桜の舞い散る園で・・・~Sorrow and a feather of courage~

桜の舞い散る園で・・・~Sorrow and a feather of courage~

水夏~SUIKA~


シナリオは全体的に重め。人間の深い黒い感情という物があり、人間の弱さという物が滲み出ている。正直恐い。


ストーリー

1章から4章までと章構造になっているが、肝心のつながりがやや弱いように思える。
同じく章構造の銀色は一貫したテーマとつながりがあったのに対して、水夏は明確なつながりはない。

1~3章までは4章の引き立て役という感じ。
千夏が恋愛をうまく成就させようとしている章にすぎない。そこが不満かなと。
つながりは薄いけれども、各章を独立して見てみると結構いいデキ。
特に2章だろうか。さやか先輩のキャラがw
以下、各章ごとにレビュー。


第1章 水瀬伊月

かつて伝えたかったけど伝えられなかった想い。再会してそれを言う、それだけなら普通の恋愛ADV。

だけど実際は、黒い感情が渦巻いていた。
水瀬伊月と水瀬小夜、二人とも彰に好意を抱いていた。
だけど二人がとった行動はまったくといっていいほど反対。伊月は何も言えない。
小夜は自分のやりたいように、積極的に行動する。
その積極性が伊月には羨ましく、また憎らしくもあったわけだ。
それはわかる。確かに理解できる。

だけど突発的とは言え、突き落としちゃうってのどうよ?
確かに、憎いとか殺したいって気持ちは瞬間的にでも浮かぶことはあるかもしれない。
だけどそれを行動に移したらオシマイだ。
二人とも一途で想いは本物だってのはわかるけど、最後の最後で弱さが出たというか。

小夜を突き落として、受けた命。伝えたいことがあるんです、だからもう一度会いましょう。
その言葉、その想いが伊月をあそこまで生きさせたのだと思う。
それくらい一途だったのだろう。最後のシーン、彰は小夜に名前を告げなかった。

アレはアレで良かったんじゃないかと思う。告げればまた小夜に深い何かを負わせてしまうかもしれないから。
全体を通して、人間の胸のうちにある黒い感情、それの存在感をよく思い知った気がする。


第2章 白河さやか

水夏で、一番見やすく、面白いストーリー。

性格的に、とっつきにくい主人公・上代蒼司。キャラが面白すぎるさやか先輩。
「おむすびころりんすっころりん」「さのばびっち~ばんごはん~♪」「ラララ~♪熱殺菌~♪」 「燃えろ萌えろバーニング~♪」

出だしは先が読めない展開だった。が、中盤でハッピーな展開に。
ずっと一人で辛い想いをし、それでも笑っていたさやか先輩。

だけどそれを受け止めてくれる人が出来た。一番大切な人が出来た夏。
それと同時にかつて、一番大切な人であった母親を失った夏。
死んだ母を使って、大好きだった向日葵を絵にした父・律。
それ以来さやか先輩は律が嫌いだった。

だけど、嫌われてなお、自分の命が尽きようとしていてもなお父として最期を迎えた律はスゴイと思う。
一番大切な人を手に入れ、一番好きな花だった向日葵をまた好きになった夏。
それらを通して手に入れた幸せ。その夏休みが、ずっと続きますように。
全体を通してさやか先輩のキャラばかりが目立った感もあるが、よく出来ている話だと思う。
なんというか引き込まれるような感じがする。

ちなみに、白河という名前に引っかかった人はアタリ。D.C~ダ・カーポ~にも出演している彼女。確か、白河ことりの親戚という設定があります。血が繋がっているのかいないのかは分かりませんが、でも似ているからな~。


第3章 柾木茜・京谷透子

正直この話が一番恐い。茜が可哀想に思える。

キャラが引き立っていた2章と違って、まるで立っていない?3章。
立っていないというかスポットライトが当てられてないというか。
始めのうちはわけがわからない話が続く。

