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こころのしずく
NARUTO 39~40
「こころのしずく」三周年御礼小説リクエスト企画。アカデミー時代、ナルトたち悪ガキ四人組が結成されるまでのお話です。
(ナルト、シカマル、チョウジ、キバ(赤丸) 友情もの・ほのぼの&ギャグ少々)
『手と手をつないだら』(NARUTO39)
<ストーリーその1 秋道チョウジ>
あの頃ボクは、いつもひとりぼっちだった。
そして今、いつもひとりぼっちの子がいる。
アカデミーに入って、三年目になった。秋道一族はみんな体が大きくて、体術とかすごいんだけれど、ボクはぜんぜんダメだった。鈍感とかデブだってみんなに言われて、成績も悪くって、いつもやっと、進級してるんだ。だけどボクはだいじょうぶ。ボクがつらそうだったり、悲しそうだったりすると、シカマルはいつもこう言ってくれるんだ。
『ほかのだれが、なんて言っても、気にすんなよ。お前は、お前なんだから。もっと、気楽にしてればいーんだよ』
その一言で、ボクはいつも、心が楽になるんだ。
シカマルは、ボクの、一番のともだち。
それを、親友と言うのだと、こないだイルカ先生が教えてくれた。
昼休み。ボクはガルBポテートを食べながら、校庭を歩いてた。シカマルは、昼休みはねむいって言って、いつもねてる。授業中だってねてるくせに……。
ボクは今日も、いつもと同じところへ行った。校舎のかげの、ひとつだけぶらんこがあるところ。建物にかくれて、のぞいてみる。
少しだけ揺れる、ぶらんこのすみに、今日もあの子はすわっていた。今年、同じクラスになった、うずまきナルトくん。いつもひとりで、ぶらんこにすわって、さみしそうにしてる。なんで、あのぶらんこは、ひとつしかないんだろう。もう一つあったなら、だれかがいっしょに遊んであげられるのにな。
ぼんやりと、考えていたら、うしろからきゃんきゃんと犬の鳴き声が聞こえた。振り返ると、犬を頭にのせた子が立っていた。今年同じクラスになった、犬塚キバくんだった。
「ねぇキバくん。なんでナルトくんは、いっつもひとりぼっちなのかなぁ……」
ボクがそう聞くと、キバくんは、少しケゲンそうな顔をした。
「よく分かんねーけど……なんか、里のオトナたちが、みーんなアイツのことキライみたいなんだよな」
「オトナたちが? どうして?」
「そんなこと、知らねーよ」
キバくんは、ちょっとおこったように言った。キバくんは、少しこわい。すぐおこるから。でもボクは、がんばって続きを聞いてみた。
「オトナたちがナルトくんをキライだと、こどもも、いっしょに遊んだりしたらいけないの?」
「……」
キバくんは、少しのあいだ、だまって考えていたけれど。
「……知らねーって言ってんだろっ!」
そう、怒鳴って、行ってしまった。ボクは体をちぢめた。キバくんは、やっぱりこわい。
でも、キバくんは、どうしてここにきたんだろう……。
三日後の、忍術の授業のときだった。その日は、ツーマンセルを組んで練習することになったんだ。ボクは、すぐにシカマルと組んだけれど、ナルトくんは一人あまってしまった。ナルトくんは、いろんな組に、入れてって頼んでた。だけど、みんなムシしてた。
ボクは、ここへおいでよって言おうとしたけれど、そばでねてるシカマルを見てたら、なんでか言えなかった。イルカ先生は、ちょうどなにかを取りに行っていて、いなかった。
アカデミーが終わって、ボクはシカマルと外へでた。歩きながら、校舎のすみをちらりとのぞいた。
ナルトくんは、泣いてた。いつものように、少しだけ揺れるぶらんこにすわって。くさりにしがみついて、泣いてたんだ。きっと今日、みんなにムシされて、さみしかったんだ。
「どうした? チョウジ……」
シカマルは、ナルトくんのほうを見ようとした。
「なっ、なんでもないよ!」
ボクは、とっさにそう答えてしまった。
「けど……さっきから、ずっとあっちのほう、気にしてんじゃん……」
シカマルが、そっちのほうへ行きかけた。
「……チョウジ?」
ボクは思わず、シカマルの服のすそを、つかんでた。
