、もみじ」
もみじは拍子抜けした。ただ、さっきとは逆に、今頃になって震えだけがくる。
「もみじ……寒いの?」
着替えようとバスルームへ向かっていたカカシが振り返る。もみじは首を振りながら、胸が苦しくなる。サクラの言葉を思い出す。
『カカシ先生の気持ちも考えてあげなさいよ』
「カカシさん……。いいんですか?」
うつむきながら、小さな声でカカシに問うもみじ。
『それが愛されてるってことなんだから』
「私のこと……カカシさんは……」
胸の中で、涙が揺らぐもみじ。
カカシは、そんなもみじをじっと見つめていた。今度は長い間…本当に長い間、見つめていた。そして目をつぶって一瞬迷いの表情を見せたが、もみじにかけよりぎゅっと抱きしめる。強く、強く抱きしめる。
「好きだよ……もみじ」
カカシは、自分の胸にもみじの顔をうずめる。
「好きだから……本当に好きだから……もみじを大切にしたいんだ」
カカシの胸の中、もみじは感じた。薄いパジャマを通して伝わる…あたたかい体温。心臓の音。
「もみじがもう少し大人になるまで、オレ待ってるから……」
もみじは、急に堰を切ったように泣き出した。初めて、カカシに愛されているか不安でたまらなかった自分に気付く。こんなに、こんなに辛かったんだ……。そしてもみじは改めて気付く。こんなに、こんなに好きだったんだ……。
外は雨。静かな部屋。ただもみじの泣き声だけが聞こえる。さっきとは逆にカカシに強くしがみついて泣くもみじを、カカシは優しく抱きしめていた。もみじが泣きやむまで、黙って、もみじを優しく見つめながら……。
帰り際、玄関で座ってくつを履きながら、カカシはぼそりと言った。
「もみじは、未来(さき)が長いだろうけど、浮気しちゃダメだよ」
「カカシさんこそ、大人の女の人にふら~っといっちゃわないでくださいね。……私、早く大人になりますから」
真剣なもみじを見上げたカカシはきょとんとしていたが、ふっと笑う。
「いいよゆっくりで。子供でも大人でも、もみじはもみじだよ」
「……はい。ありがとうございます」
カカシの笑顔に、もみじも照れたように笑った。カカシはもみじの頭を優しくなでると、帰っていった。
雨の中帰っていくカカシを、もみじは部屋の窓からそっと見つめていた。
「カカシさん。私、ずっとカカシさんが好きです。大人になっても、ずっと、一生……気持ち変わりません。自信ありますから」
もみじは、笑顔でカカシを見送った。
☆あとがき☆
日頃お世話になっている春風詩様のオリジナルキャラ、もみじちゃんとカカシ先生との恋愛話です。小説『山猫のお面』(NARUTO 11)でもみじちゃん小説を書かせて頂いた後、自分好みのストーリーが頭の中に出来てしまいました。春風様にストーリーについて質問を受けたのですが、話が長すぎるため迷惑ながら小説化させていただきました。今回、作者(管理人)の想像話のため、申し訳ありませんが春風様の原作小説(もみじちゃん話)の詳細設定と異なる場面があるかもしれません。どうかご了承下さい。
追記:光栄にもまたまた春風様がお持ち帰りしてくださり、ご自分のサイトにアップしてくださいました。春風様、ありがとうございます!
追記:春風様からこの小説の挿絵を頂きました。フリーページNARUTO(頂き物)イラスト4にアップさせていただきました。
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