蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「宗家の三姉妹」

10月25日の新聞に、宗美齢女史の死亡記事が載っていた。
そうか、「宗家の三姉妹」の末妹だった彼女も、とうとう天に召されたのか。
さっそく「宗家の三姉妹」をレンタルしてきた。
145分の大作なのだが、それを感じさせないくらい引き込まれて見た。
監督はメイベル・チャン。彼女の「誰かがあなたを愛している」を見たことがあるが、ロマンティックで素敵な作品だった。
長女・靄齢にミッシェル・ヨー、次女・慶齢にマギー・チャン、三女・美齢にビビアン・ウーが扮している。
ビビアン・ウーを見て、どこかで見た顔だと思ったら、「ラストエンペラー」に出ていたんだった。確か溥儀の第二夫人役だったかな?
暗示的な演出が多く、謎解きのような気分で楽しめた。例えば次女慶齢が、父親の反対を押し切って孫文と駆け落ちする場面で、彼女を追いかける老女の足元を写す。纏足なので早く走ることが出来ない。次に慶齢の足元を写し、伸びやかに走っていく様を強調している。面白い。
あと、中国人と日本人の感覚の違いなのだろうか、驚いたセリフがあった。
孫文が死の床で、慶齢に言う。
「君には何も残してやれない。多少の書物と上海の家だけだ」
すると慶齢は答える。
「まだあるわ。書物についたあなたの血と、家の中にはあなたとの思い出」

う~ん。孫文は結核だったのだろうか、書物に血がついているのを慶齢が見つける場面があった。
私の感覚としては、最愛の人の血がついた書物を見るたび、心が痛むような気がするのだが。日本人なら血のかわりに、涙の染みなどで表現するのではないかな、と思うが。どうだろう?

感動したセリフは、蒋介石と対立した慶齢がソ連に行く時に、母と交わした会話。
慶齢「思想の違いこそが、国民の幸せを左右する」
母 「でも自分が幸せになれなくて、国民を幸せにできる?」

孫文は死の間際「革命とは・・・」といって事切れる。
私は心の中で『愛である』と何気なしに思っていたのだが、ラストシーンで驚いた。
「革命とは、愛である。愛もまた、革命である」という言葉が書かれていたのだ。(どこに書かれていたかは、ネタバレになるので秘密。この書かれていた場所も、なかなか素敵なオチである)

蒋介石が台湾に渡る経緯が、ちょっと物足りないが、中国の現代史をおさらいできる、良質の作品だと思う。
蒋介石ら国民党が台湾に渡り、外省人となる。もともと台湾に住んでいた内省人との軋轢を、ホウ・シャオシェン監督が「非情城市」によって描くのだが、それはまた別の話。歴史は連綿と続いている。

私の好きな姜文も、三姉妹の父親役で出ていたし、ワダエミさんや喜多郎さんも参加している、豪華な作品。





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