『オレはシカマルってんだ…。奈良一族の…』
まだ、アカデミーに入る前。みんなボクを鈍感だとかデブだってバカにしたのに。
シカマルは、そんなこと言わないで、いっしょに雲を見ようって言ってくれた。
ボクの大事なともだち。一番の、ともだち。
ボクの、親友。
「チョウジ……。どうしたんだよ……」
「シカマル……行かないで……」
シカマルはやさしい子だから。ナルトくんを見たら、きっと、ともだちになっちゃう。そうしたら、もうダメなボクとは、なかよくしてくれないかもしれない。
「チョウジ……、なんで、泣いてんの?」
「シカマル……ボク、はやく帰りたいよ……」
「……うん」
シカマルは、ナルトくんのいるところが気になってるみたいだったけど、見ないで、ボクを見ててくれたんだ。ボクは、うれしかったけど、同じだけ、心がズキンとしたんだ。
<ストーリーその2 奈良シカマル>
今までオレは、考え事なんかしたことがなかった。
だけど今、アイツのこと考えてる。
アカデミーに入学してから三年目。まだ卒業まで半分もいってない。超めんどくさい。
毎日、たいていのことはどーでもよかったけど、ひとつだけ気になってることがあるんだ。
『シカマル……行かないで……』
チョウジが、泣いたんだ。
校舎のすみを、ずっと気にして。
悲しそうに、不安そうに、泣いたんだ。
明日こっそり、見にいってみよう。
チョウジ。オレはお前をうらぎるわけじゃないんだぞ。
親友だから、お前が泣かないために、行くんだからな。
チョウジのためなら、そんなことぜんぜん、めんどくさくない。
次の日、アカデミーが終わって、オレとチョウジは校庭を歩いてた。
チョウジが、また悲しそうな顔で、ちらりとあの場所を見てた。
「チョウジ……。あのさ、オレ、忘れ物した。さき、帰ってて」
チョウジは、じっとオレを見つめた。
「なに……? まってなくて、いいから……」
「シカマルのバカ」
チョウジは、むすっとして、言った。
「シカマルは頭がいいから、上手にうそがつけるかもしれない。だけど、ボクだけはだまされないよ」
言い終わって、またチョウジは、泣きそうになった。
「……ごめん」
チョウジにうそをつくなんて、オレ、やっぱひどいことした。
「じゃあ、ちゃんと言うよ。オレ、お前が心配なんだ。だから、校舎のすみに、お前を悲しくさせるなにかがあるんだったら……オレ、どーにかしてやりたいと思ったんだ」
チョウジは、一瞬、ビクッとした。そんで、うつむいて、また不安そうな顔をした。そのまま、チョウジは、だまった。なにか、考えてるみたいだった。だから、オレもだまって、まってた。
「シカマル、あのね……」
「うん。なに?」
「ボクより、かわいそうな子がいても、ボクとともだちでいるのをやめたりしない?」
一瞬、ポカンとした。それから、すごく腹が立った。
「お前っ、今までオレが、お前がかわいそうだからともだちになったって、そう思ってたのか!?」
怒りのままに怒鳴ったら、チョウジは泣きべそをかいた。
「だってボク、鈍感だもん……。それにデブ……じゃなかった、ポッチャリ系だもん……」
チョウジの言葉がなんだか間抜けだったから、オレは拍子抜けした。
「お前はお前だって、言っただろ」
そう言うと、チョウジは、目をまんまるにした。
「鈍感で、ポッチャリ系で、だからなに? 言っとくけど、ポッチャリ系はもてるんだぜ」
「でもボク、くの一組のいのちゃんにバカにされたもん」
「バカ。おっきくなったらの話だよ」
オレは、ふぅと息を吐いて。
「チョウジ。あのな、オレはお前がいいヤツだからともだちになったんだからなっ」
ビシッと言ってやった。
「ホント?」
「うん」
チョウジは小指を突きだした。
「明日もいっしょに、帰ろうね」
オレはうなずいて、指切りをすると、チョウジはやっとにっこり笑った。
チョウジが帰ると、オレはかげから校舎のすみをのぞいた。
「ナルトだ……」
ボソリとひとり、つぶやいてしまった。
ナルトは、ぶらんこにすわって、さみしそうに揺れてた。
そっか。チョウジは、ひとりぼっちのナルトが悲しかったんだ。
「……」
どうしよう……。
