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2013.04.07
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SSS

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部屋の電気を消し、そろそろ寝ようかと布団に入ったのが5分前。
カーテンから僅かに差し込む月明かりが気になって、締めなおそうと思って手をかけた筈なのになぜかその手は開く方向に動いていて。
窓から覗く夜空は広く、なんとなく昔のことを思い出して眉を顰めた。

幼き頃、死ぬ運命にあると無情にも告げられたあの頃。
星空を眺めながら、世界中で独りぼっちになった気分になり時々泣いていた。
だからだろうか。星空を眺めて、幸せな気分になったことはあまり無い。
悪いことばかり考えてしまいそうで、いつもならすぐにカーテンを閉めている所なのだけれど。

「……玉依姫、か」

1年前、ちょうど鬼斬丸の封印が薄れかけていたあの頃。アイツは俺の前に現れた。
一目で見た感想は弱虫で生意気でちょっと可愛くて。
あの時からずっと気になっていたのだと思いだし、苦笑する。

死ぬことを受け入れたつもりになっていた自分を奮い立たせ、共に戦ってくれた誰よりも大切で誰よりも愛おしい女。
絶対に離したくない。世界で一番幸せにする。そう、誓った無二の存在。
想えばそれこそが、俺の運命だったのかもしれない。

「アイツに出会って、俺は弱くなったし強くもなった」

それは真実だ。
俺の唯一の弱点といっても良い。

アイツに泣かれるのは弱い。
だからずっと笑わせてやるつもりだし、それを見つめるのも、隣にいるのも俺でいい。

「……ったくどーしてくれんだ、珠紀」

無性に会いたくて堪らなくなったくせに、なぜか顔は笑っていて。
上着を羽織った真弘が窓から飛び出すのに、5分も掛かってはいなかった。


きみに走って会いに行く


きっと飛び上るほど驚くだろう姿を脳裏に描いて。
(でもすぐに笑ってくれるだろうあいつがたまらなく愛しかったんだ)

(緋.色.の.欠.片/真珠)





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Last updated  2013.04.08 01:58:13


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