なんで茜が二人いるんだ、そしてこの透子の主体性のなさは何?
とまあわけわからなさと微妙な怒りが渦巻いていた話だった(爆

後半は、各キャラの黒い感情があらわに。

若林さんは、良和と透子の仲が崩れることを願った。
透子は、良和が自分以外の他の誰かと接するのを嫌った。排除したがった。
それこそ妹の茜やカウンセラーの若林さんでさえ。
茜は、恋のキューピッドなんて嫌だ、自分の恋のキューピッドになるんだと願い、良和と結ばれる事を願った。

各キャラの黒い想いが渦巻いて、終盤は人間の醜さがあらわになっていてや~な話だった。
出来としてはいいかもしれないが、やっていていい気はしない。


第4章 名無しの少女

お嬢には申し訳ないが、お嬢よりもちとせのほうが印象的なように思えた。

外に出られず、運動する事も出来ない。友達もいない。
それなのにいつも笑っていた。周囲に余計な心配をさせたくなくて、常に笑っていた。
一番キツイのは自分に違いないのに。

あの年で普通、そんなことが出来るのだろうか。出来るわけがない。まずそこにジンと来た。
だからそれを理解して、解き放ってやった宏は本当に兄を演じたと思う。
苦労が長かっただけに、最後手術が成功して元気になったちとせを見て、嬉しかった。

自分で恋を経験することなく死に、死神となってしまったお嬢。
恋愛を経験したいという気持ちは千夏となって分離。

千夏は他人の恋愛を成就させようと、華子の体を借りていろいろなことをやった。最終的にはお嬢と一体に戻った。
お嬢にとって、恋愛の対象となりえる人間が現れたから。

死を周りに漂わせている人間にしか自分の姿は見えない。
だから親しくなっても、待っているのは別れと共にある辛さ。何度も何度もそれを経験しているに違いない。
その辛さと、自分の大切な人が、目の前で悲しむ姿を見なければいけない辛さ。それにずっと耐えてきたお嬢。

耐えてきたものが大きかったからこそ、手に入れた幸せも大きいものになったに違いない。
やや不明瞭な点の目立つ話に思えるが、大問題ではない。
ちとせとお嬢の辛さが表立っているが、それを支えているのがアルキメデスと華子の存在だろう。話にふくらみがある。
突出していい点はないが、よく出来ているんじゃないかと思う。

ちなみにアルキメデスが、うたまるっぽいのはなぜ?

閉幕 水夏

お嬢とちとせの各エンディングを二通り見ると見ることが出来る。話的には短い。

元気になったちとせが、死神の運命から解放されたお嬢の名前を決めようというもの。
お嬢は食べ物の名前がいいと駄々をこねるのでw、ちとせが知恵を振り絞って「水夏」と名づける。
スイカと読め、夏という文字も入っていていい感じ。
普通当たり前のように持っている名前。それをやっと手に入れ、ここからがみんなの物語の始まり。
閉幕という名の始まりである。


グラフィック

相変わらず上手です。背景もイベントCGも綺麗。


音楽

OPもEDも大して変わらない感覚がある。

涼しい感じの曲が多い。
夏の終わりに・・・などは結構好きである。歌にもなっているし。


システム

セーブ可能箇所は充分な数。しかもセーブした場面の画面つき。
これのおかげで、それぞれのデータがどこのものかすぐにわかるスグレモノ。
シナリオの進行表示というものもあり、
オンにしておくとあと何シーンで次の場面に行くか、どこで選択肢が出てくるかがわかる。
まぁ役に立つというわけではないが、あって損はない。とりあえず画期的。
あと、タイトル画面に戻る時とかセーブ・ロードの時アイコンに選んだキャラがしゃべってくれる。
ささいなことではあるが、面白い。


総評

各章のつながりが薄いのが残念。それさえあれば、もう少し良作になっていたと思うのだが。少しはねこねこソフトを見習って欲しかった。(なくなりましたから、ねこねこソフト)
とはいえ、やっておいて損はない出来である。コンシューマソフトにもなっているのでやってみてはどうかと。


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