今年初めて、ナルトと同じクラスになった。ナルトは、授業でいつもバカばっかやってるけど、いいヤツだと思う。いっしょに遊んだら、たぶん楽しいと思う。
だけど、オレは知ってる。オトナたちが、ナルトをキライなこと。だからこどもも、いっしょになって、ムシしてること。なんでナルトをキライなのか、そこまでは分かんないけど……。
どうしよう。アイツに関わると、絶対めんどくさいことになる。それに、かわいそうだからってともだちになるのも、ちがうと思う。ナルトだって、そんなんじゃおこると思う。だけど、ちがう。そうじゃない。オレはただ、ナルトがいいヤツだと思うから、話したり、遊んだりしてみたいって思うんだ。もちろん一番はチョウジだけど、ナルトだっていつか、一番のともだちを見つけるはずだから。それはいいんだ。
ふと気配に気付いて、うしろを向いたらキバがいた。赤丸がキバの頭の上で、きゃんゃん鳴いた。
「よぉ……。なにやってんの?」
キバは、なんだか不自然に聞いてきた。だって、聞いてるのに、ふしぎそうじゃない。
「……めんどくさいのと、ともだちになりたいのと、二つのきもちがあるんだ。それが、オレの中で、たたかってんだ」
「……は?」
キバは今度はちゃんと、ふしぎそうな顔をした。だけど、オレはもう説明すんのもめんどうくさくなっちゃって、じゃあなとキバに手をふった。
<ストーリーその3 犬塚キバ>
前までオレは、ともだちなんてだれでもいいと思ってた。
だけど今、アイツがいいなって思う。
アカデミーに入ってから、三年目になった。新しいクラスになって、遊ぶともだちも変わった。まぁオレは赤丸がいるから、ともだちなんてだれでもいいんだ。そう、今までずっと思ってた。だけど、なんかほうっておけないヤツがいるんだ。
うずまきナルト。オレが授業中気持ちよくねてたら、こいつのせいで起こされた。見てたら、分身の術がヘタすぎて、すげぇ笑った。アイツ、もうアカデミーで三年もたつのに、ダメだなー。けど、クラス中が笑ってる。きっと楽しいヤツだから、人気があるヤツなんだ。
そう思って、休み時間に話しかけようとしたんだ。そーしたら、ともだちが、オレをあわててひっぱった。
「キバ……ナルトと話しちゃダメだよ」
そいつは、真剣に言った。
「……? なんで?」
「だってみんなアイツのことキライだもん」
「……なんで?」
そいつは、急に困った顔で、考えこんだ。それから、言った。
「あのね、それは知らないけどね、里のオトナみーんながナルトをキライなの! だからナルトとなかよくしたらダメなんだ。お父さんやお母さんにもおこられちゃうからね。キバんちも、きっとそうだよ」
そいつは、なんだかあわてたように言って、走って行ってしまった。
それからオレは、ナルトのことが気になるようになった。アイツはバカだけど、元気だしおもしろいし、いいヤツだと思う。だけどアイツのまわりには、本当にだれもよりつかない。いっつもひとりぼっちだ。
ナルトはいつも、校舎のすみにあるぶらんこに、ひとりですわってる。それ以外のときは修業してるみたいだけど。ぶらんこにすわってるときは、きっと悲しいときとか、さみしいときだ。だって、いっつもそんな顔してるから。
ときどき、チョウジがのぞいてる。シカマルも一度、きたことがある。でも、二人とも、ナルトに話しかけないで行っちゃう。
「なぁ赤丸……。ナルトに話しかけたら、母ちゃんや姉ちゃんおこるかな……」
「きゅ~ん……」
ぶらんこに揺れるナルトの影が、長かった。もう、陽がしずむ。
「母ちゃん、姉ちゃん、どうしてオトナはナルトのことがキライなの?」
夕飯のとき、オレは思い切って聞いてみた。すると、母ちゃんと姉ちゃんは、顔を見合わせた。
「そっ……そんなことアンタは知らなくていいの!」
姉ちゃんは、あわてたようにおこった。
「なんでだよっ」
「なんでもっ!」
姉ちゃんは、がんとして、理由を教えてくれなかった。母ちゃんは、なんだかむずかしそうな顔でだまってる。
「じゃあ母ちゃん、もしオレがナルトとともだちになったら、おこる?」
母ちゃんは、なんかこわい顔で立ち上がって、オレのそばへきた。わっ、もしかして、たたかれるの?
