蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「乱」

映像が流れ始めて1秒で、「乱」の世界に入り込んだ。
美しい映像と、よく冷えたガラス玉のような音楽。(武満徹氏の音楽は珠玉の作品だ)
このように壮大で哀しい物語を体感してよいのだろうか?
そう思えるほど、映画「乱」は私の心に食い込んできた。

原作はシェイクスピアの「リア王」
この作品を、たしか小学生の時に読んだのだが、当時は意味がよくわからなかった。ただ悲劇なんだ、としか思わなかった。
しかし年齢を重ねてくれば、「リア王」で描かれている人間の苦しみが、少しは理解できるようになったらしい。
登場人物それぞれの思いと行動。それが絡み合って、悲劇へと流れていく。
お目当ては、若き日の野村萬斎氏だったのだが、出演していた俳優、みな良かった。
ただ哀しいだけではなく、人間の愚かさと、それをいとおしいものとして受け止めることのできる、人間の豊かさ。
相反するものが混ざり合って、得も言われぬ美しい世界を紡ぎだしている。
この映画を日本人監督の黒澤明が作り、私が日本人でいて、本当に良かったと思えた作品だった。

1985年公開作品





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