蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「猟奇的な彼女」

やっと見ることが出来た「猟奇的な彼女」
レンタルビデオ屋に行っても、いつもビデオ・DVD両方ともレンタル中だった。

作品を見ると、レンタルビデオ店に置く暇もなく、貸し出されていくという事実に納得する。
『なるほど、こういうオチだったのか』
今までの伏線を思い出しつつ、すっきりとした心持でビデオデッキのスイッチをオフにできる作品なのだ。

良く言えば心優しい、悪く言えば優柔不断な大学生キョヌ。
ある日地下鉄で、ベロベロに酔っ払った「彼女」と出会う。
行きがかり上、彼女の介抱をする羽目になった彼は、彼女の心の傷を知る。
その傷が癒えるまで、キョヌは彼女のそばにいようと決心した。
留置所にいれられたり、脱走兵に拉致されたり、「彼女」の通う女子大にラーメン屋の出前の変装をしてもぐりこんだり、いろいろな出来事がキョヌを待ち受けていた。
そしてある日、2年後に開けることを約束したタイムカプセルに、それぞれの気持ちをしたためた手紙を入れ、2人は小高い丘に立つ木の根元に埋める。別々の汽車に乗り、別れる2人。

そして、2年後・・・。

木の根元に座るおじいさんや、カフェで座っているおばさんの映像を見て、ぎょっとした私。
「すごく時間が経ってない?この映画って、大河ドラマ仕立てだったっけ?」などと思ったのだが・・・。(笑)
ストーリーを「前半戦」「後半戦」「延長戦」に区切ってあったのだが、私はやはり「延長戦」が心に染みた。
原作には、この「延長戦」がないらしい。個人的に、「延長戦」があってくれてよかった。「後半戦」で話が終わっていたら、少々物足りないというか、気持ちの整理がつかないままになりそうだ。

ヒロインは「猟奇的」という形容をされては、気の毒なほどカワイイ。
「ぶっ殺す」という口癖も、キョヌを殴る行為も、見ていてそんなに驚かなかったケド。「猟奇的」というほどではない。
もし、ヒロインが男だったら、わざわざ「猟奇的な彼」というだろうか?
喜べる状況ではないのだが、男が女に対して、暴言を吐いたり暴力をふるったりする行為は、最近まで「当たり前」とされてきた。
そう言う行為がDV(ドメスティック・バイオレンス)として問題視されるようになったのは、ごく最近のことだ。
今まで男性がしても「当たり前」だった行為を、ヒロインの女性がしたからといって、「猟奇的な彼女」といってしまっては、彼女が甚だかわいそうなのである。
(韓国では、映画の公開以後「猟奇的」の意味が、少々違った肯定的な意味合いで使われるようになったらしい)
ジェンダー視点で見れば面白かった場面は、ヒロインが足に合わないハイヒールを、キョヌの履いているスニーカーと交換するシーン。
最初キョヌは、ハイヒールを履くのを拒否する(当たり前だよね)
「君に新しいスニーカーを買ってあげるから」と言うのだが、彼女は承知しない。
彼女の強引さに負け、キョヌはジーンズに白いハイヒール、彼女はツーピースにスニーカーといういでたちで学校内を闊歩する。
キョヌは、ハイヒールあまりの履きにくさに、倒れそうになりながら、歩くのだ。
これもハイヒールを履いている女性の歩きにくさを、男性であるキョヌが体験してみると言う意味合いで見れば、面白い。
暴力的なヒロインと、ハイヒールを履いてよろけながら歩くキョヌ。
従来の「男性とはこうあるべき」「女性とはこうあるべき」という固定観念をひっくり返した状況設定。
ジェンダー視点で見ても、楽しめる作品だ。




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