だけど、母ちゃんはすわって、オレと目の高さを合わせた。
「キバ、ともだちは、アンタの好きに選びなさい。けどね……」
母ちゃんは、オレの肩に手をおいた。
「ナルトくんと友達になるなら、アンタもきっと辛い目に合うはず……。だから、中途半端な気持ちで友達になったらダメ。いい?」
「……うん」
あんまりよく分かんなかったけど、うなずいた。
次の日、ぶらんこにすわってるナルトに、声をかけてみた。
「ナルトっ! いっしょにあそばねぇ?」
ナルトは、目をいっぱいに見ひらいた。
「……ホント?」
信じられないという顔で、ナルトはオレをずっと見てる。
「ホントだよっ」
「……ホント? ホントに!?」
ナルトが、ぱあって笑った。あんまりうれしそうに笑うから、オレもつられて笑った。赤丸もきゃんきゃんと、うれしそうだ。
その日は、陽が暮れるまで、公園でいっしょに遊んだ。
母ちゃんの言ってたことは、すぐに分かった。次の日、アカデミーに行ったら、みんながオレを見てコソコソなんか言ってた。小さな声で、ナルトと遊んだんだってー、とか、信じらんないよね、とか言ってた。腹立った。いーだろ、別に。
オレは、教室の入り口で、おっきな声でおはよーって言った。だけど、いつもとちがって、だれも答えてくれなかった。別に……いーけど……。いーけど……。いーけど……ムシされることが、こんなに辛いとは思わなかった。
ナルトはいつも、こんな風なんだ……。
そのとき、だれかに、ポンって肩をたたかれた。
「おはよー、キバくん」
チョウジだった。ちょっとおどおどしながら、それでも笑っておはよって言ってくれた。そのうしろから、シカマルがめんどくさそうに、おはよーって言ってくれた。どうしよう。やべぇ。オレ、やべぇ。なんで……。涙、でそう……。
ガラッと、急にびっくりするほど大きな音がしたと思ったら、ナルトが教室のドアを開けた音だった。なんだか苦しそうな顔で、教室のみんなをにらむように見回して、大声で叫んだんだ。
「キバは、オレのことキライって言ったってばよ!!」
え……? なに、それ……。オレそんなこと言ってない。
ナルトは、ちらっとオレを見た。泣きそうな目をしてた。そんで、オレに、何も言うなって、言ってるみたいに見えた。
ナルトはそれきり、もうオレのほうを見なかった。
『だから、中途半端な気持ちで友達になったらダメ。いい?』
母ちゃんの声が、頭の中でこだまする。
なのにオレは、そのとき、言えなかったんだ。
ちがうよって。
オレはナルトをキライなんかじゃないんだって。
ナルトと、ともだちになりたいんだって。
そう言えばよかったのに。
言えなかったんだ。
<ストーリーその4 うずまきナルト>
今までオレは、いつもひとりぼっちだった。
そしてこれからも、きっとひとりぼっちだと思う。
アカデミーに入って、もう三年もたった。オレは初め、アカデミーに入ったらきっとともだちができるって思って、わくわくしてたんだ。もう、ひとりぼっちじゃなくなるって。だけど、ともだちはできなかった。今年、クラス替えをしたけど、やっぱりできなかった。なんでかなぁ。
授業が終わると、いつもここにくる。校舎のすみ。ひとつだけあるぶらんこ。たったひとつしかないから、だれもこないんだ。だれもこないから、ここにくるんだってば。いっつもみんなの前ではバカなことして、笑って、オレのこと見てもらおうってがんばるんだけど。だれも、見てくれなくて、さみしくて、悲しくて、ここへくるんだ。ここにくれば、だれにも気付かれないで、泣けるから。
ぶらんこに、今日もひとりでのった。くさりにしがみついて、考えてた。キバのこと。
きのう、キバは、オレとあそぼって言ってくれた。そんなこと本当に初めてだったから。うれしくて。オレってば本当にうれしくて。陽が暮れるまで、公園で、夢中になって遊んだんだ。ひとりの夕ごはんも、ひとりでベッドに入るのも、いつもはさみしいのに、ずっと幸せだった。だけど今日の朝、教室に入ろうとしたら、聞こえてきたんだ。クラスのヤツらが、キバの悪口を言ってる。オレと遊んだからって。だからオレは言ったんだ。キバはオレのことキライって言ったって。そーしたらキバは、またみんなとなかよくできるから。
だけどオレは、またひとりぼっちになっちゃった。
くさりにしがみついて。いつもなら、いっぱい泣くのに。なんでかなぁ。今日は、涙がでてこないってば。オレ、泣くのももう、つかれちゃったのかな。それとも、悲しすぎて、涙がでるところがこわれちゃったのかな。
そうだ。修業しなくちゃ。
きっとオレが弱いから、ダメなんだ。
