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2009.01.08
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SSS

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触れた指先


ココの技、ポイズンドレッシングは指先から毒を飛ばして敵を攻撃する。
それ故に多少なりとも毒が出易くなっているのかもしれない。ココは人に掌、特に指先に触れさせることを躊躇った。
しかし今ココの手は小松に委ねられている。
理由は、些細な怪我だった。
小松と共に台所に立ち、小松の料理を手伝うココは普段通りの包丁捌きで食材を切ったり剥いたりしていた。
軽く談笑しつつ食材を手掛け、料理に対して真剣な眼差しになる小松に見惚れていたのかもしれない。
普段なら滅多にやらないミスなのだが、うっかり指先に包丁を滑らせてしまった。

(まずい)

血でなく毒が出たら大変だと慌てて口に含むココを連れて、小松は慌てて台所を飛び出して。
指先を口に含んでいる為なすがままのココを椅子に座らせると、バタバタと走り回る小松がすぐに消毒液と絆創膏を持って正面に座り直した。

「ココさん手、出してください」
「こ、小松君指を切ったぐらいでそんな大袈裟な…」
「ココさん!手!」

この子は自分が毒人間だという事を忘れているのだろうか?
何だか気圧されてしまった自分は、毒が出ていないことを口内で確認してそっと差し出す。
触れる手は小さくて、でも暖かくて。
手に触れることは、トリコにだって許すことはそう無いのに。
痛みを感じさせないように頑張っているんだろう。優しく触れるように押し当てられる脱脂綿は、どこかもどかしさを感じてしまう。
きっと自身も何度も繰り返した怪我なんだろう。絆創膏を宛がう角度は的確で、小さな指先は丁寧にそれを巻く。
黙ってただ其れを見つめていれば、不意に掌が握られた。

「…ごめんなさい」
「それは、何に対して?」
「僕、今…少しだけ嬉しいって、思っちゃいました」
「どうして?」
「だって…ココさんの手に、触れられたから」

少しだけ寂しそうに、八の字の寄せられる眉。
離れていこうとする手を掴んだのは――僕だった。

「触れればいいさ」

指を縫うように、恋人繋ぎをして彼を更に赤く染める僕。

「ココさ、ん」
「ん?違った?」
「ちが、わないです」
「よかった。…さっきはこれ、ありがとう」
「いえっ僕こそ、全然気が回らなくって…!」
「まぁ少しは驚いたけど、嬉しかったな」

君に僕から触れるなんて、そうできることじゃないし。
僕はとても臆病だから。

「君に触れてもいい?」

そっと伸ばされた手に、君はゆっくりと頷いた。



「…」
「あ、トリコ居たんだっけ。ごめんごめん」
「!!」
「お前等完全に俺の存在忘れてたろ。てか飯は?」
「へ、あ、あああ!!やりっぱなしだぁ!」
「…あ~あ行っちゃった」
「随分アイツに甘いじゃねえか」
「それはお前も同じだろ?」
「…さあな」



(虜/ココマ+トリコ)





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Last updated  2009.02.01 00:58:11


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