蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「インファナル・アフェア」

映画館に入り、照明が暗くなり、予告編が始まる。
一瞬暗くなってから、本編が始まる時のワクワク感。
タイトルが出るまでの映像で、すでに鳥肌が立っていた私。
香港映画は「チャイニース ゴースト ストーリー」ではまって以来けっこう見ている。
今回も鳥肌をたてながら『くく~、香港映画って、やっぱり私の肌に合うわ~』と興奮した。

ストーリーは、従来の香港映画より込み入った内容らしいが、めちゃくちゃ難解というわけではなく、最後のどんでん返しで驚いた以外は、けっこうすんなり理解できた。
ただ、ヤクザと私服警官の見分けがつきにくく、ヤクの取引をするシーンで、どれがヤクザで、誰が張り込んでいる私服警官か、わかりにくかった。そこで頭が一回こんがらがったかな?
あとは、トニー・レオンとアンディ・ラウの魅力が炸裂。
個人的にトニーのほうが好きなので、思いっきりヤン(潜伏捜査官)に肩入れしながら見てしまった。
ある作家が、パンフレットに解説を載せているのだが、私と全然違う感想を書いているので面白かった。
彼は、アンディとトニーをこう見ている。
「端正なエリートで直線的、ストイック、静かな陰りをもったアンディと、下町のにあう大衆性、どことなく丸みがあり、闊達で明るいトニーは、男としても、俳優としても正反対の位置にいる」
私がアンディ・ラウの映画を見た最初の作品は、「いますぐ抱きしめたい」だった。
アンディはチンピラな役で、違う世界にいたマギー・チャンに恋をする。切ない恋は、あっという間に終わりを告げるのだが、アンディとマギーの激しいキスシーンに、どきどきした。
その時の印象が強く、アンディは「下町の似合う大衆性」というイメージがこびり付いている。
反対にトニーをはじめて見たのは、台湾映画「非情城市」だった。彼は聾唖の写真屋の役で、セリフはないのだが、静かな表情で演技をしたので、「ストイック、静かな陰りをもっている」と感じた。
作家氏と、全く正反対の感想。
原題の「無間道」の“無間”とは、仏教用語で絶え間なく苦しみを受け続ける無間地獄をさしているらしい。
そうすると、ラストから考えれば、アンディのほうがより苦しいということなんだよね。
ストーリー中の、どのエピソードも心に残る。特にメイと“6歳”の娘のこと。『ん?なんか変だな』と思いつつ、パンフレットを読むまでは確信がもてなかった。パンフレットで種明かしを読んで、不覚にも公衆の面前で涙を落としそうになった。

やっぱり、苦悩する男は美しい。




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