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2007.05.29
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カテゴリ: 感想


 第1回新潮エンターテインメント新人賞受賞作。一人選考委員だった石田衣良さんの選評にもあるとおり、テンポがよく読みやすい文章で、それだけでも好感度が高い作品です。吉野さんは新人とはいえ脚本家として書き慣れているであろう方なので、それくらい当然なのかもしれません。

 さて、読んでいて気になった点がいくつか。
 まず、主人公里沙があまりに幼く、行動や思考がエキセントリックすぎます。親友の由希が事前に秘密を明かさなかったことから遠ざけたり、母親が家を出て行ったことから短絡的に退部届を出して顧問に押し付けたり、様子が不可解だからと折れたゼムクリップで突然人に刺したりと、僕の理解を超えています。しかも、他の誰からもたしなめられたりせず、普通の行動として書かれているから困惑してしまいます。
 さらに、「ツタの学園」で憧れの的である真央が魅力的な人物だとは感じられません。確かにバスケ部のエースとして活躍し、ピアノもできるという多彩な人物なのかもしれませんが、その行動は独善的で身勝手。傍目にはよくても中身が・・・
 また、好みの問題でしょうが、ファンタジー的な要素はいれず、青春小説に徹してもよかったかもしれません。現実の横浜をふんだんに登場させていてリアルでしたし。この作品世界にあの要素というのはちょっと違和感がありました。

 しかし、何だか文句をつけてばかりの気もしますが、それでも結構楽しく読みました。展開もスリリングで、引き込まれました。「ツタの学園」での生活とかおもしろかったですし、何より東急東横線とMM21線の直通がこんな形で出てくるとは。ちなみに僕は横浜の地理が頭に全くないので、地図を見ながら読みました。きっと「ツタの学園」のモデルはあの学校なのだろうとか。
2007年5月25日読了





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Last updated  2007.05.29 11:28:16
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