★L’isle joyeuse★

**統合失調症**



***統合失調症治療薬***

**統合失調症(schizophrenia)とは**
陽性症状 :興奮・妄想・幻覚・幻聴・思考障害・自我意識障害など
陰性症状 :感情の平板化・会話の貧困・社会的引きこもり・意欲の欠如
の両方を発現し、寛解と再燃を繰り返しながらやがて人格荒廃に至る、慢性・進行性疾患である。意識と知的能力は維持される。
一般には破瓜型・緊張型・妄想型の3種類の病型に分類される。

1.破瓜型 hebephrenia
思春期に潜行的に発病し、感情鈍麻、意欲減退、思考以上が著明である。
急性期としては、幻聴、妄想、興奮を主症状とし、最も予後不良で、高度の人格荒廃へと進行していく。

2.緊張型 catatonia
20歳前後に急激に発病し、興奮と昏迷の相反した病像が交互に現れる。 寛解期は社会復帰も叶であるが再発しやすい。
緊張型興奮は、動機なく大声で叫び、乱打し、暴れるなど精神運動興奮である。逆に緊張型昏迷は、意識は清明であるのに自発的な行為が一切停止してしまい、不自然な姿勢をとり続けたり、全く会話しないようになる。

3.妄想型 paranoia
30~35歳の間に発病しやすく、妄想と幻覚が主症状である。確固とした体系化した妄想の世界を有しており、それを口外しないできちんと生活している一見正常のように見られる患者もいる。
しかし予後は不良で、感情鈍麻、意識減退、自閉、接触障害あるいは人格の崩壊を来たすが、軽度である。



病期
前兆期 不眠や不安、焦燥感、抑うつ症状が強まり、前兆症状を示す時期。顕在化しないこともある。
急性期
(陽性症状)
幻覚妄想などにより問題行動を起こし、家族や周囲の人が異常に気づく時期。発病して1~2ヶ月から数ヶ月の期間を指し、薬物治療によりこの時期を短縮することが予後を改善するためにも重要。
休息期
(陰性症状)
何もしたくない、何もできない無気力状態の時期。この時期は、急性期後の疲弊状態と考えられ、良好な回復のために十分な休息が必要となる。
回復期 本人の病状に応じた社会復帰の働きかけを行う時期。さまざまな社会復帰訓練プログラムを通じて、徐々に生活体験を広げていく。
慢性期 病気の期間が3~5年以上経ち、比較的病状は安定した時期。感情や意欲が乏しくなるといった陰性症状が特徴的となります。抑うつ状態が続くので、ゆっくり適応をはかることが必要となる。
荒廃期 人格の解体と精神の荒廃に至る。



**おもな副作用**
1.錐体外路症状
D2遮断作用により、約15%の患者に、投与後5~90日の間に現れる。症状は、運動症状、自律神経症状、精神症状が現れる。 とりわけ特徴的なのが、運動症状で、振戦、筋固縮、寡動・無動、姿勢歩行障害は4大症状といわれる。

2.急性ジストニア
急性の筋緊張異常。突然奇異な姿勢や不随意的な捻転運動が見られる。 ジアゼパム で改善する。

3.アカカジア
執拗に歩き回り、静座していられないところの、静座不能が現れる。

4.悪性症候群
40℃の高熱、発汗、頻脈、振戦、筋硬直、CPK上昇、腹水、昏睡を経て、死に至ることもある。視床下部や大脳基底核での急激なドパミン受容体遮断が原因であると考えられている。
対応には、まず投薬の中止、次に治療薬として、 ブロモクリプチン、アマンタジン、レボドパ などのドパミン作動薬を用いる。また、悪性高熱には、 ダントロレン が特効薬である。

5.プロラクチン分泌亢進
脳下垂体前葉でプロラクチン分泌を抑制するドパミンの作用を遮断するため、プロラクチン分泌が増加して、乳汁分泌亢進、女性化乳房が引き起こされる。