強くなったら、みんななかよくしてくれるかもしれない。
変化の練習をした。
何回も、何十回も、やったのに。
何百回も、やったのに。
ぜんぜん、できなくて。
あおむけに倒れたら、やっと涙でてきた。
一度泣いたら、とまんなくなった。
頭のうしろで、ぶらんこが揺れてる。
キバが、くさりをにぎって、ぶらんこを揺らしてたんだ。
立ったまま、オレのこと、見てたんだ。
「キバ……ごめんってば……」
オレは、あおむけのまま泣きながら、ぐずぐす言った。
「オレ、弱いから、きらわれちゃうのに……キバまできらわれて、ごめん……う…うっ……えっ……」
涙、とまんない。
「お前は、悪くないよ」
キバは、静かにそう言った。
「弱いとか、そんなこと、ぜんぜん関係ねぇよ!」
キバ、オレをにらみながら……泣きそう?
「オレ、ナルトのことキライじゃないよ!」
キバの目から、涙こぼれてる。
「オレはナルトと、ともだちになりたいよ!」
涙、いっしょうけんめ、ぬぐってる。
「朝、言えなくてごめんな。でもさっき、クラスのみんなにちゃんと言ったからな!」
キバは、しゃくりあげながら、オレに手をさしのべてくれた。
オレは、キバの手をにぎって、起きあがった。
キバはオレの手を、ぎゅってしてくれたんだ。
キバと二人で、公園のぶらんこにのった。ここにはぶらんこが二つある。二つあるから、この公園がキライだった。だって、となりにのってくれるヤツいないもん。
だけど今日は、キバがいる。
夕暮れの中で、となりのぶらんこにすわったキバは、言ってくれたんだ。他のヤツにきらわれてもいいって。それでもいいから、オレとともだちになるんだって。
「キバ……。オレ、今まで生きてる意味、分かんなかったんだ……」
そう言ったら、キバはぶらんこにすわったまま、オレのほうへ体を向けた。
「お前、こどもなのに、そんなむずかしいこと考えてんの?」
まだいーじゃん、そんなこと。そう言って。
ぶらんこにのる、オレの背中を、ポンって押してくれたんだ。
ぶらんこが大きく揺れて、一番高いところまで行ったら、夕陽が見えた。
オレ、それ見たら泣きそうになった。うれしいのに。
ともだち、できたんだ。やっと……オレ……。
すごく、うれしいってば……。
次の日。教室に入るなり、シカマルとチョウジが近づいてきた。そんで、シカマルはいきなり、すげぇわけ分かんないこと話し始めた。
「あのな、ナルト、オレな、お前と、めんどくさくないのと、どっちがいいか、迷っててな、そんでな、考えたらな、オレ、チョウジのことなら、めんどくさくないから、オレも、ナルトのこと、めんどくさくないかもって、思ったんだ」
シカマルは言い終わると、はぁ~長くしゃべってめんどくさかったって、つかれたそうに言った。
「……なに言ってんのか、分かんないってば……」
「ボクも……」
オレに続いて、チョウジも首をかしげた。
「……つまりな、ナルトとともだちになっても、めんどくさくないと思えるってこと。たぶんな……」
「ボク分かった! シカマルはナルトと、ともだちになりたいんだね」
シカマルは、こくんと、うなずいた。
「ボクも、ナルトくんとともだちになりたいって、ずっと思ってたんだよ!」
チョウジは、すっごいうれしそうに、笑ってくれた。
「……ホント?」
おそるおそる、聞いた。こわかったんだ。だって、きのうキバとともだちになったことだって、まだ信じられないのに。ぜんぶ、ゆめだったら、どうしよう。それに……。
「オレといっしょにいると、みんなに、きらわれるってば……」
口に出したら、涙がでそうになった。だけどそのとき、キバがきて、オレの肩をポンってたたいてくれたんだ。
「四人いたら、それでも、平気だろ?」
なぁ赤丸、と、キバは頭の上を見てにやっと笑った。
「きらわれるとか、きらわれないとか、そんなことどーでもいーよ。めんどくさいから」
「ボクも平気だよ。ぜんぜん!」
二人は、はっきり、そう言ってくれた。オレ、手を服でごしごしして、その手を二人にさしだした。あくしゅ、してくれたら。夢じゃないって、本当なんだって、思える気がする。
シカマルは、オレの手を、にぎりかえしてくれた。シカマルの手って、冷たそうなのに、あったかい。
チョウジは、オレみたいに、服で手をごしごししてから、あくしゅしてくれた。チョウジの手は、おっきい。なんか安心する。
オレは、あらためて、みんなを見回した。キバ、シカマル、チョウジ。そんでオレ。
「じゃあ、みんな、みんな、ともだちだってば!」
「赤丸も忘れんなよ!」
オレたちは、みんなであくしゅしたってば!
