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2010.04.04
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SSS

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抱きしめたいのはあなただけ


「そ…曽良、くん?」
「なんですか芭蕉さん」
「あの、これは、どういう事かな…」
「どうもこうもありません。僕が抱きたいと思ったから抱いているまでです」
「あくまでジャイアニズム!?ちょ、私の意志は!?」
「芭蕉さんの答えなんて聞くまでも有りません。いいから黙って抱かれていなさい」
「え、で、でも曽良くん」
「…不満ですか、僕に抱かれるのは」
「そうじゃないけど…」
「なら構わないでしょう。いい加減黙らないとその薄汚れた人形の二の舞にしますよ」
「薄汚れてなんかないやい!マーフィー君だもん!」
「…はあ」

この弟子の考える事は、芭蕉には正直良く解らなかった。
スランプ真っ最中な自身が調子に乗ったり、ボロボロな俳句を読めば暴力を奮われるし、代わって良い句を読めば素直に褒めたり時々こうして抱き締めてきたりする。
ほだされている…そう理解していても、この腕を振り払えないのは襲い来る暴力からだけの事ではないのだろう。
悔しいがこの腕の中は心地良い。自身と比べて十分若い弟子の引き締まった身体と瑞々しい肌は、今はもう失われてしまったものだ。
それに小さい頃は、この弟子がするように自身もまた彼を抱き締めたものだ。なんだか思い返すだけで、苦笑が浮かんでくる。

「…何ニヤニヤしてるんですか、気持ち悪い」
「ちょ!言うに事欠いて酷くない!?」
「全く、キスして欲しいならそう言いなさい」
「言って無いいい!!松尾言って無い!NOキッスNO!!」
「黙らっしゃい」

噛み付いてくるようなキスは相変わらずだったけど、少し機嫌が良さそうに見えたのでやはり芭蕉は今日も流されてしまうのだった。

(日和/弟子×師匠)





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Last updated  2010.05.22 03:17:59


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