**統合失調症治療薬**
定型抗精神病薬
フェノチアジン系
クロルプロマジン
(ウィンタミン)
プロピル側鎖系。受容体遮断作用は α >>D >H >5-HT >M である。
統合失調症、躁病、神経症の不安・緊張。制吐。鎮静・催眠作用も強い。抗コリン作用も強いため、口渇・便秘・尿閉・羞明など、α 遮断作用のため血圧低下などの副作用がある。
レボメプロマジン
(ヒルナミン)
フルフェナジン
(フルメジン)
ピペラジン側鎖系。受容体遮断作用は、 >>α >H >5-HT >>M である。
制吐作用の強いものが多く、手術前後の制吐薬としても用いられている。一方、抗コリン作用が弱いため、錐体外路症状が出現しやすい。鎮静・催眠作用は弱い。
ペルフェナジン
(トリオミン)
チオリダジン
(メレリル)
ピペリジン側鎖系。受容体遮断作用はプロピル側鎖系に類似。錐体外路症状を起こす作用は弱い。
ブチロフェノン系
ハロペリドール
(セレネース、リントン)
受容体 遮断選択性が高い。抗コリン作用が弱いため錐体外路症状を発現しやすい。α 遮断作用は弱いが、制吐作用は強い。幻覚・妄想・興奮などの陽性症状に最も有効である。
スピペロン
(スピロピタン)
ベンズアミド系
スルピリド
(ドグマチール)
受容体遮断。 各制度を低下させず、精神活動抑制作用がほとんどなく、幻覚や妄想に拮抗する作用はかなり強い。脱抑制作用ももつので、抗うつや神経症にも用いられる。少量で胃潰瘍の治療薬としても用いられる。
非定型抗精神病薬
セロトニン・ドパミン拮抗薬
(SDA)
リスペリドン
(リスパダール)
・5-HT 2A 受容体 を選択的に遮断。陰性症状の改善に優れている。
クエチアピン
(セロクエル)
ベンゾチアゼピン構造を持ち、 ・5-HT 受容体 遮断作用がある。ほかにα・D ・H に対する作用も関与する可能性がある。陽性・陰性症状に用いられる。糖尿病に禁忌である。
多種受容体標的薬
(MARTA)
オランザピン
(ジプレキサ)
・5-HT ・5-HT ・α ・H ・M を遮断。錐体外路症状は、SDAより弱い。高血糖の副作用のため糖尿病禁忌。陽性症状・陰性症状・認知障害・不安症状・うつ症状など、多様な精神症状に効果がある。



特殊型製剤 (デポ剤)
2週間持効型  エナント酸フルフェナジン
4週間持効型  デカン酸ハロペリドール
 デカン酸フルフェナジン

・プロドラッグで、筋注されると吸収されたあとに徐々に加水分解される。
・初回通過効果を受けないので、高い血中濃度が保たれる。
・安定した血中濃度が得られやすい。
・頻回投与の必要がないので、コンプライアンスの向上がはかれる。



**治療薬の選択**
・基本的には単剤投与する。
・効果のみられない場合多剤併用することもある。
・少量から開始し、反応を見ながら漸増する。
・効果が4~6週間後に現れるものもあるため、無効と思われても通常6~8週間の観察期間を待ってから変更する。
・十分な効果が得られたら、4~6週間はその用量を維持し、漸減して、最小維持量を見いだす。
・急激な投与量の増減や、中止は副作用の発現を助長するため避ける。

・鎮静・催眠を主とする場合→ クロルプロマジン・レボメプロマジン
・鎮静効果が至急必要な場合→ 注射剤 を用いる/ ベンゾジアゼピン系・カルバマゼピン を併用する
・コンプライアンスが悪い患者→ デポ剤
・急性錐体外路症状を避ける場合→ 非定型
・維持療法→投与量
・錐体外路症状の予防→ トリヘキシフェニジル・ビペリデン・アマンタジン を併用



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