その日は、生まれてから今までのあいだで、一番うれしかった日。
夜に食べた一楽のカップラーメンは、いつもの百倍おいしかった。
<ストーリーその5 悪ガキ四人組>
あの頃クラスには、いつもひとりぼっちの子がいた。
そして今、ひとりぼっちだった子は、悪ガキ四人組のメンバーとなった。
オレはアカデミーで何年も教師をやってきたが、今年のクラスは問題児が四人もいる。
「イッルカせんせー! 罰当番の掃除終わったら、一楽のラーメン食べたいってばよ」
イタズラばっかりするくせに、ラーメンをねだるナルトと。
「教室でじっとしてなんかいられねーぜ!」
「きゃんきゃん」
すぐに授業を抜け出すキバと。
「もぐもぐ…新発売のガルPポテートおいしいなぁ」
アカデミーで菓子を食いまくるチョウジと。
「……グー……スー……」
ひたすら眠り続けるシカマルと。
「お前等いいかげんにしろー!!!」
オレが怒鳴ると、四人は教室から逃げ出す。
探しに行くと、公園で遊んでる。
とても、仲良く遊んでる。
キバ、友達なんて誰でもよさそうだったのに。
チョウジ、シカマル以外にはビクビクしてたのに。
シカマル、人に興味を示さない子だった気がしたのに。
ナルトなんか、ついこないだまで、独りきりだったのに。
夜、屋台に座るオレの隣で、一楽のラーメンをすするナルトに聞いてみた。
どうやってアイツらと友達になったんだって。
ナルトは、手をつないだんだと、にっこり笑った。
もちろん、手をつなぐまでには、いろいろあったのだろう。
けれど、それだけで、手をつなぐだけですぐに友達になれる。
それは子供の特権。
「イルカせんせー?」
「ん? なんだナルト」
ナルトは、ラーメンのつゆを幸せそうに飲み干し。
「手と手をつないだら、ともだちができたんだぁ……」
ナルトは、ニシシっと、満面の笑みを浮かべた。
☆あとがき☆
リクエスト内容「ナルト、シカマル、チョウジ、キバ(赤丸)・友情もの・ほのぼの・チョウジがシカマルと友達になった後、ナルトたち悪ガキグループに入りなじむまでの話。ギャグも少々(概略)」で頂きました。
管理人、子供キャラ大好きですv しかも友情話! 素敵なリクエストをありがとうございますo(*^▽^*)o~♪ かわいい四人にきゅんきゅんしながら書かせて頂きましたw
さて子供時代の四人ですが、キバとチョウジはわりと簡単でした(昔からあんまり変わらなそうなせい?) ナルトとシカマルがちと難しくて^^; シカマルは昔から大人びた子供みたいなイメージなので、子供らしさを出すのにどの辺まで幼くするかの加減が難しかったです…(余談ですが、過去二回くらい仔シカマルを書きましたが、同じように悩みました^^;)ナルトは逆にいくつになっても子供らしい天真爛漫な面が強いので、特に12歳ナルトとの差を出すのに少々苦労しました。でも四人とも、書いててすごく楽しかったです♪ かわいいですしv
小説形式ですが、それぞれの視点から書き、なおかつバトンタッチさせるように話をつなげていく…という書き方に挑戦してみました。少し難しかったですが、勉強になりました。
ストーリーは、「九尾を抱える故独りのナルト」というどうしても避けてとおれない問題があったので、ややシリアスに近づいてしまいましたが、ほのぼの目指して頑張りました。幼い四人のふれあいを、心温かい気持ちになって書くことができました。少しでも、じんわりと感じてくださるところがあったなら、うれしいですv
「こころのしずく」三周年ありがとうございました。
この物語を、シカげ様へ捧げます。
☆リクエスト時に頂いたコメントのお返事☆
シカげ様へ。
小説お待たせ致しました。
三周年にお祝いのお言葉どうもありがとうございますo(*^▽^*)o~♪ そっ尊敬だなんて恐れ多いです>< でもありがとうございます>< 私も、英語も日本語もこなせるシカげさんをすごいと思っていますよ! 小説も、キャラの特徴をよく掴まれていて上手いと思いますし!
