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2011.04.09
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SSS

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信じちゃいねェが、『御仏のお導きだ』と言われりゃア今なら信じられる気がする。
前の世で何度手前の身勝手さを悔やんだ事か。何度今生で夢に見たことか。
触れれば消えそうな儚さを無意識に感じ取っているのか、笑えるぐらい此の手の震えが止まらない。
夢を見る表情に何一つ変わりはない。その頬に指先を伸ばしたいと思う傍ら、必死に空いた片手を押さえる手が奴に最後の警告を告げているようだった。

『今ならまだ引き返せる』
『何も無かったことにすりゃアいい』
『前の世で何の為に別れたんだ?』

解ってんだよ、そんな事ァ。
あン時奴が何遍も自問して出した答えなんだ。その答えを今更覆すつもりはねェよ。
―――けどな。
泣きながら笑うンだよ。此の人ァ。
全部呑み込んで奴を赦しちまうんだ。当たり前のように。ただ、笑って。

(嗚呼)

一度も間違いが起きぬ人生なんざありえねェ。即ち此の縁も切って離せるモノじゃねえンだよ。
大事なのは奴の覚悟だ。そうだろう?

(前の世は二人共に苦しんだ。なら、もうそれでいいでしょうや)

「……百介、さん」

名前を呼べば、堰を切ったかのように目から熱が零れ落ちる。


重ねた手が二度と離れて行かぬように


僅かに力を込めた掌から伝わる熱。
(望むものは只一つ。貴方が居りゃあそれでいい)

(巷説:現パロ又百)





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Last updated  2011.04.09 23:57:59


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