小説の応援ありがとうございますv イラストまで楽しみにしてくださって…! イラストは本当まだまだなのですが(小説もまだまだなのですが…) 少しでもご期待に沿えるように楽しみながら頑張りますね(*^_^*) シカげ様のキャラ愛あふれるサイトも応援しています☆
この度は本当にありがとうございました!
「こころのしずく」三周年御礼小説リクエスト企画。うつろう季節の中、カカシからナルト、サスケ、サクラ、そして愛しい人(夢小説風にお好きな人を当てはめてお楽しみくださいv) へ、優しい愛を語った詩形式のお話です。
(カカシ(メイン)、ナルト、サスケ、サクラ 仲間もの&夢小説風・ほのぼの)
※第一部設定です。
『四季の詩』(NARUTO40)
<春 カカシからサクラへ>
桜舞い散る春。
やわらかい光を含んだ、優しい風に、髪を揺らすサクラ。
サクラ。お前は、一人強くなれないと泣くけれど。
今はそれでもいいんだよ。
春のような、あたたかい心で、みんなを包んであげればいい。
<夏 カカシからナルトへ>
向日葵が真っ直ぐに咲く夏。
まぶしい太陽の光を、いっぱいにあびて、かけてくるナルト。
ナルト。お前は、今が幸せすぎて怖いと立ちつくすけれど。
おびえなくてもいいんだよ。
夏のような、強い心は、幸運を導く力となるから。
<秋 カカシからサスケへ>
葉が赤や黄色に色づく秋。
落ちてくる葉を、肩に受け、物思いにふけるサスケ。
サスケ。お前は、復讐のためだけに生きると心張りつめるけれど。
幸せを求めてもいいんだよ。
秋のような、切ない心も、癒されていければいいね。
<冬 カカシから愛しい人へ>
なにもかも白い雪に包まれる冬。
冷たい体を、そのままに、貴方を強く想うオレ。
大好きな人。貴方は、オレの悲しみを共有したいと傷を負うけれど。
そばにいてくれるだけでいいんだよ。
冬のような、冷たい心に、あたたかな灯りがともるんだ。
☆あとがき☆
リクエスト内容「カカシ・通常(お任せ)・ほのぼの・お任せ」で頂きました。
お任せということで、詩形式にしてみました。リクエスト者様の灯様は日本の四季が大好きで、灯様が書かれる小説にも季節的要素がふんだんに使われていて素敵なので、取り入れてみました。文章は短いですが、その分一つ一つの文や言葉を丁寧に書きました。冬の項では、灯様のHN「灯」の文字を入れさせて頂きました。
カカシの、みんなへの愛を書いてみたこの小説(詩)いかがでしたでしょうか。春、夏、秋はサクラ、ナルト、サスケ、そして冬は「愛しい人」となっております。灯様が夢小説をお好きなので、特定のキャラにしませんでした。夢小説風に、ご自分やお好きな人、キャラで想像していただけたならと思います。そしてこの小説(詩)が、少しでも心に響いてくださったなら幸いですv
「こころのしずく」三周年ありがとうございました。
この物語を、灯様へ捧げます。
☆リクエスト時に頂いたコメントのお返事☆
灯様へ。
小説お待たせ致しました。
応募が締め切っていないか心配をかけてしまいすみませんでした。お任せということで、こんな風に書きましたが、いかがでしたでしょうか。
いつもお話相手になってくださりありがとうございますv これからもよろしくお願いします(ぺこり)
この度は本当にありがとうございました!
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